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第1編 《人事行政》

【第1部】 人事行政この1年の主な動き

Ⅲ 適正な公務員給与の確保

1 平成20年の報告と勧告


(1) 平成20年勧告のポイント

平成20年8月11日、国会及び内閣に対し、一般職の職員の給与等について報告するとともに、その給与の改定について勧告を行った。そのポイントは、以下のとおりである。

  1. 民間給与との較差(0.04%)が極めて小さいことから、月例給の水準改定は行わないが、医師の年間給与については平均で約11%引上げ
  2. 期末・勤勉手当(ボーナス)も民間の支給割合とおおむね均衡しており、据置き
  3. 給与構造改革の着実な実施−俸給水準の引下げ分を原資として、本府省業務調整手当を新設

人事院勧告を福田首相に渡す谷総裁(写真提供:内閣広報室)この勧告を行うに当たって、人事院は、職員団体や各府省の人事当局から、例年同様、きめ細かく意見聴取を行った。また、東京のほか全国42都市で有識者との懇話会、中小企業経営者等との意見交換を行ったほか、人事院が委嘱している「国家公務員に関するモニター」(500人)に対するアンケート調査を実施するなど、広く国民の意見の聴取に努めた。

(2) 民間給与との較差に基づく給与改定

平成20年の給与勧告を行うに当たり、例年同様、春季賃金改定後の民間企業の給与実態調査を行ったところ、定期に行われている昇給を実施した事業所のうち、昇給額が昨年に比べて増額となっている事業所の割合が昨年に比べて減少しているのに対し、減額となっている事業所の割合は増加していた。

このような状況において、平成20年4月分の月例給の民間給与との比較を行った結果、公務員の月例給与が民間給与を136円(0.04%)下回っていた。人事院としては、以下の事情を総合的に勘案した結果、平成20年は、行政職俸給表(一)適用職員について、月例給の改定を行わないことが適切であると判断した。

特別給については、民間の年間支給割合が公務の年間支給月数とおおむね均衡していたことから、期末手当及び勤勉手当の支給月数の改定を行わないこととした。

また、行政職俸給表(一)以外の俸給表適用職員についても、行政職俸給表(一)適用職員との均衡を考慮し、水準改定を行わないこととしたが、医師の給与については、国の医療施設における勤務医の確保が重要な課題となる中で、国の医師の給与は民間病院や独立行政法人国立病院機構に勤務する医師の給与を大きく下回っており、年間給与を独立行政法人国立病院機構の医師の給与と均衡するよう平均で約11%引き上げることとした。

具体的には、若手から中堅の医師の人材確保を図るため、初任給調整手当について、最高支給限度額を104,000円引き上げるとともに、国立高度専門医療センターに勤務する者については、現在適用されている初任給調整手当の「職員の区分」を一段階高い区分に引き上げることとした。(平成21年4月1日実施)

なお、平成19年に改定が見送られた指定職俸給表適用職員の期末特別手当については、平成20年は、一般の職員について民間の支給割合と公務の支給月数がおおむね均衡しているものの、民間の支給割合が昨年を下回ったこと等を考慮し、今回は、改定を行わないこととした。

(3) 給与構造改革

国家公務員給与については、平成18年度から平成22年度までの5年間で給与構造改革に取り組んでおり、地域の民間賃金をより適切に反映させるための地域間給与配分の見直し、年功的な給与上昇の抑制、職務・職責に応じた俸給構造への転換、勤務実績の給与への反映の推進などの実現のため、俸給制度、諸手当制度全般にわたる改革を進めてきている。

地域間給与配分の見直しについては、全国共通に適用される俸給表の水準について、民間賃金水準が最も低い地域に合わせ、平均で4.8%の引下げを実施する一方、主に民間賃金が高い地域に勤務する職員を対象として、3%から最大18%までの地域手当を支給することとするとともに、広域にわたる異動を行う職員を対象に広域異動手当を新設した。

年功的な給与上昇の抑制についてみると、平成17年から平成20年までの3年間で、中堅層以上である35歳から59歳までの間において平均俸給月額が1万6,000円(4.3%)程度減少しており、俸給カーブのフラット化は着実に進んでいる。

