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第1編 《人事行政》

【第2部】 変革が迫られる国家公務員人事管理

第2章 人事評価を通じた能力・実績主義の人事管理の実現

2 具体的な対応


(1) 人事評価制度の導入と活用
〔人事評価制度の導入〕

能力・実績に基づく人事管理を推進していくため、平成21年4月からの改正国公法の施行により、公務員に新たな人事評価制度が導入されている。この導入に合わせて、人事院では、人事院規則等を改正し、評価結果の任免、給与及び人材育成への活用に関する基準を定めるとともに、各府省の評価者の評価能力向上を目的とした研修を実施するなどの環境整備を行っている。

新たな人事評価は、能力評価と業績評価により行われる。このうち能力評価については、各府省の多くの部局で平成22年10月に初めて結果が出され、今後、昇任等に活用されていくこととなるが、人事評価制度が適切に運用されるならば、評価結果を踏まえたメリハリのある人事管理が行われる基礎が得られることとなる。

人事評価については、公務では評価項目ごとの尺度に応じて絶対評価を行うことを基本としており、人材育成に当たってはその結果を活用することが可能である。他方で、給与や任用への活用においては、予算やポストの制約から昇格・昇給や昇任等が行える者に限りがあるため、絶対評価による評価結果を相対化する必要がある。しかしながら、絶対評価の結果に大きな偏りがあれば、公正で納得性のある相対化に支障が生じることになることから、人事評価の運用においては、次のような留意が必要である。

第1に、評価者は、評価者研修の受講とともに、経験を積み重ねることにより、被評価者の能力・実績を慎重に見極め、メリハリを持った評価を行うための能力を高めていくことが肝要である。第2に、各府省の人事担当部局においては、部局ごとの評価結果の状況を把握しつつ、必要に応じて指導・調整・助言等を行うことにより、評価結果の活用を含めた府省全体における適切な運用に留意することが重要である。この点、人事評価の実施権者である各府省の幹部職員は、その責任の重さを十分認識して人事評価を運用する必要がある。

 

〔人事評価制度の活用〕

長期的な人材育成、人事管理を行うに当たって、毎年の人事評価は、職員とのコミュニケーションを進め、適切な育成・配置を行うための手段となる。評価項目や評価の視点の共通化を図った評価シートをあらかじめ職員に明らかにして評価を行うことは、被評価者の納得性を高め、公正で信頼される評価を行う上で重要な意義を持つものである。

人事評価の結果は、評価期間中に発揮された能力・業績を表すものである。評価結果を昇進管理に用いる場合には、昇任候補者の選定は人事評価を基礎としつつ、具体的な昇任者の決定においては、中期的な実績や多面的な意見などを総合的に勘案して最適任者を選ぶなど、短期的な評価結果にとらわれることのない運用が必要である。

一方で、能力や貢献度の低い職員については、評価結果を上司が示し、指導を行うことを通じて職員の自覚を促し、能力の向上に努めさせるとともに、そのような職員の能力や適性を踏まえた人事配置を行う必要がある。

 

今後は、人事評価制度をもとにした任用、給与等への活用が十分に機能するかを見極めつつ、評価制度を含めた人事制度全般及び運用基準の点検や必要な見直しを行っていくことが重要である。

また、このような見直しを検討するためには、同僚や部下からの評価(意見聴取)や、外部の機関等による評価の活用のほか、昇任前の候補者を集めた研修への参加や各府省が行う政策に関する課題の提出を義務付けた上で、その結果を活用するなど、民間企業で行われている様々な取組が参考となる。

参考資料1「民間企業における取組事例」参照】

 

〔職場における意思疎通〕

職員のキャリアパスが多様化している中においては、評価者は、人事評価制度を活用しつつ、組織の活力や部下の士気を維持・向上させるため、日頃より、仕事の進捗状況や意向などについて、職員とコミュニケーションを図り、さらに、役職段階ごとの節目の時期にある職員に対しては、複線型の人事管理を含めたキャリアプランを意識して接することが必要となる。

また、職員が将来のキャリアパスのイメージを持つことにより、目標を持って計画的な働き方ができ、士気の向上にもつながることとなる。したがって、任命権者は、各職種や職場における人材育成、職員の配置・活用のイメージを策定し、職員と共有することが重要になる。

