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第1編 《人事行政》

【第2部】 公務員給与の決定過程 〜諸外国の実態と我が国の課題〜

はじめに


国家公務員制度改革は、平成20年6月に制定された国家公務員制度改革基本法(以下「基本法」という。)に基づいてその具体化のための検討が進められている。国家公務員制度は、各府省の行政執行を支える基盤となる制度であり、これが適切に運営されるか否かは、国家行政や国民生活に大きな影響を与えるものである。したがって、その基本的な枠組みの改革は、国家行政や国家公務員の特徴を関係者の共通認識としつつ、基本を踏まえた議論を尽くし、国民の十分な理解と納得を得て進めることが求められる。特に、平成23年6月に国会に提出された「国家公務員法等の一部を改正する法律案」や「国家公務員の労働関係に関する法律案」等の国家公務員制度改革関連4法案(注)では、国家公務員に広く協約締結権を付与することとしているが、これは公務員制度の根幹に関わる見直しである。

協約締結権の付与については、基本法第12条において、「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする」とされているが、この制度改革については、必ずしも国民的な議論が行われたとはいえない状況にあり、今後、国会等の場において十分な議論が尽くされることが必要である。

人事院では、平成22年6月に国会及び内閣に対して提出した平成21年度年次報告書において、主要諸外国(アメリカ、イギリス、ドイツ及びフランス)の給与決定過程を中心とした公務員の労使関係に関する制度について報告した。本稿では、この報告を一歩進め、
 ・ 制度のみならず実態として労使の関係はどうか
 ・ 労働組合が実質的に果たしている役割は何か
 ・ 労使交渉が行われている場合、交渉結果は賃金水準にどのような影響を与えているか
等について報告する。

国家公務員は国民に対し法律で義務付けられた行政サービスを提供していること、公務における労使交渉は利益配分とはならないことといった制約がある中で、諸外国においては実に様々な実践的な対処がなされている。こうした事実を踏まえ、我が国の公務における労使関係をめぐる議論に関する課題を明らかにする。

(注)国家公務員制度改革関連4法案は、上記2法案のほか「公務員庁設置法案」及び「国家公務員法等の一部を改正する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」から成る。


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