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第1編 《人事行政》

【第2部】 公務員の労使関係−給与決定過程を中心として−

T はじめに


国家公務員の労働基本権の在り方の見直しについては、国家公務員制度改革基本法(平成20年法律第68号)で「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする」(第12条)と定められ、これを受けた検討の一環として、平成21年12月15日には国家公務員制度改革推進本部の労使関係制度検討委員会の最終報告「自律的労使関係制度の措置に向けて」が出されるなど、引き続き政府において検討が進められている。

国家公務員制度は、行政に携わる国家公務員の人事や処遇・規律の在り方を定めるものであり、国家公務員が安んじて職務に専念し、与えられた使命を全うすることにより、国民に対して質の高い行政を効率的に提供していく上で重要な基盤となっている。

そうした中で、国家公務員の労働基本権の在り方は、国家公務員の権利に関わる問題であると同時に、勤務条件の決定手続や労使間の紛争処理という面で国家公務員の人事制度や行政の執行体制に関わり、また、国民に対する行政サービスにも大きな影響を与え得る問題である。したがって、現行制度を見直し、新たな制度設計を議論する際には、憲法上の公務員の地位の特殊性や職務の公共性に由来する、民間と異なる公務に特有の論点について十分精査した上で、行政サービスの受け手であるとともに究極的な使用者でもある国民に理解され、公務能率の向上に資するものとなるよう、様々な角度からの検討が必要である。

国家公務員の労働基本権の在り方を考える上では、国際労働機関(InternationalLabourOrganization:ILO)の考え方や主要諸外国(イギリス、ドイツ、フランス及びアメリカ)の状況を整理し、さらにはかつての我が国のいわゆる三公社五現業において大きな問題となった当事者能力の在り方などについて考察しておくことが有益であると考えられる。

本稿では、特に給与決定過程を中心として、主要諸外国における労使交渉等の実際及び我が国の三公社五現業の例を紹介することとする。


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