平成21年度においても、新たに、給与構造改革における俸給水準の引下げに合わせた給与配分の見直し措置の一環として、アのとおり、本府省業務調整手当を新設することとしたほか、平成21年度における地域手当の支給割合を改定し、地域間給与配分の見直しを着実に進めることとした。

ア 平成21年度において実施する事項

平成21年度においては、俸給水準の引下げ分を原資として、以下の施策について所要の措置を講ずることとした。

(ア) 本府省業務調整手当の新設

国家行政施策の企画・立案、諸外国との折衝、関係府省との調整、国会対応等の本府省の業務に従事する職員の業務の特殊性・困難性を踏まえ、近年、各府省において本府省に必要な人材を確保することが困難になっている事情を併せ考慮し、本府省の課長補佐、係長及び係員を対象とした本府省業務調整手当を新設する。

これに伴い、本府省の課長補佐に対する俸給の特別調整額は廃止し、あわせて、俸給の特別調整額と超過勤務手当等との併給を可能とする取扱いを廃止することとする。

① 支給対象
ⅰ 支給対象とする業務

本府省内部部局又はこれに相当する組織の業務に従事する職員に対して支給する。ただし、組織法令上内部部局に属する組織ではあるが、内部部局と別の場所に所在する官署において、内部部局の固有の業務と同様の業務の特殊性若しくは困難性又はその業務に従事する職員の確保の困難性が認められない業務に専ら従事する職員には支給しない。

また、本府省内部部局以外の組織の業務に従事する職員のうち、内部部局と一体となって行う、各府省の政策に関わる調査研究、重要事項の調査審議等の業務で、内部部局の固有の業務と同様の業務の特殊性及び困難性を有するものに従事する職員であって、その確保の困難性が認められる職員に対しても支給する。

ⅱ 支給対象とする職員

本府省業務調整手当の支給対象は、行政職俸給表(一)、専門行政職俸給表、税務職俸給表、公安職俸給表(一)、公安職俸給表(二)又は研究職俸給表の各俸給表が適用されている者(俸給の特別調整額の区分が一種から五種までの官職を占める者を除く。)とする。

② 手当額

手当額は、行政職俸給表(一)が適用される職員にあっては職員の属する職務の級、行政職俸給表(一)以外の俸給表が適用される職員にあっては当該俸給表の各職務の級に相当する行政職俸給表(一)の職務の級における最高の号俸の俸給月額の100分の10を上限とする役職段階別・職務の級別の定額制とする。具体的な手当額は、行政職俸給表(一)が適用される職員のうち、課長補佐の手当額については、本府省の課長補佐に対する現行の俸給の特別調整額の額に、当該俸給の特別調整額の額に100分の18を乗じて得た額を加えた額とし、係長以下の手当額については、各職務の級の人員分布の中位に当たる号俸の俸給月額に、係長にあっては100分の4、係員にあっては100分の2を乗じて得た額(行政職俸給表(一)以外の俸給表が適用される職員にあっては、当該俸給表の各職務の級に相当する行政職俸給表(一)の職務の級の手当額)とする。

③ 実施時期等

平成21年4月1日から実施する。

なお、平成21年度における手当額は、課長補佐にあっては、 平成21年度の地域手当1級地の支給割合を基に算出した額とし、係長及び係員にあっては、②の手当額の2分の1の割合を基に算出した額とする。

④ 本府省業務調整手当の新設に伴う俸給の特別調整額の経過措置

本府省の課長補佐に対する俸給の特別調整額の適用官職を占める職員で、本府省業務調整手当の支給対象とならないものに対しては、経過措置として、平成22年4月1日から一定割合を減じる方法により、暫定的な俸給の特別調整額を支給する。なお、平成19年度の俸給の特別調整額の定額化に伴う経過措置期間中の者についても、従前の経過措置を継続する。

(イ) 地域手当の支給割合の改定

地域手当の支給割合は、平成22年3月31日までの間は、地域手当の級地の区分ごとに人事院規則で定める暫定的な支給割合とすることとされており、平成21年4月1日から平成22年3月31日までの間の支給割合については、支給地域における職員の在職状況等を踏まえ、表2のとおりとする。

