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第1編 《人事行政》

【第1部】 人事行政この1年の主な動き

第1章 適正な公務員給与の確保

1 報告と勧告


(1)勧告のポイント

平成23年9月30日、人事院は国会及び内閣に対し、一般職の職員の給与等について報告し、給与等の改定について勧告を行った。そのポイントは、以下のとおりである。

1 公務員給与が民間給与を上回るマイナス較差(△0.23%)を解消するため、50歳台を中心に、40歳台以上を念頭に置いた俸給表の引下げ改定

2 給与構造改革における経過措置額について、平成24年度は2分の1を減額(減額の上限1万円)して支給し、平成25年4月1日に廃止

3 経過措置額の廃止に伴って生ずる制度改正原資を用いて、若年・中堅層を中心に、給与構造改革期間中に抑制されてきた昇給を回復

この勧告を行うに当たって、人事院は、職員団体や各府省の人事当局から、意見聴取を行った。また、東京を含む全国42都市で有識者との懇話会、中小企業経営者等との意見交換を行うなど、広く国民の意見の聴取に努めた。

(2)民間給与との較差に基づく給与改定
ア 民間給与との較差
(ア) 月例給

平成23年の給与勧告を行うに当たり、春季賃金改定後の民間企業の給与実態を把握するため、「職種別民間給与実態調査」を行った。平成23年の調査は、東日本大震災の影響により、例年より2か月近く遅く、6月24日から8月10日までの間、岩手県、宮城県及び福島県に所在する事業所を除いて実施した。

同調査及び「国家公務員給与等実態調査」の結果に基づき、平成23年4月分の公務員の月例給与と民間給与との比較を行ったところ、公務員の月例給与が民間給与を899円(0.23%)上回っていた。

ラスパイレス方式により比較する際、勤務地域については、国家公務員の地域手当の級地(手当の基礎額に対する支給割合が高い順に1級地から6級地まで)及び非支給地の7区分に分けて、それぞれの区分ごとに官民給与を対比させている。平成23年は、前述のとおり、「職種別民間給与実態調査」を岩手県、宮城県及び福島県の東北3県に所在する事業所を除いて実施したため、民間給与については、東北3県のデータが存在しない。

東北3県の地域手当の級地の区分は、仙台市が5級地、名取市及び多賀城市が6級地、その他の地域が非支給地となっているため、本年の5級地、6級地及び非支給地の民間データについては、それぞれ東北3県以外の他の地域の民間データによって構成されている。官民比較の区分に使われている地域手当の級地は、民間賃金水準が同程度の地域をグループ分けしたものであるため、東北3県のデータが得られていない級地区分のデータについても賃金水準が同程度の他の地域のデータによってカバーされていることに加え、1級地から4級地までについては完全な形での全国データとなっていることから、東北3県の調査ができなかったことが全国単位での官民比較の結果に与える影響は限定的である。また、平成20年から平成22年までについて、東北3県の民間データを除くことによる官民比較の結果への影響について算出したところでも、両者の大小関係は一定しておらず、その額も大きくないことから、特定の傾向を示すような数値は得られなかった。

以上の事情を踏まえ、平成23年においても「職種別民間給与実態調査」のデータを用いて官民給与の比較を行ったところ、国家公務員給与が民間給与を上回ることとなったため、これに見合うよう月例給の引下げ改定を行うことが適切であると判断した。

(イ) 特別給

平成22年8月から平成23年7月までの1年間において、民間事業所で支払われた特別給は、年間で所定内給与月額の3.99月(3.987月)分に相当しており、国家公務員の期末手当・勤勉手当の年間の平均支給月数(3.95月)が民間事業所の特別給を0.04月(0.037月)分下回っていた。

現行の特別給の改定においては、民間における支給割合について、0.05月ごとの区切りによって小数点以下第2位までの支給割合を算出し、これに応じて公務の特別給の支給月数を定めるという方式によっている。この方式によれば、民間の特別給の支給割合が3.98月(3.975月)以上であれば、公務の支給月数を現行の3.95月から4.00月に引き上げることとなる。

しかしながら、平成23年は、東日本大震災の影響により、特に被害の大きかった岩手県、宮城県及び福島県の東北3県に所在する事業所の特別給の状況を把握できていないため、この全国平均の支給割合をどのようにみるべきかを検討する必要があった。

特別給の官民比較方法については、事業所ごとの支給実績の全国集計に基づいていることから、東北3県の民間データがないことの影響は直接的に働くこととなる。その影響を平成20年から平成22年までの過去3年間の「職種別民間給与実態調査」の結果を用いて算出すると、東北3県を除く44都道府県の特別給の支給割合は、東北3県の特別給データを含めた全国の支給割合より、平成20年及び平成22年が0.004月、平成21年が0.007月それぞれ高い数値となった。

近年の民間賃金の動向をみると、毎年の企業業績等は特別給に反映する傾向がある。東日本大震災以降、平成23年夏までに東北3県が受けた甚大な経済的な被害や、雇用保険の受給者実人員が昨年の2倍近くに達しているという雇用情勢などをみると、東北3県の経済状況は厳しく、平成23年夏の特別給の支給状況も厳しいと考えられた。

平成23年の東北3県を除いた調査結果によると、前述のとおり、民間事業所の特別給の支給割合は3.987月であるが、上記のように東北3県の民間の特別給データを除くことにより過去3年間では0.004月〜0.007月分の上振れが生じていることに加え、東北3県の平成23年夏の特別給をめぐる状況は厳しいとみられたことから、特別給の改定を見送ることとした。

イ 俸給表の引下げ改定

月例給における官民の給与水準は全体では均衡させているところであるが、年齢別にみると、50歳台では公務が民間を上回っており、特に50歳台後半層では依然として官民の給与差が大きい。これを踏まえ、月例給については、50歳台を中心に、40歳台以上を念頭に置いた俸給表の引下げ改定を行うこととした。

(3)経過措置額の廃止等

平成18年度から実施した給与構造改革において俸給表水準の引下げを行う際、個々の職員の俸給の引下げは、経過措置を設けて段階的に実施することとし、その間の制度改正原資を確保するため、4年間にわたり全職員の昇給を毎年1号俸抑制した。

この経過措置額については、平成23年4月1日現在において、行政職俸給表(一)では、50歳台後半層の職員を中心に在職者の2割弱が受給している。一方、高齢層の公務員給与は民間給与を相当程度上回っており、平成25年度からの定年の段階的な引上げを見据え、この際、早急に高齢層の職員の給与水準の是正を図る必要がある。

そのため、経過措置額について、平成24年度は2分の1(上限10,000円)を減額して支給し、平成25年4月1日に廃止することとした。

経過措置額の廃止に伴って生ずる制度改正原資については、若年・中堅層を中心に、給与構造改革期間中に抑制されてきた昇給の回復に充てることとした。具体的には、平成24年4月1日に、36歳未満の職員は最大2号俸、36歳以上42歳未満の職員は最大1号俸、平成25年4月1日に、人事院規則で定める年齢に満たない職員は最大1号俸上位の号俸に調整することとした。


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