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第2編 《国家公務員倫理審査会の業務》

【第1部】 特集 倫理法・倫理規程の10年と今後の展望

第2節 今後の展望

3 倫理法等違反への厳正な対応


  平成16年度ごろから倫理法等に違反する行為があることを理由として懲戒処分等が行われた事案件数、懲戒処分等を受けた職員数ともに大幅に増加し、平成21年度は前年度比で大きく減少したものの、平成20年度は被処分者数が過去最高であった。また、懲戒免職処分という重い懲戒処分を受けた者の数も高い水準にある。これらの中には、以前から違反行為が繰り返し行われてきたものが、ここ数年間で顕在化したものも数多く含まれており、一概に国家公務員の倫理意識が低下していると評価することはできないと思われるが、懲戒処分等件数の増加は、公務に対する国民の信頼を損なうものとなり、また、昨今の公務に対する厳しい目を考えると、一旦損なわれた国民の信頼を回復するためにはこれまで以上の努力を要するという状況にある。
  倫理法は、「公務に対する国民の信頼を確保すること」をその目的とし、倫理法等に違反した行為に係る調査及び懲戒手続を定め、任命権者にそのすべてを委ねるのではなく、倫理審査会が関与することにより公正性を担保しつつ、職員の違反行為に対して迅速かつ厳正な対応を図ることを求めているところであり、前述のような倫理法等違反の状況を踏まえれば、今後、この趣旨をより一層徹底していく必要があると考えられる。
  倫理法等違反の事案を無くしていくためには、処分を厳正に行うとともに、適切な再発防止策を講じることが重要である。
  厳正な処分が、その後の違反行為を防ぐ抑止力となることは論を俟たない。また、違法行為に対する厳正な処分なくして国民の理解を得、その信頼を確保することもできない。これまでも、倫理審査会は、各府省に対し厳正な処分を行うよう求めてきたが、その方針をより一層徹底していく必要があると考える。
  また、違反行為が確認され、一旦損なわれた国民の信頼を回復するためには、何よりも再発防止に努めることが重要であり、とりわけ研修や会議等を通じて違反事案に係る処分結果を組織内に周知させるとともに、違反の相手方である民間企業や公益法人等に対しても注意喚起を行う必要がある。今後も、各府省に対し、適切に指導を行っていきたいと考えている。
  なお、的確な再発防止策の検討に当たっては、単なる違反事実の解明に留まらず、違反行為を引き起こした職員個人の事情はもちろん、組織的な事情を勘案することが必要ではないかと考えられる。すなわち、職員個人に関しては違反に至った動機や経緯、研修の受講状況や倫理意識の状況等、組織に関しては違反発生の原因や職場が抱える問題やその背景事情等についても確認し、その結果を再発防止策に反映することも考えられるところであり、今後、そのような観点から、的確な再発防止策の推進について検討を進めていきたい。
  国民の信頼を確保するという観点からは、事案が発生したときに迅速かつ厳正に対応することも極めて重要である。
  迅速で適正な調査を行うためには、各府省における十分な調査体制と、調査能力が不可欠である。特に、調査を担当する職員には、事実を解明するために必要な能力や技能が求められる。府省の中には、職員の非違行為についての調査等を専門に行う「監察官制度」等を設けているところも一部見受けられるが、多くの府省では秘書課、人事課の職員が日常業務のかたわら、調査業務を行っているというのが実情であろう。効率的な調査を実施するためにどのような調査体制を組むかについての各府省の工夫が望まれるところであり、また、的確な調査の遂行に欠くことのできない人材を育成することも大きな課題となる。
  倫理審査会では、これまでに200件を越す違反の疑いのある行為について各府省から倫理法第22条に基づく調査の端緒に係る任命権者の報告等を受領し、最終報告に向けて各府省を支援してきた経験がある。また、各府省と共同調査を行ったという実績もあり、調査手法等に関するノウハウを蓄積してきている。倫理審査会では、これまでも調査マニュアルを作成し、各府省の調査を支援してきたところであるが、その充実を図ることはもとより、今後、これらの蓄積してきたノウハウを、実際の調査のみならず、調査のための体制づくりや人材の育成においても活用できるよう体系化したものを作成し、各府省に提供することについて検討を進めることとしたい。また、調査を担当する職員の技能向上等を図るための研修の開発等、各府省における調査能力の向上に資するような支援策についても検討を行っていきたいと考えている。

  倫理の保持のための施策には、行為規制や違反行為に対する制裁に重点を置いたルールを重視するアプローチと、行動基準や倫理意識の涵養に重点を置いた価値観を重視するアプローチとがあるとされているが、その両者をバランス良く進めていくことが大切である。倫理審査会としては、そのことも念頭に置きながら、今後とも、各府省等との連携を図りつつ、上に述べた施策を適切に推進し、公務に対する国民の信頼を確保するために努力していく所存である。
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