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第1編 《人事行政》

【第2部】 公務員給与の決定過程 〜諸外国の実態と我が国の課題〜

第1章 諸外国の実態

第1節 アメリカ

1 勤務条件決定過程の概要等

(1)概況

● 団結権は認められているが、連邦法規で定められる給与等は労使交渉の対象から除外されている。

● 争議行為は禁止されている。

アメリカの連邦公務員(2010年現在、軍人を除いて約284万人)には、合衆国憲法が保障する集会の自由の延長として、連邦捜査局など一部の職員を除いて、団結権が認められている。協約締結権を含む団体交渉権については、連邦法規によって定められる事項が、交渉、協約の対象から除外されている。給与を始めとする勤務条件はほとんど連邦法規によって定められているため、これらについての労使交渉は行われない。また、管理・監督職員や機密を扱う職員については、後述の交渉単位に入ることが認められておらず、団体交渉権がない。なお、郵便庁を始めとする一部の機関については、別途法律によって協約締結権を含む団体交渉権が認められている。争議行為は、機関や職位を問わず禁止されている。

なお、州や市、郡における公務員の労働基本権については、一律の法制度は存在しない。ノースカロライナ州やインディアナ州のように州法で団体交渉を完全に禁止している州から、オレゴン州、ペンシルベニア州のように、労使交渉を認めるだけでなく一定の条件の下においてストライキも認める州まで、様々となっている。

(2)給与決定の仕組み及び基本原則

● 給与のうち、基本的な部分は、俸給と地域均衡給から成る。

● 給与改定について労使交渉は行われない。

● 俸給については改定率が法定されている。地域均衡給については大統領給与エージェントが大統領に勧告する。実際にはほとんどの場合、大統領が代替案を提出している。

● 過去数十年間、給与が引き下げられたことはない。

連邦公務員の給与については、成績主義(メリット・システム)の一環として、民間の給与を適切に考慮し、優秀な勤務成績に対して適切なインセンティブを与えつつ、同一価値労働に同一の給与が支払われるべきであるという原則が法定されている。

この原則の下、一般俸給表(メリット・システムによる人事管理が行われる競争職の大半に適用される。)の俸給及び地域均衡給(地域ごとに俸給の一定割合を支給するもの)のそれぞれについて、改定方法が法律で定められている。すなわち、俸給については、雇用経費指数(労働省労働統計局が発表する民間賃金の指標)の増加分から0.5%を差し引いた割合を改定率とする。地域均衡給については、連邦給与評議会(専門家3人及び労働組合代表6人から成る。)の意見及び勧告を受けて、大統領給与エージェント(労働省長官、行政管理予算局長官、人事管理庁長官から成る。)が大統領に勧告する。ただし、俸給についても地域均衡給についても、国家の緊急事態又は深刻な経済情勢のためその率が適当でないと大統領が考える場合は、代替案を提出できることとされており、実際、改定率を縮小する代替案が提出されることが多い。代替案作成作業は、人事管理庁が連邦給与評議会と協議しながら行っている。最終的に議会で歳出予算法案が可決され、大統領の署名によって成立すると、それに基づき給与改定が行われる。一般俸給表以外の俸給表についても、一般俸給表に準じて改定される。

少なくとも過去数十年間、給与の引下げが行われたことはない。

図1 アメリカ連邦公務員の給与決定過程

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