前(節)へ 次(節)へ

第1編 《人事行政》

【第1部】 人事行政この1年の主な動き

第2章 公務員の高齢期の雇用問題等

1 定年を段階的に65歳に引き上げるための国家公務員法等の改正についての意見の申出


(1)意見の申出に至る経緯

平成25年度以降、現在60歳から支給されている公的年金の報酬比例部分の支給開始年齢が65歳へと段階的に引き上げられることに伴い、官民ともに60歳で定年退職しても年金支給開始までの間に無収入となる期間が発生することとなる。既に民間企業に関しては、65歳までの雇用確保措置が高年齢者等の雇用の安定等に関する法律によって義務付けられており、公務についても、65歳までの雇用確保措置が必要となる。この点については、国家公務員制度改革基本法により、雇用と年金の接続の重要性に留意して、定年を段階的に65歳に引き上げることについて検討することとされている。

人事院では、平成19年から「公務員の高齢期の雇用問題に関する研究会」(座長:清家篤慶應義塾長)を開催し、公務員の高齢期の雇用確保の在り方について幅広く検討が進められた結果、段階的に定年年齢を65歳に引き上げるべきことを基本とした研究会最終報告が平成21年7月にまとめられた。その後、平成22年8月の給与勧告時の報告では「定年延長に向けた制度見直しの骨格」、同年12月には「高齢期雇用問題に関する検討状況の整理」を示し、関係各方面から意見を聴取しつつ、定年の段階的引上げを行うために必要な制度見直しの具体案について検討を進めてきた。

(2)意見の申出のポイント

平成23年9月30日、人事院は、国会及び内閣に対して、「定年を段階的に65歳に引き上げるための国家公務員法等の改正についての意見の申出」を行った。そのポイントは、以下のとおりである。

1 国家公務員制度改革基本法の規定を踏まえ、公的年金の支給開始年齢の引上げに合わせて、平成25年度から平成37年度に向けて、定年を段階的に65歳まで引き上げることが適当

2 民間企業の高齢期雇用の実情を考慮し、60歳超の職員の年間給与を60歳前の70%水準に設定

3 能力・実績に基づく人事管理の徹底、当面の役職定年制の導入や短時間勤務制の導入等により組織活力を維持

4 節目節目での意向把握等を通じ、60歳超の多様な働き方を実現

(3)意見の申出の内容

意見の申出の主な内容は、以下のとおりである。

ア 段階的な定年の引上げの必要性

民間企業における60歳定年到達者の再雇用の運用状況をみると、非管理職層を中心に、多くの者が実際に継続雇用され、また、定年前の仕事内容を継続する形が多い。政策の立案や行政事務の執行等の業務が主体である公務における再任用は、これまでの運用をみると、定年前より職責が低い係長・主任級の短時間勤務のポストで、補完的な職務に従事させることが一般的である。今後、再任用希望者の大幅な増加が見込まれ、現在のような定年前より低い職責の補完的な職務に再任用する形では、希望者全員を65歳まで雇用する仕組みとして十分機能することは困難である。

一方、段階的な定年の引上げにより対応する場合、雇用と年金の接続が確実に図られるほか、採用から退職までの人事管理の一体性・連続性が確保され、また、職員の意欲と能力に応じた配置・処遇も可能となる。このため、民間企業の高齢期雇用の実情を考慮し、60歳以降の給与の抑制、組織活力維持のための方策等を講じながら段階的に定年を引き上げることで、来るべき本格的な高齢社会において公務能率を確保しながら職員の能力を十分活用していくことが適当である。

イ 段階的な定年の引上げのための具体的措置
(ア) 段階的な定年の引上げ

平成25年度から3年に1歳ずつ段階的に定年を引き上げ、定年の引上げ期間中は、再任用制度の活用拡大を通じて年金が満額支給される65歳までの雇用確保を図ることとし、平成37年度には65歳定年とする。

