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第1編 人事行政

第1部 人事行政における国際協力とグローバル化対応〜交流の活発化と「国際競争力」の確保・向上を目指して〜

III 国際協力・国際交流等の課題と今後の展望

2 グローバル化への対応


(1) 各府省等のグローバル化対応への支援

前述のように、あらゆる分野でグローバル化が急激に進展し、国際社会との相互依存関係が深まるにつれて、我が国の行政自体が「国際競争」にさらされており、行政官もこうした国際的潮流と従事する国際業務の変化に的確に対応することが求められている。

国内を見ると、官と民、国と地方の関係も既に大幅に変化しつつあり、また今後も更なる変化を求められており、情報力の差や権限の強さ等から国が優位あるいは主導的地位にある時代ではもはやない。1)国家的見地からの総合的・戦略的な政策の企画立案、2)グローバル化、高度化・複雑化する行政課題への迅速かつ的確な対応、3)国家間の様々な競争の激化の中での国益の実現、4)我が国の国力に見合った国際貢献等々、時代の変化に応じ、国家公務員でなければできない、あるいは国家公務員なればこそ期待される役割を果たすことを、国家公務員は求められている。このためには、各国の優れた行政及び行政官に負けないような、専門性、世界的視野、交渉力、国際的人脈等を持った、真にプロフェッショナルとしての行政官が必要となってきている。

在外研究員制度は、各府省等の人事責任者や経験者の寄稿文にもあるように、調査研究だけでなく、様々な経験を通じ、語学力の一層の向上、専門知識の修得はもちろん、国際感覚を身につけ、自国を見つめ直す機会となっているなど、貴重な人材育成の意義を持っており、各府省等における人材育成の大きな柱の一つとなっている。我が国の国家公務員がこのようなプロフェッショナルたる行政官としての役割を果たすために重要な素地を提供するものであり、今後とも公務における人材のレベルアップと多様化に貢献することが期待されるものである。

なお、派遣法に基づく派遣を経験した職員については、そこで得た国際経験や人脈等は貴重なものであり、その後も、各府省等の国際関係業務に携わったり、海外の第一線で活躍する者が多く、各府省等のグローバル化対応のためにその活用も欠かせないとされている。

(2) 諸外国との相互理解・相互交流の促進
1)実効あるマンスフィールド研修等の継続

マンスフィールド研修において、研修員は我が国の公務員と職場内外で付き合うことで価値観や考え方まで理解することができると評価されている。

国と国との交渉の場においては、それぞれの主張を尽くすことは大事であるが、相手の主張の真意を知り、お互いの妥協点を探るには、深い意味で相手を理解していることが双方にとり有益である。そのためには、職場というバックグラウンドの下にいる「生身」の相手と接することは極めて貴重な機会であると考えられる。

第1期生であったジョン・ヒル国防総省日本担当部長は、今回の寄稿文において自らの体験に基づき、日米両国について「類似していることの方がより強く感じられる」、「非常に多くの基本的な価値観を共有している」、「歴史的にも文化的にも大きな違いを持った日米両国は、このような価値観を共有する状態に移行している」と述べている。

現在日本で研修を行っている第9期生は、日本の公務員とその職場について、母国とは異なる職場環境、勤務時間には苦労しつつ、日本の職員間のコミュニケーションの良さや献身的な仕事ぶりに感心したり、さらに、仕事に対する姿勢は共通していると述べている。このように日米の公務員について、違いを感ずる一方で、類似している、基本的な価値観を共有しているという認識を有する研修員が多い。また、日本の職場に溶け込むについては、受入側の職員の理解と支援が大事であることもうかがわれる。

●現在来日中の第9期生から寄せられた日本の公務員とその職場についてのコメント●

・ 日本では「大部屋」で職員が席を後ろ合わせに座り、広いオープンスペースを多くの職員が共有しており、最初はこのプライバシーがない環境に当惑したが、米国の「個室主義」とは異なり、仲間と協力して職務遂行に当たることは良い。

・ 日本では業務達成のため勤務時間が長く、慣れるのに努力を必要とした。米国では、緊急の仕事以外は残業はほとんどしない。日本の中央省庁の公務員のこうした働き方が長期的な生産性を高めるものかどうかはわからないが、業務のために耐える力を養っていることは確かである。

