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第1編 《人事行政》

【第3部】 平成23年度業務状況

第7章 公平審査

◎第7章補足資料

資料 7−1  不利益処分審査請求事案関係

資料 7−1  不利益処分審査請求事案関係
2 平成23年度判定の要旨例
(1)懲戒免職処分(処分を承認したもの)
(事案の概要)

請求者は、帰省した際、友人宅に泊めてもらう予定で友人と一緒に酒を飲む約束をし、実際に飲酒後友人宅に戻ったが、更に飲酒し、就寝した後、幻覚に襲われて友人宅を飛び出し、酒気を帯び、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態で、自家用車を運転し、酒酔い運転の現行犯で逮捕されたため、懲戒免職処分を受けた。

(不服の要旨)
・ 人事院の懲戒処分の指針によれば、酒酔い運転は「免職又は停職」とされているところ、本件は、人身事故等を伴っていないことなどから、免職が適用されるべきではない。また、請求者はこれまで懲戒処分を受けたことがなく、20年余の間国民のために仕事をしてきた業績があり、本件懲戒免職の処分は重きに過ぎる。
・ A庁当局は、A庁の処分方針の「処分の目安」を職員に示しておらず、また、請求者に弁明の機会も与えていない。
(判定の要旨)
・ 人事院の懲戒指針を踏まえ、A庁の処分方針にあっては、酒酔い運転についての「処分の目安」は「免職」とされ、特に情状酌量すべき場合等は、目安より1ランク軽い処分等とすることができることとされていることが認められる。本件は幻覚症状の発現をきっかけとし、また、人身事故や物損事故が起きていないものであるとしても、請求者は、①肝臓疾患により主治医から酒は多く飲まないよう指導され、また、本件以前にも多量に飲酒した際、幻覚症状を体験していたにもかかわらず、長時間にわたり多量の飲酒を行っていること、②アルコール検査において呼気1リットルにつき0.9mgのアルコールが検知されたということは、道路交通法において罰則の適用を受ける基準の数倍にも及ぶものであり、歩行もままならないほど酒に酔った状態で、100mも走行しないうちに歩車道境界ブロックに乗り上げていることが認められること、③そのように酒に酔った状態であることからすると、たまたま歩車道境界ブロックに乗り上げて停車したものの、重大な事故に至ってもおかしくない極めて危険な状況にあったことが認められることからすれば、懲戒免職処分が重きに過ぎるとは言えない。さらに、請求者は懲戒処分歴がなく、20年余の間勤続してきたことは認められるが、それらを情状として考慮しても、本件処分を軽減しなければならないものとは認められない。
・ 酒酔い運転について、A庁当局は、「従来に増して厳正な処分を行う」ことを文書等により周知していたことが認められ、内規を周知しない一事をもって処分を違法、不当とすることはできない。また、請求者は、所長等から事情聴取を受けるとともに、同所長にてん末書を提出したことが認められ、その際に弁明を行うことができなかったという特段の事実も認められない。
(平成24年3月16日 指令13−7)
(2)懲戒免職処分(処分を承認したもの)
(事案の概要)

請求者は、A病院に在任中1年余の間に計17回、総額192万2,100円を宿舎の会計担当として自ら管理していた宿舎自治会費の預金口座から引き出し、異動直前に60万円を返済したものの、残額132万2,100円を横領し、生活費等に充てた。処分者は、1回目の事情聴取では事実を認めず、虚偽の説明を行い、罪を免れようとしたこと、当時の関係書類一切を廃棄処分としたことなど、その行為の悪質性を考慮して、懲戒免職の処分を行った。

(不服の要旨)

