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第1編 《人事行政》

【第1部】 人事行政この1年の主な動き

第2章 公務員の高齢期の雇用問題等

2 官民の退職給付


(1)民間企業の退職給付調査の実施

平成23年8月、国家公務員の退職給付制度を所管している総務大臣及び財務大臣から人事院総裁に対し、「高齢期の雇用等が検討課題となる中、公務員の退職後の生活保障的な性格も有している退職給付についても、政府として民間の動向を勘案しつつ、そのあり方について検証を行う必要があります」として、民間企業における企業年金及び退職金の実態調査について、「貴院において改めて調査を実施していただくとともに、貴院の見解を承りたい」との要請があった。これを受けて、本院は、職員の給与等を担当する専門機関として、平成18年に内閣からの要請を受けて調査を実施した経緯があることなどを踏まえ、平成23年10月から11月にかけて、民間の退職給付の制度及び支給額の調査を実施した。

(2)退職給付調査の結果と人事院の見解

平成24年3月7日、人事院は、総務大臣及び財務大臣に対して、退職給付調査の結果と人事院の見解について表明を行った。その主な内容は以下のとおりである。

ア 調査対象及び調査内容

退職給付は勤務条件的な性格を有していることから、調査企業は、人事院が毎年実施している「職種別民間給与実態調査」と同様に、企業規模50人以上の企業を対象とした。具体的には、企業規模50人以上の全国の民間企業約35,700社(母集団企業)から企業規模及び産業分類別に層化無作為抽出法によって抽出した6,314社を対象に調査を実施した。その結果、3,614社から回答を得、調査完了率は57.2%であった。

調査内容は、平成22年度における各民間企業の退職給付制度の状況と平成22年度中に勤続20年以上で退職した常勤従業員(大卒及び高卒)の退職給付の支給額とした。その際、調査対象となる常勤従業員については、政策の立案や行政事務の執行等の事務・技術的な業務が主体となっている公務における代表的な職種であり、一般の行政事務を行っている行政職俸給表(一)適用職員と類似すると認められる民間企業の事務・技術関係職種の従業員とした。

イ 調査結果の概要
(ア) 退職給付制度の概要
① 企業年金制度、退職一時金制度の普及率

退職給付制度を有する企業の割合は93.5%であり、そのうち、企業年金制度を有する企業の割合は59.9%、退職一時金制度を有する企業の割合は86.9%となっており、企業年金制度と退職一時金制度を併用している企業の割合は46.8%であった。

② 企業年金制度の概要

企業年金制度を有する企業で採用されている年金の種類は、確定給付企業年金が46.6%と最も高く、次いで厚生年金基金が28.4%、確定拠出年金が24.7%となっている。適格退職年金が平成23年度末をもって廃止されることから、適格退職年金の採用割合が平成18年調査時の60.6%から今回は15.5%に大幅に低下した。

企業年金の受給資格については、全ての種類の企業年金を集計すると、「勤続年数かつ年齢」(44.6%)、「勤続年数のみ」(27.2%)によるものが多くを占めている。拠出については本人拠出がある場合は19.0%にとどまり、81.0%の企業年金は事業主の全額拠出となっている。また、退職時及びそれ以降に企業年金の全部又は一部を一時金として受給することを退職者本人が選ぶことができる選択一時金制度を有するものが75.5%を占めている。

③ 退職一時金制度の概要

退職一時金制度を有する企業における退職一時金の種類(複数回答)は、「社内準備による退職一時金」を採る企業の割合が81.5%と最も高い。

④ 早期退職優遇制度及び希望退職制度の状況

早期退職優遇制度とは、定年前に退職する従業員に対して退職一時金の上積みを行ったり、定年退職者として取り扱うなど、退職一時金の支給に対して定年前退職者を特別に優遇する制度で、恒常的に実施されているものをいう。退職一時金制度を有する企業のうち、早期退職優遇制度を有する企業の割合は11.6%となっており、企業規模1,000人以上の民間企業では43.9%であった。

