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第1編 ≪人事行政≫


グローバル化の進展やIT化、市場経済の拡大といった世界的規模での社会経済変動が、我が国の様々な分野に対して大きな影響を与えつつある。バブル経済崩壊の後遺症の対応に追われている我が国は、巨額の不良債権や財政赤字といった「負の遺産」を抱え、戦後経験したことのないデフレ状態が継続するなど、長期にわたる停滞が続いており、失業率も高水準を維持するなど、雇用情勢も相変わらず厳しい状況にある。

こうした状況を抜け出し、我が国の経済、社会を再生するため、官民問わずあらゆる分野における「聖域なき構造改革」への取組が進められている。

政府においては、「民間でできることは民間に委ねる」との基本方針の下で郵政事業や特殊法人、公益法人等の公的部門の改革が進められるとともに、「地方にできることは地方にまかせることが重要である」との認識に基づき国と地方の関係の見直しが進められている。また、新規事業の創出や事後チェック型行政への転換を目指して、行政の各般の分野について計画的に規制改革の推進が図られるとともに、その突破口として構造改革特区制度を導入されたところである。さらには、司法を身近に利用できる社会を実現するための司法制度改革や行政手続を一つの窓口で済ませることができる身近で便利な電子政府の推進など、あらゆる分野における構造改革に向けた取組が進められている。

民間企業においては、厳しい経済情勢の中、政府の企業・産業再生に向けた取組の下で、市場競争力を高めるため、過剰債務の処理や事業の再構築、人員の削減など経営効率化に向けた努力が一層進められている。人事管理システムについても、50代に達した団塊世代の処遇や人件費の増大、勤労者の意識の変化に対応するため、従来の年功序列的な人事管理を見直し、成果・業績をより重視した人事・賃金体系への転換、勤労者のニーズに即した雇用形態や就労形態の多様化など、環境変化に適応するシステムへの転換が着実に進められている。

人事院は、こうした時代の急激な変化に適応し、国民の期待と信頼に応えられるよう、近年、公務員人事管理システム全般を見直し、能力、適性に基づいた柔軟で開放的なシステムの実現に向けて、制度・運用の両面にわたる改革に取り組んできた。平成14年度においては、給与勧告において、厳しい経済・雇用情勢を踏まえ、戦後初めて月例給与の引下げを勧告し、特別給(ボーナス)の引下げもあいまった結果、職員の年間給与は4年連続の減少となったが、今後も水準面では厳しさが続くことが見込まれる中で、給与体系を職員が実際に従事する職務・職責を基本に、その業績等が適切に反映される給与制度の構築に向けた検討を進めている。また、各地域における公務員給与の在り方の見直しを進めるため、研究会を設置して検討を開始したところである。そのほか、各府省の主体的・機動的な人事管理を進める観点から、任用や給与、勤務時間等に関する事前の承認や協議について大幅な基準化や廃止を行うなど、 第1部第2章 に記述する諸々の施策を行ったところであり、今後も積極的に公務員人事管理システムの改革に取り組んでいくこととしている。

一方、政府においても、平成13年1月以降、行政改革担当大臣の下で、内閣官房が中心となって公務員制度の抜本的改革に向けた検討が進められており、同年12月に閣議決定した「公務員制度改革大綱」の内容を具体化し、平成18年度を目途に新たな制度に移行することを目指して、現在所要の準備が進められている。

人事院は、今回の公務員制度改革に関して、昨年の年次報告や同年8月の給与勧告時の報告で見解を述べ、次いで11月に参議院において総裁が所見を表明するなど、人事行政の専門機関として適時適切に意見を述べてきたところであり、今後も、国民の求める改革という視点から、真に国民の期待と信頼に応えられる公務員制度改革を実現するため、労働基本権制約の代償機関、中立機関としての立場から適切な役割を果たしていくこととしている。

公務員制度の在り方は、行政運営を支える基盤として、国民生活を左右する重要な問題であり、大綱を具体化するに当たっては、関係者間での十分な意思疎通をはじめ、有識者等を含め、開かれた場で広く議論を行い、あるべき改革案をまとめていく必要がある。また、大綱において公務員制度改革の柱として示されている能力等級制度や人事評価システムなどは、新しい枠組みの導入でもあり、これを定着させて実効性をもって機能させるためには、多様な職場の実態や現場の意見をも十分に反映させ、国民にわかりやすく、職員、人事当局も期待感を持つことができる制度にしていく必要があるものと考える。

人事院は、今後とも、国民から期待される行政運営の実現のため、関係者の意見を十分聞きながら、人事行政の発展に努めていくこととしたい。


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