本件は、次のとおり悪質さの程度が強いとは認められないことから、本件処分は重きに過ぎ、修正されるべきである。

・ 宿舎自治会費は公金ではないこと、会計担当はボランティアで行うものであること、請求者が管理していた預金の引出しは単純な行為であり、偽造文書等の作成によって行ったものではないこと及び本件の金額は多額ではなく、被害は現存していないこと。
・ 当初から返済意思があり、無断で借用した金額の一部は自発的に返済し、その後全額返済しており、横領の意思はなかったこと。
・ 預金通帳や電気料金等の領収書等を会計担当の後任者に渡さなかったが、虚偽文書を作成するような積極的な証拠隠滅・改ざん行為はなかったこと。
・ 請求者には、生活に困窮していた事情があり、子の学費や家族の生活費に充てるために行われたものであること、請求者は、無断借用を認め、自ら報告書を提出して深く反省していること。
(判定の要旨)
・ 請求者は、自筆の報告書で自ら「相互けん制がなかった」と記載し、偽造文書を作成するまでもなく自己管理の共用口座から現金を自由に引き出せた状態にあったことを認めており、そのような状況において、私的流用を目的として、1年余の間に17回にわたり繰り返し共用口座から現金を横領したものと認められ、宿舎自治会費は公金でないこと等の請求者が主張する事実を考慮しても請求者の行為の悪質さの程度を軽減させるものではない。
・ 請求者は、本件発覚前に60万円を返済したことは認められるが、当該返済については、請求者自筆の報告書において、異動の内示があり、慌てて金策したが60万円しか都合がつかなかったことが記載されていること、残額の返済についても、請求者のB病院への異動後4年余経過した本件発覚後において、一括返済を求める当局の指示を受けて行われたものであることから、横領の意思はないとの請求者の主張を認めることはできない。
・ 請求者は、自らの横領の事実が発覚するのを恐れ、虚偽の宿舎自治会会則を作成して新口座を開設し、旧口座の預金通帳や領収書等を廃棄したことが認められることから、積極的な証拠隠滅等はないとの請求者の主張は認められない。
・ これらの請求者の行為の態様を考慮すれば、請求者の主張する事情を情状として酌量することはできない。
(平成24年3月23日 指令13−8)
(3)懲戒減給処分(A請求者に対する処分を承認し、B請求者に対する処分を取り消したもの)
(事案の概要)

C職員労働組合D支部書記長であったA請求者は、平成12年11月から17年1月までの間、E庁長官の許可を得ることなく職員団体の業務に専ら従事し、給与の支給を受け続けたこと、D支部支部長であったB請求者は、A請求者に対し支部役員になることを依頼し、A請求者の無許可専従行為をじゃっ起させ、E庁に対する信用を著しく失墜させたことから、処分者は、それぞれ懲戒減給(2月間俸給の月額の10分の2)の処分を行った。

(不服の要旨)
1 A請求者
・ 非違行為とされる行為の具体的内容が明らかにされておらず、ずさんな調査による懲戒処分である。
・ D支部がD局当局と交渉を行ってきた課題は全て勤務条件に関わる課題であって、適法な交渉として勤務時間中に行うことができるとされ、その課題の整理に費やした時間についても、適法な交渉に含まれるものである。
2 B請求者
・ 書記長に就任した後のA請求者を激励したことはあるが、A請求者に書記長就任を依頼したことはない。
(判定の要旨)
1 A請求者
・ A請求者の行為について、D局当局は、管理者、行為者及び第三者に対する調査、超過勤務命令簿の調査等を行ったことが認められ、処分事実を確定するために必要な調査は行われたと見るのが相当である。
・ D局とD支部との交渉は、原則として年に1回行われ、予備交渉は、年に2、3回行われ、また、F事務所当局とF分会との交渉は、年に2回から4回程度行われたにすぎないことから、A請求者が勤務時間中に職員団体の業務に従事した行為のうち、上記の交渉及びそのための予備交渉の時間を除くその余の時間に行われたものについては、これを適法なものとすることはできない。
2 B請求者
・ E庁当局は、同庁における無許可専従行為者以外の職員団体幹部に対する処分については、支部役員への立候補を促すなどの具体的な行為により無許可専従行為をじゃっ起させた場合のみを処分の対象としたものと認められる。
・ B請求者の行為について見ると、B請求者は、書記長への就任時に時間内組合活動をしてもらうことを前提で依頼したかという問いに対し、「『書記長は大変だけど頑張ってほしい。』といった内容で依頼したと思う。」と回答していることが認められるが、処分者はB請求者がA請求者に依頼した時期を特定できないとしており、また、B請求者は書記長就任後にA請求者を激励したものであって、書記長就任を依頼したことはないとしており、他に証拠はなく、B請求者がA請求者に対して支部役員になることを依頼し、その依頼によりA請求者の無許可専従行為をじゃっ起させたとの処分者の主張を認めるに足りる十分な証拠はない。
・ B請求者のその余の主張については判断するまでもなく、本件処分は取り消すことが相当と認められる。
(平成23年9月1日 指令13−18)
(4)懲戒戒告処分(処分を承認したもの)
(事案の概要)