また、希望退職制度とは、定年前の従業員に対して退職一時金の割増し等の優遇措置を示した上で、期間を定めて時限的に退職者を募る制度をいう。退職一時金制度を有する企業のうち、平成18年1月以降の5年間に希望退職を募ったことがある企業の割合は9.9%であり、希望退職を募ったことはないが就業規則等に希望退職の取決めがある企業の割合は0.9%であった。

(イ) 退職給付支給額の概要

退職給付制度を有する企業において、平成22年度中に勤続20年以上で退職した事務・技術関係職種の常勤従業員のうち定年退職者は65,053人、会社都合退職者は18,382人であった。これらの者の企業年金現価額と退職一時金(退職祝い金等の退職に伴う補助給付を含む)を合わせた退職給付総額の勤続年数別、退職事由別の平均額をみると、例えば、最も定年退職者が多い層は、勤続41年の層であり、その退職給付総額は24,547千円(うち企業年金現価額15,205千円、退職一時金9,342千円)、最も会社都合退職者が多い層は、勤続36年の層であり、その退職給付総額は28,107千円(うち企業年金現価額13,172千円、退職一時金14,935千円)であった。

ウ 退職給付水準の官民比較結果

公務においては行政職俸給表(一)適用職員、民間企業においては公務の行政職俸給表(一)適用職員と類似すると認められる事務・技術関係職種の常勤従業員について、退職事由別(公務の定年退職と民間の定年退職、公務の勧奨退職と民間の会社都合退職)、勤続年数別に退職給付総額(いずれも使用者拠出分)を対比させ、仮に国家公務員の退職者に民間企業の退職給付額を支給したとすれば、これに要する支給総額が現に国家公務員の退職者に支払われる退職給付総額と比べてどの程度の差があるかを算出するラスパイレス方式による比較を行った。なお、平成18年調査時と比べ、その後の再就職あっせんの禁止により、公務における勧奨退職の割合は57.9%から21.8%に減少している。

その結果は、図1に示すとおり、公務29,503千円(うち共済職域現価額2,433千円、退職手当27,071千円)に対して民間25,477千円(うち企業年金現価額15,063千円、退職一時金10,415千円)となり、公務の退職給付総額が民間を4,026千円(13.65%)上回った。

図1 退職給付の官民格差
エ 国家公務員の退職給付についての見解
(ア) 官民較差の解消の必要性

国家公務員の退職給付の水準は同種の給付を行っている民間企業における退職給付の総額との均衡を図ることが、経済社会情勢に適応した適正な退職給付を確保することにつながるものである。このため、官民の退職給付の比較結果に基づき、国家公務員の退職給付について見直しを行うことが適切である。

退職給付の見直しに当たっては、国家公務員の退職給付が終身年金である共済職域と退職手当から構成され、服務規律の維持等の面から重要な意義を果たしてきた経緯や、企業規模50人以上の民間企業では企業年金を有する企業が過半を占めていることを考慮した対応が必要であると考えられる。なお、これまで国家公務員退職手当法の改正により退職手当の引下げ(昭和56年は△8.3%、平成15年は△5.5%)が行われた際には、所要の経過措置が講じられている。今回の退職給付の見直しは、退職後の職員の生活設計に大きな影響を及ぼすこと、及び過去の引下げ幅と比べても大幅な引下げとなることに鑑み、所要の経過措置を講じることが適切と考えられる。

(イ) 早期退職に対するインセンティブの付与

国家公務員については再就職あっせんが禁止され、今後在職期間の長期化が一層進むとみられる。このため、今回の退職給付の見直しに当たっては、組織活力を維持する観点から、民間企業において大企業を中心に早期退職優遇制度がある程度普及していることも勘案しつつ、退職手当制度において早期退職に対するインセンティブを付与するための措置を併せて講じていく必要がある。


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