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第1編 《人事行政》

【第2部】 公務員給与の決定過程 〜諸外国の実態と我が国の課題〜

第1章 諸外国の実態

第4節 フランス

1 勤務条件決定過程の概要等

(1)概況

● 団結権及び争議権が認められている。実際の争議は、抵抗権や表現の自由に関わる権利として、労使交渉と無関係に行われることも多い。

● 給与改定など一定の事項に係る労使交渉は認められているが、当局側に応諾義務はなく、協約締結権は認められていない。

● 労使交渉とは別に、個別の昇進や手当配分等に関する管理当局との協議に職員が参加する仕組みとして、職場協議会制度が設けられている。

フランスの国家公務員(2009年末現在、約239万人)の給与など勤務条件については、労使間の交渉によって定められる民間とは異なり、法律(官公吏一般規程)によって給与を受ける権利が保障され、その内容は使用者たる国が一方的に定めるという原則に立つ。

給与改定など一定の事項については労使交渉ができることが法律上規定されているが、国には交渉の求めに対する応諾義務はない。交渉の結果に拘束されるものでもなく、協約締結権は認められていない。他方、いわゆる労使交渉(négociations)とは別に、職員がその代表を通じて、勤務条件と組織に関する管理当局との協議に参加する(débattre)仕組みとして、職場協議会制度が存在する。職場協議会は、組織再編や運営、個別的な職員の昇進等にも関与しており、実際の運用をみると、この職場協議会制度を通じた発言権が労働組合の大きな機能となっている。

なお、争議権は公務員にも保障されているが、労使交渉とは無関係に、抵抗権や表現の自由に関わる権利として、意見表明・示威行為の意味合いで行われることも多い(下記コラム参照)。

フランスにおけるストライキの特色

フランスでは、警察・監獄職員等を除き、公務員についても争議権が保障されている。

欧州他国では、争議権が労使交渉不調の結果として行使されるのに対し、フランスでは、労使交渉事項かどうかにかかわりなく、個人の意見表明や示威行為として、まず争議を実施するケースが多いという実態がみられる(ただし、近年の法律改正により、公共交通機関や小学校教員等については、労使交渉の後でなければストの通告ができないとの例外措置が講じられた。)。

スト参加には組合員であることは要しないため、幹部や在外公館の大使なども含め、広範にわたる公務員がストに参加する例がみられる。ただし、政府は、当該争議行為が公益に重大な損害を与えると認めるときは争議禁止を命じ得る。

近年の公務員のストライキの状況をみると、労使交渉プロセスとは関係なく行われたものが大半を占めている。2010年には、年金改革法案(11月に法案可決)に反対するストライキが大規模かつ長期にわたり行われたことから、ストライキによる労働損失総日数は2009年の約2倍となっている。2011年については、緊縮政策に反対するストライキなどが散発的に行われたものの、労働損失総日数は2010年よりも相当少なくなっている模様であり、それ以外の年をみても、政策上の重要課題の存否が公務員ストの頻度に大きな影響を与えている実態がうかがえる。

(2)給与決定の仕組み及び基本原則

● 公務員給与は政令等により定められている。議会の関与はない。

● 予算面では、人件費は予算に計上され、給与に係る労使交渉には予算局の幹部が同席し、予算の枠内で労使交渉が行われている。

ア 給与制度

公務員の給与は、俸給、各省共通の手当のほか、更にコール(職員群)(注)、部局、ポストによって分配される各省・各コール固有の手当(プリム)から成る。

公務員の俸給は、労使間の契約に基づき労働の対価として支払われるものではなく、各人の職務に合わせた社会的地位に対して支給されるとの考え方が採られており、最低賃金に係る基準を除き、民間との均衡は特段考慮されないのが建前である。

俸給は、各コールのグレードごとに定められた号俸に基づいて決定される。号俸ごとに対応する指数が定められるとともに、指数100当たりの給与額(単価)が定められており、そのいずれに係る改定かによって、交渉の方法や当事者は異なる。

プリムが月例給に占める割合は一般職員で30%程度、幹部職員では50%程度であるが、その総額は省令で定められており、労使交渉の対象ではないとされている。プリムの種類・額については、公務担当大臣及び予算担当大臣の同意が必要である。

(注)コール(corps:職員群)とは、学歴、資格や職種に基づく官吏の分類単位。フランスの公務員はいずれかのコールに所属することとされ、各コールごとに個別身分規程(政令)が定められている。

表5 フランスにおけるグレード、号俸、指数及び俸給額の関係
イ 給与改定への議会の関与

俸給に係る号俸や指数は政令で規定され、国会の議決は要しない。

ウ 給与の予算面における取扱い

公務員の給与は人件費として予算に計上されており、毎年、内閣から提出された予算案を受けて、国会において議決される。


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