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第1編 ≪人事行政≫


社会経済のグローバル化の進展やIT(情報技術)化による産業・社会構造の変革、少子高齢化の進行による就業構造の変化など、社会経済システムが大きな転換点にある中で、我が国は「失われた10年」と呼ばれる長期にわたる停滞から依然として抜け出せないでいる。企業の倒産件数は高い水準を推移し、失業率もこれまでにない高い水準となるなど、雇用情勢はますます厳しさを増している。こうした様々な困難な課題が山積している下で、政治のリーダーシップにより、官民を問わずあらゆる分野における「聖域なき構造改革」への取組が進められている。

政府においては、平成13年1月からの中央省庁の再編成、内閣機能の強化、副大臣や大臣政務官の導入等に続き、同年4月には、行政の簡素化・効率化を目指して多くの国立試験研究機関等が独立行政法人に移行するとともに、行政運営の透明化と国民に対する行政の説明責任の観点からの情報公開法の施行や各府省の政策評価の仕組みが整備されるなど、効率的で透明な国民本位の行政への転換が急速に進められている。しかし、一方では、外務省の公金流用事件や郵政の選挙違反事件など相次ぐ公務員不祥事の発覚により、公務員を見る国民の目は一層厳しいものになっている。

民間企業においては、厳しい経済情勢の中で、組織の生き残りをかけて、過剰債務の処理、事業の再構築や人件費負担の合理化など経営効率化に向けた努力が一層進められている。人事管理システムについても、人件費の削減などに資するため、従来の年功序列的な人事管理を見直し、成果・業績をより重視した人事・賃金体系への転換、勤労者のニーズに即した雇用形態や就労形態の多様化など、環境変化に適応するシステムへの転換が進められている。

人事院は、こうした時代の急激な変化に適応し、国民の期待と信頼に応えられるよう、近年、公務員人事管理システム全般を見直し、能力、適性に基づいた柔軟で開放的なシステムの実現に向けて、制度・運用の両面にわたる改革に取り組んできた。平成13年度においては、給与勧告において、厳しい経済・雇用情勢を反映し、2年連続で俸給表の改定を見送り、各地域に勤務する公務員の給与水準の在り方について検討する旨報告した。また、併せて職業生活と家庭生活の両立の支援策を充実するため、育児休業の対象となる子の年齢の引上げについての意見の申出及び介護休暇期間の延長等についての勧告を行った。そのほか女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針の策定、新たな再任用制度の導入、個別承認の基準化など、第1部第2章に記述する様々な施策を行ったところであり、今後も積極的に公務員人事管理システムの改革に取り組んでいくこととしている。

一方、政府においても、平成12年12月1日に「行政改革大綱」が閣議決定され、さらに、平成13年1月以降、行政改革担当大臣の下で、公務員制度の抜本的改革に向けた検討が進められている。同年3月、内閣官房として政府全体の調整方針を示すものとしての「公務員制度改革の大枠」が公表され、同年6月には新たな公務員制度の骨格と検討課題を示す「公務員制度改革の基本設計」が行政改革推進本部で決定された。同年12月には法制化を視野に入れた具体的内容などを盛り込んだ「公務員制度改革大綱」が閣議決定され、引き続き内閣官房が中心となって、その具体化に向けた作業が進められている。

人事院は、大綱の策定に至る過程において、長年の蓄積や調査研究の成果に基づき人事行政の専門機関としての意見を述べてきたところであり、大綱の具体化に向けて、国民の求める改革という視点から、真に国民の期待と信頼に応えられる公務員制度改革を実現するため、労働基本権制約の代償機関、中立機関としての立場から適切な役割を果たしていくこととしている。

公務員制度の改革は、今後の我が国の行政の在り方や国民生活に大きく影響するものであり、今後、関係者間での十分な意思疎通をはじめ、有識者等を含め、広く各界の幅広い視点からの検討が望まれる。また、大綱において公務員制度改革の柱として示されている能力等級制度や人事評価システムなどは、新しい枠組みの導入でもあり、これを定着させて実効性をもって機能させるためには、多様な職場の実態や現場の意見をも十分に反映させ、国民にわかりやすく、職員、人事当局も期待感を持つことができる制度にしていく必要があるものと考える。

人事院は、今後とも、相次ぐ公務員不祥事により損なわれた公務に対する国民の信頼を回復するための取組を進めていくとともに、国民から期待される行政運営の実現のため、関係者の意見を十分聞きながら、人事行政の発展に努めていくこととしたい。


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