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第1編 《人事行政》

【第2部】 変革が迫られる国家公務員人事管理

第3章 採用から退職までの視点に立った人事管理

2 具体的な対応


(1) 多様な人材の確保

国家公務員の採用は、従前から国家公務員採用試験からの採用が一般的であるが、平成24年度からは、従来のキャリアシステムの見直しを念頭に置きつつ、人事管理の抜本的な見直しの契機となるよう、現行のⅠ種試験、Ⅱ種試験等を廃止し、試験において検証する能力に応じて、総合職試験、一般職試験等に再編することとしている。

新たな採用試験においては、新たな人材供給源からの人材確保を目指して、例えば、総合職試験に、院卒者試験のほか、法務区分や教養区分を設けることとしている。加えて、一般職試験等に社会人試験を設けたり、経験者採用試験を創設したりすることとしており、これらにより多様な人材の確保を目指している。

以上のほか、任期付職員制度や官民人事交流制度を通じて、民間人材の活用も進んでおり、今後、なお一層の活用が期待される。

(2) 人事評価を活用した研修の開発
ア 若い人材の育成と選抜

国家公務員採用試験から採用された職員については、一般的に、職場におけるOJTに加えて、公務外を含めた計画的な人事配置や研修への参加を通じた育成が行われている。今後は、ライン職を含めて担当行政分野に関する深い知識、経験が求められることになることから、特に、育成段階においては、個々の職員の適性を十分に見極めながら、広く、かつ、深い専門性を付与することを目指す必要がある。あわせて、職員自らも、進んで能力の開発・向上に努めることが重要である。

その際、政策形成に関与する職務経験や管理的業務の訓練、海外留学などの機会には量的に制約があることから、効率的で効果的な人材育成を行うためには、採用後の早い段階からこうした機会を優先的に付与するのにふさわしい人材を公正に選抜することが重要である。

イ 本府省課長級ポストへの昇任の厳格化

今後、在職期間が急速に長期化する中で、本府省課長級以上のポストに就任している者の退職者数が大幅に減少し、新たに課長級のポストへの昇任を行わせることが困難となっていくことが想定され、平均的な課長昇任年齢が上昇することが見込まれる。

一方、組織の活力や職員の士気の維持・向上の観点からは、特に優秀で管理能力に秀でた職員については、早期に抜擢し、課長級以上のポストに登用していくことも重要である。

したがって、今後、課長級のポストへの昇任については、昇任後の職員を長期間にわたって管理職員や幹部職員として活用することを前提として、人事評価の結果や適性を十分に見極め、厳選して昇任させるなど、中長期的な視点を持った人事管理を行っていくことが必要である。

ウ 幹部職員の選抜

行政課題に対する国民の関心が高まる中で、本府省の審議官以上の幹部職員には、特に、常に国益を優先する行動様式、行政を支える気概や使命感、先例にとらわれない柔軟性が求められている。これらのポストには、所管分野の専門家である公務部内の職員が登用されるのが通例であるが、幹部職員として期待される構想力、説明能力、統率力などの総合的な職務遂行能力について、個々の職員の長期の在職期間を通じて明らかになっている能力や適性に基づき、厳しく評価し、選抜していくべきである。

他方で、行政課題が、複雑・高度化し、グローバル化する中においては、幹部職のポストに、公務外の専門性の高い者等を採用することが必要となることも想定される。公務外の者については、公務部内における勤務実績や人事評価などの客観的な指標がないことから、これらに代わる資格、職務経験、業績等の根拠に基づいて能力検証を行うなど、きめ細かな選考を行う必要がある。さらに、能力検証を確実なものとするため、採用を予定しているポストよりも一段階下位のポストで一旦採用した上で、採用後の業績等を踏まえて任用させることも検討していく必要がある。

(3) 専門家の育成と複線型人事管理

複雑・高度化する様々な行政課題に適切に対応するためには、効率的、効果的に課題に対処する必要があることから、専門性の高いスタッフ職を活用することが有用である。このため、専門家としてのキャリアパスに対する意欲と能力のある職員に対しては、早いタイミングで、その分野の専門家として育成する方針であることを意識させ、実務家として養成していくことが適当である。

その上で、特に高い専門性を有する職員に対しては、国際的にも通用する専門家として活躍できるよう、十分な育成機会と特別の水準での処遇を与えるとともに、専門家として、意思決定にも積極的に参画させるなどの配慮をすることが必要である。

また、行政課題のグローバル化や情報のボーダレス化が進展している中で、日本の国際競争力を高めていくためには、諸外国との関係強化や国際的な発言力を高めていくことが重要であり、国際的な人材の育成の強化が今後ますます重要となる。

そのためには、適性のある者を早い段階から選抜し、外国留学などを通じた学位の取得や、所管の行政分野に関連する国際機関等における勤務を積極的に行わせることが必要となる。国際的な交渉の場では、長期に一定分野の業務に従事している者の発言力が高いことも踏まえ、国際機関等において、5年以上の継続した勤務や、在外公館における勤務も含めて複数回における海外勤務を経験させることにより、専門性や発言力を高めていくことが必要である。

採用後、一定の勤務年数が経過した職員についても、それまでの様々な分野における勤務経験により培われた能力や専門性を踏まえ、次の(4)で述べる民間企業や国際機関等への転出を含め、最も適性がある分野を中心とした専門家として長期間にわたって育成していく途を設けることが重要である。

なお、専門性の高い人材については、スタッフ職のポストに固定せず、再びライン職のポストにおいて活用することも推奨すべきである。

(4) 公務人材の多様な活用

定年年齢が引き上げられた場合、一般的には、定年年齢に達するまで在職することとなるが、必ずしも全ての職員が定年まで公務内で在職しなければならないわけではなく、職員本人の意向を踏まえつつ、例えば、本府省の幹部職員及び管理職員などは、組織の活力維持等の観点から、能力を活用して公務外で勤務する方策を検討することも必要となる。

具体的には、「退職管理基本方針について」(平成22年6月22日閣議決定)で定められているとおり、官民人事交流、公益法人等への休職出向、独立行政法人等への役員出向に係る環境整備を踏まえつつ、官民の人事交流、大学や民間の研究機関等への派遣、職員の国際機関等への派遣、地方公共団体との人事交流などの拡充を図ることが必要である。

これに加えて、公益法人等への再就職についても、これらの法人等の合理化等を行った上で必要な事業については、公募等による公正な仕組みの下、公務人材を活用することも検討していく必要がある。

また、民間企業の中には、比較的若年層の公務員を受け入れて専門家又は将来の幹部として活用したいとする事例も見られる。比較的若年の公務員で民間企業への勤務を希望する者については、民間企業に転出(転籍)しても制度的に不利にならないような仕組みとするなどにより、公務外における人材活用の途を拡大することも考えられる。

さらに、日本の国際競争力を高めるとともに、職員のキャリアパスの多様化の観点から、派遣期間の終了後引き続き国際機関等における勤務が求められるような人材については、当該国際機関等への転籍など、柔軟な人事管理を行うことが考えられる。


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