・ 職場環境の違いに慣れるためには、日本側の職員のまるで同僚のような助けが役立った。

・ 日米両国の公務員に共通しているのは、総合的に高い能力と熱意をもって業務を達成しようとしていることだ。両国の官僚は時々メディアから批判的に報道されるが、私は両国の官僚は有能で献身的だと思う。

・ 新潟県中越地震の発生による上越新幹線脱線にあたって、受入機関の国土交通省鉄道局の情報収集、原因の分析、復旧計画の策定・進捗において膨大な業務量をこなしながら迅速に処理することに驚くとともに、これが日本の鉄道システムを世界で最も安全にしていると感じた。

この研修の実施主体であるマンスフィールド財団で本研修開始以来その運営にあたっているペイジ・コッティンガム・ストリーター副所長は、今回の寄稿文で、米国にあっては国務省、在日大使館、日本にあっては人事院、外務省、さらに受入機関の支援により、本研修が初期の困難を克服し、次第に軌道に乗ってきたことを指摘している。この研修は、マンスフィールド財団の一貫した支援に加えて、米国連邦政府、日本政府の様々な機関など関係者の理解と協力で、10年以上円滑裡に実施されており、これからも永く継続して実施されるよう、人事院としても積極的に協力していきたい。

マンスフィールド研修の様子(国土交通省雲仙復興事務所を訪問し、説明を聞く第9期生)


なお、国際協力研修についても、直接の目的は我が国の公務員制度や人事行政を紹介し活用してもらうことであるが、我が国の社会や文化などに接してもらい、我が国について幅広い理解を得る機会となっているとされている。研修プログラムにおいて可能な限り地方への視察旅行も入れることとしており、国の地方出先機関や研修施設などへの訪問とともに、地方の人々の生活や文化に触れることができる機会となっていると評価されている。

このように我が国について深い理解をもった人たちとのつながりは、貴重な知日派・親日派ネットワークを形成するものであり、今後も研修員に評価される研修を継続していく必要がある。

在外研究員制度や派遣法に基づいて諸外国に派遣された我が国公務員についても、派遣先の国等についての幅広い理解と、そこでの人脈づくりが、重要な成果の一つとなっていると評価されている。

最近、国際社会の第一線で活躍できる公務員の育成を考える上で、マンスフィールド研修のような方式で我が国公務員を外国政府に派遣する制度を導入できないかが話題になることがある。この「研修員に実際の職場で日常業務に接する機会を長期間与える」方式は、業務を体験し相手国職員と同僚のように接することができるという、他では得られない貴重な経験と相手国についての深い理解を得られることから、検討に値するものである。

既に専門的な分野では個別、単発的にカウンターパートとなる機関に派遣している例もあるが、我が国が対応しているマンスフィールド研修では、組織的、省庁横断的、継続的な支援に加えて、カウンターパート以外の様々な機関にも受け入れる(今回のマンスフィールド研修第9期生にあっては、例えば、米国商務省からの研修員は経済産業省だけでなく、外務省や内閣府、議員事務所にも受け入れている)など、研修員のニーズに合わせた包括的かつ深度ある内容とすることができるメリットがある。このような実効的取組を継続的に行うためには、受け入れる側、派遣する側双方において特段の理解、信頼及び配慮が必要であり、今後の検討課題と考える。

2) 日中韓人事行政ネットワーク等の交流の推進

日中韓人事行政ネットワークは、セミナー・フォーラムの開催等の大枠が覚書において合意されたことを受け、今後、具体的な日程、内容等を決めることとなっているが、このネットワークを通じた緊密な連携と交流が着実な成果をあげていく必要がある。

日中韓三国間においては、これまで様々な協力が官民それぞれにおいて進められているが、本ネットワークが、三国の人事行政の改善に資するものとなるとともに、人事行政担当者、さらには、三国間の行政官の人事交流の前向きで安定的な発展に資することに役立ち、グローバルな視点で物事を考えることのできる職員を養成する新たな契機となることを期待している。

また、本ネットワークを通じて、日中韓三国の行政官同士の交流が深まることが、深い歴史的関係ときずなを持つこれら近隣三国が互いに「真に(地理的に)近くて(交流・国民感情の上でも)近い関係の国」となるための一助となることが期待される。


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