前(節)へ 次(節)へ

第1編 《人事行政》

【第2部】 人事院の創立、変遷と国家公務員人事管理における現代的課題

第1節 人事院の創立、変遷

2 国家公務員法の成立による公務員制度の確立


(1) 成立の経緯

終戦後、日本の民主化が進められることとなり、「天皇の官吏」であることを基本とする官吏制度は改革されることとなった。まず、昭和20年11月、閣議決定により、複雑な官名の統一、俸給制度の統一等を行うこととし、昭和21年4月の勅令の制定等によりこれを実施に移すとともに、同年10月、新憲法制定に当たり関係法案作成のために設置されていた臨時法制調査会から「官吏法案要綱」の答申が出されたので、官吏服務紀律の改正により、官吏は「国民全体ノ奉仕者トシテ誠実勤勉ヲ主ト」すべきものに改められたが、これらは応急的な改正にとどまっていた。

昭和21年11月には、日本政府の求めに応じ、人事行政の実施に関するすべての法律、政策、慣行及び手続を内容とする日本政府の人事行政制度を研究すること及びその判断に基づいて日本政府の人事行政全般の改善のための勧告を行うことを目的とする顧問団(いわゆるフーバー顧問団。団長はブレーン・フーバー アメリカ・カナダ人事委員会連合会会長)が来日し、日本の官吏制度及びその実態を調査することとなった。その結果、日本の官吏制度改革のためには、強力な中央人事行政機関を設置し、民主的な方向のメリット・システムと能率増進を目的とする公務員制度の基本法たる国家公務員法の制定が必要であるという結論に達し、昭和22年6月には国家公務員法の草案(いわゆるフーバー草案)を提示することにより、日本政府への勧告を行った。

勧告を受けた日本政府は、勧告された内容のうち、①人事院の予算上の独立や内閣の承認を要しないとする独自の規則制定権を定めた規定を削除する、②職員の団体交渉権、ストライキ権を認めないとする規定を削除し、政治的行為の制限・禁止の規定を緩和するなどの重要な変更を加えた上で(注2)国家公務員法の法案を作成し、昭和22年8月に国会に提出した。衆議院においては、人事院の名称を人事委員会にする、公選による公職の立候補を公務員に対して原則として禁止しないなどの修正をした上で、可決し、その後参議院において、同修正案を可決し、国家公務員法は同年10月21日に法律第120号として公布(昭和23年7月施行)された。

(注2)国家公務員法が成立した後、フーバー草案に対して、ストライキ権を認める、人事院の独立性を弱める等の重要な変更が加えられたことを知ったフーバー氏は、「成立した国家公務員法とフーバー草案との間には悲劇的な相違が存在する」などと強く批判した。こうしたことが国家公務員法の早期改正につながっていった。
(2) 中立・公正性を軸とした国家公務員制度の確立(人事委員会の創立)

昭和22年10月に成立した国家公務員法は、新憲法の下、「国民全体の奉仕者」とされた公務員の人事管理の中立・公正性の確保の機能を確立すること(注3)を主な内容としていた。詳細は次のとおりである。

(注3)昭和22年9月25日の衆議院決算委員会で佐藤達夫法制局長官は「この立案の根本の態度と申しますのは、(中略)公務員というものは一体いかなる内閣のもとにおいてでもその使用する内閣の機械にたとえますと、その運転するところに従って活動すべきもので、この機械が円滑に動きますためには、これを構成しておりますいわゆる部分品と申しまするか、一人一人の役人がこの部分品にあたるとたとえて申し上げて良かろうと思います、その一つ一つの部分品は完全な規格品でなければならぬ。(中略)だれが、どの内閣がその使用の立場に立っても、ある内閣の場合には動かしやすい、ある内閣の場合には動かしがたいというようなことがあっては、本来の精神に反しますから、そういうことがないように、しかもこの機械であるところの公務員は、そういう事柄にはわき目もふらずに、しかも安定した組織のもとに、これに安んじて職務に専心するというようなことでなければならぬという根本の趣旨のもとに、この法案が組み立てられているわけでございます。これは一口に申しますと、公務員の科学性と合理性、中立性というようなことに、これはとっさの言葉で、完全なことではありませんが、大体そういうようなことが一つの要点になっていると思うのであります」と答弁している。
(注4)昭和23年7月1日から人事委員会が設置されるまでは、臨時人事委員会が人事委員会の職権を行うこととされた。なお、下記3の国家公務員法の改正の結果、人事委員会は設置されることなく、昭和23年12月3日、臨時人事委員会がそのまま人事院に改組された。

なお、給与については、官職の職務と責任に応じて支給すること及び情勢適応の原則が定められることとなった。


前(節)へ 次(節)へ
© National Personnel Authority