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第1編 《人事行政》

【第2部】 人事院の創立、変遷と国家公務員人事管理における現代的課題

第3節 国家公務員人事管理における現代的課題

4 人事院勧告制度と労働基本権


(1) 人事院勧告制度に対する評価と問題

一般職非現業国家公務員については、争議権及び協約締結権が制約されていることから、その代償措置として給与等勤務条件について人事院勧告制度が設けられている。給与勧告は、国家公務員法に定める情勢適応の原則に基づき、毎年公務員の給与水準を民間企業従業員の給与水準と均衡させる民間準拠を基本に行ってきている。

この給与勧告制度については、次のような評価がなされている。

これらの問題に関しては、人事院としては、より幅広く精確な比較を行うため調査対象の企業の規模の引下げを図り、さらに給与構造改革において、官民給与を詳細に比較して俸給表水準の4.8%の引下げと調整手当に替えた地域手当の新設や昇給・ボーナスへの実績反映などの措置を講じてきたところである。

今後とも、民間給与の動向等を把握しつつ、社会一般の情勢に適応させるという原則に基づき必要な対応を進める考えである。

(2) 労働基本権についての考え方

国家公務員の労働基本権の在り方の見直しについては、現在、国家公務員制度改革推進本部の労使関係制度検討委員会(座長 今野浩一郎学習院大学経済学部教授)で様々な論点について検討が進められている。

この問題に関し、最高裁判決(全農林警職法事件判決 最高裁大法廷 昭和48年4月25日)では、国家公務員も勤労者であるという意味において憲法上の労働基本権の保障が及ぶが、同時に公務員の地位の特殊性と職務の公共性に鑑みると、国民全体の共同利益の見地からの制約を免れないとしている。これは、憲法上、公務員は全体の奉仕者であるとしていることと同様の趣旨であり、公務員の労働基本権の在り方を議論する場合には、民間とは異なる公務に特有の論点について議論する必要がある。

この論点としては、公務員の給与の財源は税収によって賄われており、民間企業のような利益の分配とは性格を異にしていること、公務員の勤務の在り方の基本については、公務員の真の使用者である国民を代表する国会において定めるべきものであること、財政民主主義の視点からも国会の関与が必要であること、いわゆる市場原理が働かないこと、国民生活への影響があること、さらに当事者のみならず国民・納税者の理解も不可欠であることが挙げられる。

公務員の労働基本権の在り方に関しては、こうした論点を含め、多角的な視点から幅広い議論が必要と考える。


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