請求者は、休日に女性Aがたばこを投げ捨てたことを注意して口論となり、Aの知人女性Bが止めに入ったところ、Bの顔面を左手拳で殴り、加療2週間を要する顔面打撲の傷害を負わせたため、懲戒戒告処分を受けた。

(不服の要旨)

請求者がAのたばこの投げ捨てを注意したところ、Aともみ合いになり、もみ合っている最中にBから顔面を殴られ、さらにBが殴打しようとしたため、それを防ぐために払った手が、弾みでBの顔面に当たったものであり、これは正当防衛である。

(判定の要旨)

請求者は、休日にAによるたばこの投げ捨てを見付け、それを注意したものであるが、口頭による注意にとどまらず、火のついたまま投げ捨てられたたばこをAに渡そうとしたことが原因となってA及びBとのもみ合いなどに発展したものであり、その最中に請求者がBに加療2週間を要する顔面打撲の傷害を負わせたものである。Bのけがの程度からすると、請求者の手拳はかなりの勢いで振られたものと認められ、Bの拳を防ごうとしたものであったとしても、請求者に自らの手拳をBに当てるとの認識があったものと認められる。また、Bは請求者に拳を出してきたが、それは、請求者に身の危険を感じさせるようなものではなかったものと認められる。したがって、請求者の行為は、急迫不正の侵害に対してやむを得ずにしたものとは認められないため、正当防衛と見ることはできない。

(平成23年12月14日 指令13−28)
(5)休職処分(処分を承認したもの)
(事案の概要)

A事務所B課C係に勤務していた請求者は、平成23年2月24日から適応障害のため病気休暇を継続して取得していたところ、同年5月24日をもって病気休暇の期間が90日となることから、同月25日付けで、期間を同日から平成23年8月22日までとする休職処分を受けた。

(不服の要旨)
・ 主治医の診断書に職場復帰可能とあり、勤務できる状態であったにもかかわらず、当局は、健康管理医に、予断と偏見を与える情報を提供して請求者との面談を行わせ、その結果、職場復帰を時期尚早と判断させた上で、それに基づき本件処分を行った。
・ 仮に職場復帰は時期尚早であり、療養を要するとの健康管理医の判断が正しいとしても、上司が、請求者に対する不適切な指導及び対応により、請求者を精神的に追い詰めて心身を故障させ、その上で本件処分を行った。
(判定の要旨)
・ 健康管理医、請求者及びB課課長による三者面談に先立ち、B課課長から健康管理医に対し、請求者に関する情報提供が行われたことは認められるが、その内容は、請求者の業務内容、病気の経過、職場での病気と関連した行動、それに対する管理監督者の対応などであり、これらは三者面談に当たって健康管理医が面談対象者の状況を事前に把握しておくために必要な情報であると認められることから、当局が健康管理医に予断と偏見を与える情報を提供して請求者との面談を行わせたものとは認められない。

請求者は、三者面談では、職場に関する被害妄想的、拒否的な反応を示し、常識的な対応ができておらず、健康管理医は請求者の職場復帰は時期尚早であり、引き続き療養を要すると判断したものであること、また、主治医も請求者の自宅での生活状況等から一旦は職場復帰が可能と判断したものの、その後の三者面談や診察で明らかになった請求者の言動から職場復帰は無理であり、療養を要すると判断し直していることが認められることから、職場復帰可能で勤務できる状態であったとの請求者の主張は認められない。

・ 請求者の暴言、居眠り、物を投げるなどの言動に対して、上司からの注意指導、受診勧奨などを適宜行ったものであり、このような上司の指導及び対応は不適切なものとは認められず、他に上司が請求者を追い詰めて心身を故障させたと認めるに足りる証拠もない。
(平成24年2月10日 指令13−2)

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