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第1編 《人事行政》

【第2部】 公務員給与の決定過程 〜諸外国の実態と我が国の課題〜

第2章 我が国の課題

第3節 我が国の課題

2 勤務条件法定主義と使用者側の当事者能力

日本国憲法第73条第4号は、内閣は「法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理する」(勤務条件法定主義)と定めており、これにより、給与等の国家公務員の勤務条件は法律によって定められている。改革法案では、労使交渉を行い労働協約を締結できたとしてもそれで完結せず、その後に国会の議決が必要となる。あわせて、憲法第83条では「国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければならない」という財政民主主義の原則が定められている。このことから、国家公務員の勤務条件についての決定は、法律と予算という国会の民主的コントロールの下で行われるため、新たな労使交渉の仕組みが出来上がった後も内閣に勤務条件について最終的な決定権はなく、内閣は責任ある交渉当事者たり得ない。

4か国においても、いずれも人件費を含む予算について議会の承認を必要とし、財政民主主義の原則は例外なく採られている。その上で、アメリカ及びドイツの官吏については、俸給表等の法律で定める事項は使用者が最終決定権を持たず、労働側も協約締結権及び争議権が否定されている。他方、給与について労働協約や議定書の締結が認められているイギリスの一般職員、ドイツの公務被用者及びフランスについては、労働側に争議権を認める一方、政府に当事者能力を与えるため俸給表等は法定事項とせず勤務条件法定主義を採っていない。

我が国の改革法案では、勤務条件法定主義の下で、俸給表を法定事項とした上で争議権のない労使交渉をすることとし、労使が合意できないときは関係当事者の一方の申請で仲裁手続に移行することとしている。このような勤務条件法定主義と労使交渉を併存させている例は、4か国ではみられない。


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