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第1編 《人事行政》

【第2部】 公務員給与の決定過程 〜諸外国の実態と我が国の課題〜

第2章 我が国の課題

第3節 我が国の課題

1 市場メカニズムが機能しないなどの公務の性格

民間企業の賃金決定は、利潤の分配や市場の抑制力といった枠組みの中で行われている。また、民間企業における利潤は、その提供する製品やサービスに関する市場における評価の結果である。これに対して、国家公務員の勤務条件決定においては、内閣及び国家公務員は国民に対し法律で義務付けられた行政サービスを提供しており、基本的に公務から撤退することは認められていないことから、倒産のおそれといった市場の抑制力という内在的制約が存しない。こうした条件の下で行われる公務における労使交渉は、民間企業におけるそれと大きく異ならざるを得ない側面を持つ。

ILO条約(注)においても、「直接国の行政に従事する公務員」には協約締結権の制約を認めている(参考1参照)。これは、公権力の行使や国家意思の形成に関わる職員は、使用者と一体となって権力を行使するものであり、民間企業のような使用者対従業員という概念におさまらないところがあるためと考えられる。

「先進国の中で公務員の労働基本権を制約しているのは日本だけである。」と言われることがあるが、前述のとおりILO条約は「直接国の行政に従事する公務員」には協約締結権の制約を認めている。「遅滞なく行政サービスを提供する使命の遂行」と「労働者としての公務員の権利の保障」といった二つの要請について、例えば、フランスでは交渉は認めつつも協約締結権を否定し最終的には使用者が決定することとしたり、ドイツでは官吏には協約締結権を付与しないことなどによって調和が図られている。

また、アメリカでは制度上給与を交渉対象外として国が決定し、イギリスの一般職員においては、給与水準について政府が責任を持って決めるため交渉が行われず、その配分についても交渉で合意しない場合には使用者が自らの案で決定し実施するなど、市場メカニズムが機能しないこと等への対処がなされている。

(注)ILOは、国際労働機関(International Labour Organization)の略称。


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