前(節)へ 次(節)へ

資料編

資料III 国会公務員倫理規程の制定に関する意見の申出

国家公務員倫理規程の制定に関する意見の申出に当たって


平成12年2月4日 国家公務員倫理審査会会長 花尻 尚

今回、国家公務員倫理審査会は、国家公務員倫理規程の制定に関し、内閣に意見の申出をした。そこで、倫理規程についての基本的考え方等について、委員各氏と相談した上で、会長の責任により、談話の形で発表することとした。

国家公務員倫理規程を制定せざるを得ない事態に立ち至ったこと自体、国家公務員にとって不名誉なことであり、審査会としても立ち入った事柄にまで言及せざるを得なかったことは誠に遺憾なことである。

公務員の不祥事が毎日のように報道されるということは、まさに異常事態である。いったん緩んだ規律を引き締めるためには、ある程度厳しいルールを厳格に適用することが必要となる。平時においては不必要、場合によっては行き過ぎかと思われるいくつかのルールについても、あえて盛り込むという決断を行った。一日も早くルールを緩和できるような平時となることを願ってやまない。

厳しいルールを定めるに当たっては、委員間のみならず行政当局者との間でも、度重なる意見聴取や真剣な議論が行われた。「厳格なルールが適用された場合、情報交換等が不可能となり、行政の円滑な遂行に重大な支障が生ずるおそれがあるのではないか。」との率直な指摘もなされた。しかし、倫理法は、「現在の行政の在り方になんらかの重大な問題点があり、それは是正される必要がある。」という憂うべき現状に鑑み、策定されることとなったものである。したがって、倫理規程は、必然的に、これまでの行政手法に厳しい見直しを迫るものとならざるを得ない。旧来の手法が廃されたことによって生ずる弊害は、別の新たな“副作用のない”手法によって早急に手当すべきなのである。夜の会食で得られなくなった情報を、いかにして昼の時間帯に得るか、秘密裏に情報を得る必要がある場合も、料亭ではなく、会議室で得ることを工夫すべきである。審査会は、現在の公務員諸君が、新たな手法、もっとも適切かつ有効な行政手法を作り出す十分な創意と能力を持っていると信じて疑わないものである。

審査会が検討したものは、あくまでも対症療法であって、原因療法ではない。公務員の不祥事が続発する原因には根が深いものがある。事務次官以外の同期職員が早期に退職する慣行、天下りの問題、給与・人事における能力・努力が十分に反映されない同期横並びの処遇、いわゆるキャリア、ノンキャリアという区分が退職するまで適用されること、官民・省庁間の人事異動の少なさ、同種の職種・分野内の一律的処遇と職種・分野間の処遇の差といった従前から公務員白書等で指摘されている諸問題(これらの多くについては、人事院によって対策が検討され、徐々に改善が図られている。)が放置されたまま、ただ厳しいルールのみによって公務員の倫理(モラル)と士気(モラール)を回復しようとする試みは、率直に言って、非現実的と断ぜざるを得ない。これらの諸問題については、喫緊の課題として真摯な取り組みがなされる必要があることを指摘しておきたい。

堕落した公務員が責められるのは当然のことである。だが、これに擦り寄り、これを堕落させるような者がいたことも事実である。また、接待を容認するような社会的土壌があったことも否定できない。この実態を直視し、痛切に反省する必要があるのではないか。

相次ぐ公務員不祥事のために、毎日夜遅くまでまじめに熱心に仕事をしている大多数の公務員諸君が士気を落としてしまわぬよう切望したい。国民全体の奉仕者として公共の利益のために働くという高い使命に誇りをもってほしい。頭を高く上げよ。そして、どんなに立派な仕事をしていても、接待や贈与を受けているようでは、価値を認められない、ということを銘記せよ。

今回の倫理規程は、大半の公務員にとっては明文化する必要もないくらい当たり前のことであるはずである。むしろ、若い理想に燃える公務員諸君が、行政の在り方をよりよい方向へと変えていくための一種の起爆剤として受け止め、活用してもらえるよう祈念しつつ策定したことを、最後に付言しておきたい。


前(節)へ 次(節)へ
© National Personnel Authority