さらに、職員本人の意思を尊重した人事管理を行うための仕組みとして、期間を限って機動的に置かれるポストや特別な専門性が必要となるポストなどにおける部内公募の活用も検討課題である。

(2) ポスト在任期間

現行の人事運用では、採用年次を重視したローテーションによりポストを交替させるため、1年又は2年という比較的短期間での異動を繰り返すケースが多い。このような採用年次による順送りの人事は、部内又は部外の公募が原則となっている諸外国に例を見ないものである。今後は、所管業務の専門家として、一定期間を通じて課題への対応が可能となるような人事配置を行うこと、具体的には、当該ポストにおいて仕事をやり遂げる期間として、少なくとも3年間は、原則として異動させない方針で人事を行うことが重要である。この場合、採用から一定の育成期間等を別にして、この間は職員の育成等の観点も考慮する必要がある。

また、従来から、局の筆頭課長に局内の他の課長よりも採用年次が上の者を就けた上で、各採用年次の者に局の筆頭課長を経験させるため、1年ごとに筆頭課長を交替させる人事運用が行われているケースがある。筆頭課長等の重要課長も含め、採用年次にこだわらず、例えば、3年間から5年間の範囲の採用者を一つのグループとみなして、人事評価の結果を踏まえた適材適所の人事配置を行うことを心掛けることも必要である。

(3) 管理職員のマネジメント能力の向上

本府省の課室長や管区機関の部課長などの管理職員には、これまでプレーヤーとしての業務執行が優先され、組織管理や人事管理に大きな役割を期待されてこなかった。しかしながら、人事評価を通じた能力・実績主義による人事管理を進めていく上で管理職員の果たす役割は大きく、今後は、マネジメント能力を高めていくことが重要となる。

具体的には、今後、職員全体として在職期間が長期化し、組織の新陳代謝や昇進管理が厳しくなっていくことが想定されており、そのような状況の下において、管理職員は、組織の活力や部下の士気を維持・向上させることが重要となる。

また、行政が複雑・高度化する中において、管理職員は、組織に属する職員の能力・専門性を高めることにより、組織全体としての業務遂行能力を高めていくことに意を用いることが必要となる。したがって、大臣や幹部職員等が明確なグランドデザインや組織目標を定める中で、それぞれの管理職員は、担当部局の目標を部下に明らかにしつつ、部下の能力・特性や意向によりきめ細かく配慮することが求められる。

(4) Ⅱ種・Ⅲ種試験等採用職員の幹部登用

これまで幹部職員の多くは、国家公務員採用Ⅰ種試験から採用された職員が占めてきたが、採用された試験の種類にとらわれず実際に発揮されている能力・実績に応じて登用を行うべきである。

人事院は、国家公務員採用Ⅱ種試験・Ⅲ種試験等から採用された職員のうち、意欲と能力のある優秀な者の幹部職員への登用を促進するため、平成11年3月に「Ⅱ種・Ⅲ種等採用職員の幹部職員への登用の推進に関する指針」を発出し、採用試験の種類にとらわれない能力・実績に基づく人事管理を推進してきている。その結果、これらの職員の幹部職員への登用が拡大しているが、在職期間の長期化等に伴い、近年は横ばいとなっている。今後、人事評価の結果を活用しつつ、これらの職員を登用するための研修や政策の企画立案等を行うポストへの配置等を行い、全体として公平・公正な人事に徹することが重要である。

(5) 女性公務員の幹部登用

政策・方針決定の過程への男女共同参画の推進は、男女共同参画社会の実現の基盤をなすものであり、そのためには、公務における女性職員の採用・登用の拡大に率先して取り組む必要がある。特に、女性公務員の幹部職員への登用については、国際的に比較しても依然として低い水準にある。

このため、各府省においては、第3次男女共同参画基本計画で示された成果目標や人事院の策定した「女性国家公務員の採用・登用の拡大等に関する指針」(平成23年1月改定)に基づき、採用・登用の拡大等に関する計画を策定するとともに、人事評価の結果を活用しながら、意欲と能力のある女性公務員の幹部職員への登用を積極的に推進していく必要がある。


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