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第2編 《国家公務員倫理審査会の業務》

【第1部】 特集 倫理法・倫理規程の10年と今後の展望

第1節 倫理法・倫理規程の10年

1 倫理法・倫理規程の10年を振り返って


  平成12年4月に施行された倫理法・倫理規程は、当時、公務員の深刻な不祥事が頻発し、公務に対する国民の信頼が著しく損なわれるという状況の下、職務の執行の公正さに対する国民の疑惑や不信を招くような行為の防止を図り、もって公務に対する国民の信頼を確保することをその目的として制定された。そのため、倫理規程は、職員の不祥事の原因となる利害関係者からの贈与、供応接待等の国民の疑惑や不信を招くおそれのある行為について、厳格かつ細目的に規制したものとなっている。
  平成12年2月に倫理審査会が行った倫理規程の制定に関する意見の申出に当たっての談話の中で、当時の会長はその制定の考え方について次のように述べている。
  「いったん緩んだ規律を引き締めるためには、ある程度厳しいルールを厳格に適用することが必要となる。平時においては不必要、場合によっては行き過ぎかと思われるいくつかのルールについても、あえて盛り込むという決断を行った。一日も早くルールを緩和できるような平時となることを願ってやまない。」
  この談話からもわかるように、倫理規程制定当時においては、不祥事が頻発するという異常事態を脱するための緊急措置として、厳しいルールを定める必要があるが、いずれ平時に復した際にはルールの緩和を図ることが望ましいとの認識だったことが窺える。
  その後、倫理規程施行から5年が経過した平成17年4月、倫理審査会の意見の申出に基づき、倫理規程の一部改正が行われた。この改正においては、監修料の適正化、職員の職務に係る倫理の保持を阻害する行為等の禁止など新たな規制が設けられた一方で、自己の飲食の費用について利害関係者の負担によらない場合(すなわち自ら負担する場合又は利害関係者でない第三者が負担する場合)には、利害関係者と共に飲食することを認めるという規制の一部緩和が図られた。このような規制の一部緩和は、制定当初の倫理規程が、夜間に利害関係者と共に飲食することを(たとえ割り勘であっても)原則として禁止していたことにより、行政と民間企業等の間の情報交換等に支障が生じているという公務内外からの指摘に応えたものであった。これにより、倫理規程は公務の実情や社会経済状況により適合した現実的なものとなった。このときの会長談話では、倫理規程について、「倫理規程は、もともと倫理というもおこがましい、最低限度の服務規準を定めたものに過ぎない。倫理規程なんか、本来、忘れてしまっていてもよいくらいのものである。自己の良心と常識に従って行動していれば、なんの問題もないはずである。しかるに、倫理規程に規定してあることさえ守っていれば、公務員としてはそれで十分で、書いてなければ何をやっても構わないという風潮が一部にあるとすれば、誠に嘆かわしいことである。」と言及している。
  倫理規程の施行から平成21年度までにおいて倫理法等(倫理法・倫理規程及びこれらに基づく命令をいう。以下同じ。)違反により懲戒処分又は矯正措置(各府省の内規による訓告・厳重注意・注意等の措置)(以下、懲戒処分又は矯正措置を「懲戒処分等」という。)を受けた職員数を見ると、平成21年度は前年度比で大きく減少したものの、近年総じて高い水準にあるといわざるを得ない状況が見られる。特に、平成17年度は222人、平成19年度は159人、平成20年度は267人が倫理法等違反を理由として懲戒処分等を受けている。これらの年度には、一つの事案ではあっても関与した職員が多く、そのため多くの職員が処分等を受けたという事件も起きている。例えば、厚生労働省の地方機関における不正経理事案(平成17年度)、社会保険庁における接待事案(平成17年度)、多くの府省で違反者を出したタクシー内接待事案(平成20年度)などである。また、本省課長級以上の職員が関与していた事案や、免職、停職などの重い処分が行われた事案も多く見られるという状況が続いている。さらに、倫理法等違反だけでなく、その他の服務義務違反などの不祥事も多数発生しており、依然として、公務に対する国民の信頼が損なわれているという事態が改善されたとはいえない状況にある。
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