[表2]平成21年度の地域手当の級地別支給割合
イ 給与構造改革期間終了後の取組

給与構造改革は、地域の民間賃金をより適切に反映させるとともに、民間における賃金制度の動向も踏まえ、年功的な給与体系から職務を基本とし能力・実績に応じた給与体系となるように公務の給与体系を抜本的に見直そうとするものであり、平成22年度までの期間を一区切りとして取り組んできている。

現在の取組の終了時点において、これまでの給与構造改革の効果を検証するとともに、地域における民間給与の状況等を踏まえ、引き続き地域間の配分の在り方を検討することに加えて、給与における能力・実績主義を一層推進する観点から、新たに導入される人事評価制度に基づく評価結果の給与への活用状況を踏まえつつ、必要に応じ更なる見直しを検討するものとする。

さらに、近時、雇用と年金の連携を図るため、60歳台前半における雇用問題が重要な課題となっており、これに対処するに当たっては、60歳台前半のみならず60歳前も含めた給与水準及び給与体系の在り方について、人事施策の見直しと一体となった検討を行うことが求められている。

給与構造改革期間終了後は、以上のような諸課題に対応すべく総合的な検討を行っていく必要があると考えており、今後、具体的な問題点等を整理しながら、その準備を進めていくこととする。

ウ 勤務実績の給与への反映の推進

昇給制度や勤勉手当制度における勤務実績の給与への反映の推進については、給与構造改革の柱の一つとして取り組んでいるところであるが、平成21年4月の新たな人事評価制度の導入に伴い、別途(第1部Ⅰ2(3)参照)に示すとおり、評価結果を給与に活用することにより、勤務実績の給与への反映の一層の推進を図ることとしている。

評価結果の活用のうち、昇給、勤勉手当及び期末特別手当について講ずる措置及び新たに整備する降給の仕組みを整理すると、以下のとおりである。なお、今後は、各府省における評価結果の活用状況についてフォローアップを行うとともに、必要に応じて基準の見直しを行い、適切な運用が確保されるよう努めていくこととする。

(ア) 昇給、勤勉手当及び期末特別手当に関する措置
①  昇給の勤務成績判定は、評価結果に基づいて行うこととする。具体的には、1年間(10月〜9月)における能力評価及び業績評価の結果を、その直後の昇給日(翌年の1月1日)に係る昇給の勤務成績判定に用いることとする。
その際、勤務成績判定期間中及び同期間終了後の懲戒処分等についても、当該昇給日に係る昇給の勤務成績判定に反映させることができるようにすることとする。
②  勤勉手当の勤務成績判定は、基準日以前における直近の業績評価の結果及び基準日以前6か月以内の期間における勤務の状況(勤務期間及び懲戒処分等)に基づいて行うこととする。
その際、4月〜9月の期間に係る業績評価の結果を12 月期の勤勉手当の勤務成績判定に、10月〜3月の期間に係る業績評価の結果を6月期の勤勉手当の勤務成績判定に用いることとする。
③  指定職俸給表の適用を受ける職員に支給される期末特別手当について、業績評価の結果が下位である職員に対しては、「勤務成績が良好でない場合」に該当するものとして減額して支給することとする。
(イ) 降給の仕組みの整備

新たな人事評価制度の導入に伴い、公務の適正かつ能率的な運用を図るため、国家公務員法第75条第2項に基づく処分として、勤務実績が不良であり公務能率に支障を生じさせている場合に、職員を降給させることができる仕組みを新たに設けることとする。

このうち、降号は、職員の勤務実績が良くない場合に、その職務の級は変更しないが号俸を現在よりも下位の号俸に決定するものであるのに対し、降格は、その職務の級を現在よりも下位の職務の級に決定するものであり、能力評価又は業績評価の結果を処分の契機として活用するものとする。

(ウ) 実施時期

人事評価が実施され、これに基づく評価結果が確定したときには、直ちにそれを給与に活用するものとするよう措置を講ずることとする。

本府省内部部局及びこれに相当する組織以外に勤務する職員に係る評価結果の活用開始時期については、直ちに活用できる場合を除き、本府省の1年後とする。


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