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第1編 《人事行政》

【第2部】 公務員給与の決定過程 〜諸外国の実態と我が国の課題〜

第1章 諸外国の実態

第1節 アメリカ

参考 州政府における労使交渉の実態(ニューヨーク州の例)

参考 州政府における労使交渉の実態(ニューヨーク州の例)

州レベルにおいても、連邦政府と同様、給与等の勤務条件について労使交渉をしていない州がみられるが、逆に、給与等について労使交渉を行っている州の例として、ニューヨーク州が挙げられる。

● 給与、勤務時間など、主な勤務条件は全て交渉対象(年金を除く。)。予算、定員については交渉対象外。

● 全ての交渉単位について、担当の知事部局が労使交渉を行う。

● 使用者側にとって勤務条件の引下げを行うのは難しいが、レイオフの可能性を交渉材料にして給与凍結の合意を引き出したことがある。これまで給与の引下げ改定が行われたことはない。

● 合意に至った後、組合員の投票で承認が得られなければ再度交渉が必要。

(1)交渉事項

給与を始め、勤務時間、休暇、健康保険などの勤務条件は全て交渉対象だが、年金については、専ら議会で決めることとされており、労使交渉はできない。こうした事項については、連邦公務員の場合の給与と同様、労働組合はロビイング活動などを通じて議員への働きかけを行っている。また、予算、定員については交渉対象外となっている。

なお、政策形成に携わる幹部職員や機密を扱う職員については、団体交渉は認められておらず、知事が法案を提出する。

(2)交渉の形態

州内には、警察から大学まで14の交渉単位がある。規模は、400人程度のものから5万人を超えるものまで様々である。それぞれの交渉単位で団体交渉を行い、協約を締結している。使用者側は、労使関係を担当する知事部局が、全ての交渉単位についての交渉を行っている。

各交渉単位における団体交渉は、労使双方から20〜30人が参加して行われる。労働組合からは、労働組合の交渉担当者のほか各部署で勤務している組合員が参加し、使用者側からは、交渉担当官、弁護士、健康保険の調査研究担当者、各部局の職員が参加する。労働組合側の要求事項が膨大な数に上り、それに対応する必要があることが、参加人数の多さの背景にあるという。ただし、使用者側には最近効率性を重視して参加人数を絞る動きもある。

(3)交渉の流れ

労働協約の有効期間は複数年度にわたっており、例えば給与の場合、2007年度から2010年度までについて、2007〜2009年度は毎年3%、2010年度は4%というように、年度ごとの給与改定率が決められている。州法により労使交渉が行われ始めた頃は、協約を更新するタイミングが全ての交渉単位についてそろっていたが、今では交渉単位によって更新のタイミングが異なるため、使用者側の業務を行う知事部局には負担のかかる事態になっている。

団体交渉に要する期間は、その時々で異なるが、4か月程度の場合もあれば、1〜2年程度かかる場合もある。交渉の進展などについては基本的に労使間のこととされ、公にされることはない。交渉している事項について労働組合が議員などに訴えることはあまりない。一般に、労使交渉では現行の水準が言わば下限となり、勤務条件の変更が難しいということで、使用者側の交渉担当者が苦労する面もあるようである。交渉が不調の場合、調停、実情調査といった手続が設けられており、それでも不調の場合には、最終的に議会の決定などに委ねられるが、実際にこれらの手続が用いられることはあまりない。

給与については、近隣の州政府やニューヨーク市政府、連邦政府の給与水準、生計費、州政府の財政状況などが考慮要素となる。2011年の労使交渉では、州政府側が、給与抑制を行わなければ数千人をレイオフすることになると労働組合に迫った。交渉の結果、州政府は給与改定について、協約期間の最初の2年間について改定率ゼロ、3年目に一時金支給、4年目と5年目に2%の改定という譲歩を労働組合から引き出した。なお、給与改定率がマイナスになったことはこれまでないという。

労使間で合意に至れば、覚書を締結し、労働組合において組合員の承認投票を行う。ここで組合員の承認を得られなければ、交渉はやり直しであり、実際にやり直すことになる場合もある。承認が得られれば、正式の協約となり、給与改定のように法律の制定又は改正が必要な事項については知事が議会に法案を提出する。最終的に議会に権限があっても、労使間で合意すれば給与改定はそれで決まったものという認識が広く共有されており、議会は労使合意を尊重して法案を可決するという。

団体交渉が終わっても、締結した労働協約を運用していく業務があり、労使関係業務は継続的に行われている。州政府としては、労使交渉の専門性が高いこと、交渉において不利にならないためには過去の経緯に精通していることが重要であることを踏まえ、職員を計画的に育成しようとしており、担当部局の職員は一般に経験豊富である。引退するまでに30年程度の経験を積んでいることも少なくない。労使交渉の担当者は、スムーズに交渉を進めるために、日常的に、労働組合との関係構築や情報収集に気を配っている。

図2 ニューヨーク州(アメリカ)の給与決定過程

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