(イ) 60歳を超える職員の給与制度の設計

国家公務員給与は社会一般の情勢に適応するように変更することとされ、また、俸給は職務と責任に応じて職務の級が設定され、同一の職務の級の中でも一定の幅をもって水準が設定されている。定年の引上げに当たり、60歳前後で同じ職務を行う場合であっても、同一の職務の級を適用した上で、各職務の級における所定の俸給の幅も考慮しつつ、60歳台前半層の民間企業従業員の年間所得等を踏まえて60歳前より低い水準に設定することは、職務給の考え方とも整合する。

こうした考え方の下、60歳を超える職員の給与は、60歳台前半層の民間企業従業員の年間所得(給与、在職老齢年金、高年齢雇用継続基本給付金)が50歳台後半層の年間給与の約70%であることを踏まえ、60歳前と同じ仕事を行う場合でも、60歳を超える職員の年間給与について、60歳に達した日の属する年度の翌年度から、60歳前の70%に設定する。具体的には、俸給月額の水準を一定程度確保(60歳前の73%)することとし、その分ボーナス(特別給)の年間支給月数を60歳前の職員に比べて引き下げる(年間3.00月分)。また、60歳を超える職員は昇給しないものとし、諸手当は基本的に60歳前と同様の手当を支給する。

こうした措置により、定年の引上げを行っても、総人員及び級別の人員を増加させないことを前提とすれば、総給与費は減少することとなる。

(ウ) 組織活力の維持のための方策

能力・実績に基づく人事管理が徹底されるまでの間の当分の措置として、本府省の局長・部長・課長等の一定の範囲の管理職が現行の定年である60歳に達した場合に他の官職に異動させることとする役職定年制を導入するとともに、短時間勤務を希望する職員を短時間勤務ポストに異動させることを可能とすること等により、若年層の新規採用や職員の昇進可能性をできるだけ確保する。また、短期間で頻繁に異動させる人事運用の見直しや能力・実績に基づく人事管理の徹底を図る必要があるほか、職員の能力を伸ばし多様な経験を付与する機会を拡充するよう努めるとともに、それをいかすことができるよう節目節目で職員の将来のキャリアプランに関する意向を把握するなど、人事当局と職員間のコミュニケーションの充実を図る必要がある。あわせて、各府省の行政運営の実情に応じ、スタッフ職が政策立案に必要な役割を果たし得るような行政事務の執行体制に改めていくことが必要である。

上記の施策については、平成25年度以降の段階的な定年の引上げ期間中の制度の運用状況や民間企業の動向も踏まえつつ、諸制度及び人事管理の運用を随時見直していく必要がある。また、役職定年制については、人事管理の見直しの状況等を踏まえて、必要な検討を行っていく。

ウ 定年の引上げを円滑に行うため公務全体で取り組むべき施策

公務内外で職員の能力・経験を活用する観点から、専門スタッフ職等の整備や人事交流機会の拡充を図るとともに、自発的な早期退職を支援する退職手当上の措置、定年引上げ期間中も安定的な新規採用を可能とするための定員上の経過措置等を講ずることについて、政府全体での検討が必要である。また、加齢に伴う身体機能の低下が職務遂行に支障を来すおそれがある職務に従事する職員の定年の引上げに関し、その職務の特殊性を踏まえた条件整備や所要の措置の検討が必要である。

(4)意見の申出後の対応

意見の申出を受けて、政府として雇用と年金の接続に係る施策の検討が進められ、平成24年3月23日、定年退職日の翌日から公的年金の支給開始年齢に達する年度末までの期間(平成38年4月1日以降は65歳に達する年度末まで)希望者を再任用することを義務化することにより、雇用と年金の接続を図ること等を内容とする基本方針が、行政改革実行本部・国家公務員制度改革推進本部合同会合において決定された。基本方針においては、年金の支給開始年齢の65歳への段階的な引上げ期間中の一定の時期に、再任用の義務化の下での公務の運営状況や、民間企業における高年齢者雇用確保措置の実施状況を勘案し、雇用と年金の接続の在り方について、意見の申出を踏まえて改めて検討を行うこととするとされている。

雇用と年金の接続に関する人事院の考え方は意見の申出のとおりであるが、この基本方針を受けて、人事院としても、政府全体としての具体的な施策の取りまとめに必要な協力を行うこととしている。


前(節)へ 次(節)へ
©National Personnel Authority