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第1編 《人事行政》

【第2部】 公務員給与の決定過程 〜諸外国の実態と我が国の課題〜

第2章 我が国の課題

おわりに


これまで述べてきたように、主要4か国では、それぞれ給与決定に当たり公務の特性に応じた対処をしているのに対し、我が国における公務員制度改革なかんずく改革法案に盛り込まれている労使交渉による給与決定の議論では、公務の特性に対する議論がいまだ十分に行われているとは言い難い。

4か国では、国家公務員の給与決定過程について、国家公務員全体で一律に扱う国(アメリカ及びフランス)と国家公務員を二つに区分して扱う国(イギリス及びドイツ)があり、後者は、イギリスでは上級公務員・一般職員、ドイツでは官吏・公務被用者という区分となっている。

このうち、アメリカ、イギリスの上級公務員及びドイツの官吏については、労使交渉によらず国が給与を決定することとしている。中でもアメリカ及びドイツの官吏の給与決定に関する事項は法定されており、これらの公務員には、協約締結権及び争議権は認められていない。他方、イギリスの一般職員、ドイツの公務被用者及びフランスについては、給与決定に当たり労使交渉を行っており、労働側には争議権を認める一方で、議会の関与をなくし政府側に最終決定権を与えている。その中で、イギリスの一般職員及びフランスについては、労使が合意できないときは政府側が自らの案で決定し実施することができるとされているため、労使交渉によってのみ給与が決定されるシステムが採られているのはドイツの公務被用者だけである。

これに対し、改革法案では協約締結権を認めつつ争議権を否定した中で労使交渉を行うこととし、労使が合意できないときには関係当事者の一方の申請により仲裁手続に移行することとしている。この構造は、仲裁手続への移行が常態化していたかつての三公社五現業と基本的に同じである。公務においては市場メカニズムが機能しないこと、改革法案では俸給表等の法定事項について政府に最終決定権がないことから、労使の合意を促す力は弱く、改革法案による手続では仲裁手続への移行が常態化する懸念がある。そのため、自主決着を図るためにはどのようにすればよいか、使用者側の当事者能力をいかに確保できるかなどについて十分な議論が必要である。

公務員制度の根幹に関わる労働基本権の見直しが、国民から深い関心が寄せられることなく進行している現状を踏まえ、本稿において、諸外国の労使交渉の仕組みと実態を示し、我が国において適切な改革が行われるよう今後の議論に必要な課題を示してきた。こうした知見が、今後の法案をめぐる議論に活かされることを強く希望するものである。


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