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第1編 《人事行政》

【第2部】 人事院の創立、変遷と国家公務員人事管理における現代的課題

はじめに


昭和21年11月3日、日本国憲法では、一連の戦後の改革の中で、公務員についても民主化に向けて抜本的に改定されることになった。すなわち、憲法第15条第1項「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」と同条第2項「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」を定めて、公務員の本質を明らかにしている。

これは、公務員制度を樹立するのに際し、公務員の選定罷免権が最終的には国民にあるということが保障された制度でなければならず、特定の勢力や一部の集団に奉仕するような制度を禁止し、公務員を規律する基準そのものが国民の監視下におかれなければならないことを意味している。

現在の公務員制度の基本法である国家公務員法は、新憲法の下、昭和22年10月に、公務員の性格を「天皇の官吏」から「国民全体の奉仕者」としての公務員に転換し、「公務の民主的且つ能率的な運営を保障する」ことを目的として制定された。

翌23年には、公務組織における労働運動の高まりに対して、マッカーサー書簡や公務員のストを禁止する政令第201号の発出という経緯を経て、同年12月に国家公務員法は改正された。公務員の争議権などの労働基本権が制約されるとともに、その代償措置として国会及び内閣に対する勧告制度が設けられ、独立した規則制定権などが付与され、ここに人事院が創立されることとなった。

人事院は、昭和23年の創立以来、中央人事行政機関として、平等取扱いの原則の下、能力実証に基づく成績本位の任免、給与、分限、懲戒等についての基準を定め、公務員が全体の奉仕者として職務を遂行できるよう努めてきている。また、労働基本権が制約されている公務員について、毎年の給与勧告や勤務条件に関する勧告、意見の申出等により、社会一般の情勢に適応させるという原則に基づく適切な処遇の確保など、課せられた役割を果たしてきた。

近年、社会経済情勢は大きく変化し、グローバル化・情報化やバブル経済の崩壊・格差の拡大が進み、行政課題は高度化・多様化してきた。また、内閣機能の強化、規制緩和や民営化など行政の機能、組織及び運営の在り方などについての構造改革が推進される中、公務員人事管理における制度疲労や不適切な人事慣行の存在が顕在化してきている。このため、時代の変化や国民の要請にこたえきれていないとして、公務員制度改革の論議が高まり、行政を担う公務員の在り方についても大きな変革が迫られている。

このような国際化や社会経済の成熟等に伴う公務員制度の今日的課題への対応は喫緊の課題となっていることから、本稿では、人事院創立60年を機に、人事院制度の変遷を振り返り、公務員制度の基本的理念を改めて問い直しつつ、目指すべき民主的で能率的な公務員制度の現代的課題について整理することとする。


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