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第1編 《人事行政》

【第2部】 公務員給与の決定過程 〜諸外国の実態と我が国の課題〜

第1章 諸外国の実態

第4節 フランス

4 職場協議会制度

● 職場協議会制度を通じ、労働組合は、昇進や手当配分にまで関与する。

● 実際の運用において、「労使交渉」と「労使協議」の線引きは曖昧である。

フランスにおいては、労使交渉とは別に、職員が代表者を通じて一定の案件の「協議(意見表明)に参加する」権利が認められている(官公吏一般規程第Ⅰ部第9条)。

職場協議会として、従来から①最高官吏制度協議会、②人事管理協議会、③行政管理協議会、④衛生安全条件協議会の4つが存在したが、このほかに、2010年の7月の法改正により、⑤公務員制度共通協議会が新設された。

職場協議会は、公共機関の組織編成及び運営、身分上の規則の立案、キャリアに関する個別的決定の審査に参加する仕組みとされているが、何を職場協議会で、何を労使交渉事項として取り上げるかは当局の裁量が大きいこと、また、労使交渉が協約締結を伴わないことから、実際の運用において、「労使交渉」と「労使協議」の間の線引きは曖昧である。加えて、前述のとおり、2010年の法改正後は、職場協議会(特に行政管理協議会)における代表選挙の結果が、労使交渉本体への参加や合意の効力にも大きな影響を及ぼすようになってきている。具体的には職場協議会の代表を決める選挙においては、総職員からの得票数によって各労働組合に議席が比例配分されるところ、今回の改正によって、職場協議会における議席獲得が労使交渉への参加資格ともなる仕組みとなり、職場協議会と交渉との結び付きが一層強化されたところである。

なお、従来、各協議会の開催に当たって、官側委員及び職員側委員が同数で構成されることが要件とされていたが、上記法改正でシステムの簡素化が図られ、人事管理協議会を除き、官側が同数の出席をする必要はなくなった。ただし、少なくとも、労働組合と直接交渉する政府担当者は決定権を持つ者でなければならない。

職場協議会のうち、人事管理協議会は、コールごとに設置され、昇進、異動等について意見を述べることができ、当局が職場協議会の意見に反する決定を行うときはその理由を通知することとされるなど、職員一人一人のキャリアに大きな役割を果たしている。

また、各省大臣の下に設置される行政管理協議会は、各部局の組織運営や能率手当の配分基準等を諮問事項としてきたが、上記2010年法改正によって、当該部局の定員や職、権限に関わる問題等も加えられた。人事管理協議会とは異なり、各コールにおける個別人事ではなく、組織全体の人事施策等を検討する場となっている。

政府は、職場協議会の諮問結果には拘束されないが、事実上、職員の昇進等について、職場協議会の意向を無視することは難しいとされる。

フランスの労働組合の主たる役割

フランスの公務員の労働組合加入率(約15%)は、民間よりは高いが、欧州他国に比べて低い。労働組合加入のメリットについて職員側から話を聞くと、給与改定等における労使交渉の影響が限られていることもあって、むしろ職場協議会が当局に対して有する発言力に着目し、業務上の問題発生時の保護や個別人事に対する支援に期待していることが多い模様である。

フランスの公務員のストライキ等に対する国民の意識

フランスにおける公務員の抗議・争議行為等に関するコンサルタント・調査分析会社CSAの調査(対象期間:1995年10月〜2005年1月)をみると、公務員のこうした行為全般に対する国民の支持率は、「支持」「共感」計で68%と、比較的高い。この数字は、民間企業を含む全ての抗議・争議行為に対する支持の平均値と同率であり、公務員の争議行為に対し、民間と比べて特に否定的な態度はみられない。また、この期間の個別の公務員の抗議・争議運動についてみても、全て過半数の支持が得られており、2001年の警察職員ストは、90%の支持を得ている。

こうした国民の対応は、対象職種やストライキの目的によって影響され、厳しい勤務環境の下で職務に精励している警官や医療職員のストライキには特に共感が集まりやすいとされる。

(出典:CSAによる世論調査「社会的運動に対するフランス国民の見方−1995年10月以降のCSA世論調査による社会的運動のバロメーター−」(2004年12月)(CSA Opinion-Institutionnel, “Attitudes des Français à l’égard des mouvements sociaux -le baromètre des conflits sociaux de CSA Opinion Institutionnel depuis octobre 1995-”, déc. 2004))

他方、2011年12月に行われた世論調査研究所IFOPの世論調査では、将来的に、ドイツ官吏のように公務員の争議を禁止する仕組みをフランスにも導入することへの可否につき、回答者の半数が「争議権禁止の導入を望む」と答えており、ストライキが多発する現行制度を必ずしも最善と考えているわけではないこともうかがえる。とりわけ民間部門の労働者は、公務・公共性の高い部門において争議を禁止するとの提案を歓迎する傾向にある。

公務員・公共部門の争議権等に係る世論調査(2011年)

問1 一般的に、公共部門のストライキ日数の方が民間部門より多いのは、公務員の身分保障によるものだと思うか。

そう思う 81% (民間部門労働者:86%、公共部門労働者:68%)

問2 官吏身分を持つドイツの公務員は争議権を持たないが、フランスで同様の措置の導入を望むか。

望む 50% (民間部門労働者:52%、公共部門労働者:26%)

問3 以下の各部門・事業体のストライキ禁止措置の導入を望むか。

・パリ地下鉄等(RATP)望む 61%(民間部門労働者:64%、公共部門労働者:44%)
・国鉄(SNCF)        望む 60%(民間部門労働者:63%、公共部門労働者:40%)
・警察                望む 58%(民間部門労働者:55%、公共部門労働者:45%)
・電力(EDF)         望む 57%(民間部門労働者:57%、公共部門労働者:40%)
・国の教育            望む 55%(民間部門労働者:57%、公共部門労働者:37%)
・財務省              望む 55%(民間部門労働者:57%、公共部門労働者:39%)

(注)本調査では、集計上明示された「民間部門労働者」、「公共部門労働者」のほかに「独立事業者(従業員なし)・雇用主」の回答グループもあり、総計はこれを含んだ数字である。

(出典:税制・財政研究所委託によるIFOP「争議権に関する調査」(2011年12月)(IFOP pour l’Observatoire de la Fiscalité et des Finances Publiques, “Enquête sur le droit de grève”, Décembre 2011))


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