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第2編 《国家公務員倫理審査会の業務》

【第1部】 特集 倫理法・倫理規程の10年と今後の展望

第1節 倫理法・倫理規程の10年

3 倫理規程が果たしてきた役割と今後の方向性


  倫理法・倫理規程の施行から現在に至るまでの経過を見ると、倫理規程は、職員と利害関係者との関わり方を大きく変えるなどその不適切な関係の改善に向けて一定の役割を果たしてきた。
  平成21年4月に一般職の国家公務員5,000人を対象として実施した職員アンケート調査の結果(回答率81.1%)によると、「現在、倫理規程で定められている内容について、どう思いますか。」という問に対して、「妥当である」と回答した者の割合は70.9%、「厳しい」又は「どちらかといえば厳しい」と回答した者の割合は26.5%となっている。平成15 年に実施した同様のアンケート調査の結果(回答率82.7%)ではそれぞれ45.3%、50.8%、平成18年に実施した同様のアンケート調査の結果(回答率78.3%)ではそれぞれ48.1%、48.7%であったことと比較すると、「妥当である」と回答した職員の割合が大幅に増加し、逆に「厳しい」又は「どちらかといえば厳しい」
と回答した職員の割合はその分大幅に減少している(図1
[図1]倫理規程で定められている行為規制の内容全般について、どのように思いますか。
        さらに、上記平成21年4月に実施した職員アンケート調査の結果及び同月に上場企業2,489社を対象として実施した民間企業アンケート調査の結果(回答率27.0%)によると、「倫理法・倫理規程によって、国家公務員が萎縮し、行政と民間企業等との間の情報収集、意見交換等に支障が生じていると思いますか。」という問に対して、「そう思う」又は「ある程度そう思う」と回答した者の割合はそれぞれ49.8%、24.5%であり、「そう思わない」又は「あまりそう思わない」と回答した者の割合はそれぞれ43.4%、71.9%となっている(図2)。
[図2] 倫理法・倫理規程によって、国家公務員が萎縮し、行政と民間企業等との間の情報収集、意見交換等に支障が生じていると思いますか。
          このような調査結果を見ると、倫理法・倫理規程は、制定から10年を経て、国民の疑惑や不信を招くおそれのない官民の情報交換の手法など倫理法・倫理規程に適合した新たな行政手法や倫理意識が確立するまでにはもう少し時間を要するといわざるを得ないものの、国家公務員が遵守すべき倫理保持のためのルールとして、概ね受け入れられてきているといえるだろう。
  また、平成21年度において、市民モニター(人事院が広く国民の中から募集し委嘱した国家公務員に関するモニター)500人を対象として実施したアンケート調査の結果(回答率89.6%)及び有識者モニター(倫理審査会が公務員倫理モニターとして委嘱した各界の有識者)200人を対象として実施したアンケート調査の結果(回答率94.5%)を見ても、「倫理規程で定められている行為規制の内容全般について、どのように思いますか。」という問に対して、「妥当である」と回答した者の割合は、それぞれ57.6%、76.2%と高い割合を占めており、倫理規程の規制の内容は、国民一般からも肯定的な評価を得ているといえる(図3)。
[図3]倫理規程で定められている行為規制の内容全般について、どのように思いますか。
  以上のような状況を踏まえると、現在の倫理規程の規制の内容は、公務の実情や社会情勢に適合した概ね妥当なものとなっており、職員を含めた各方面からの理解も得られているものと考えられる。
  また、2で述べたように、社会情勢が大きく変化し、社会全体における倫理意識も急速に高まってきているところであり、倫理法・倫理規程は、公務に対する国民の信頼を確保するというその目的は不動であるものの、その規制の内容は、平成17年の一部改正も経て、その位置付けが変化してきており、制定当初の異常事態を脱するまでの緊急措置から、制定から10年を経た現在では、公務員に求められる高い倫理感を保持するための基礎となる最低限のルールとなってきているのではないかと考えられる。
  規制の内容については、各府省をはじめとする各方面からの意見や公務員倫理を巡る状況を見極めつつ、その時々の社会情勢の変化に応じてその見直しを検討していくことが必要であるが、現時点においては、まずは、現在の倫理法・倫理規程をより一層職員に浸透させ、倫理法等違反を無くしていくためにどのような方策を講じていくかが喫緊の課題であると考える。
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