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第1編 《人事行政》

【第3部】 平成23年度業務状況

第7章 公平審査

◎第7章補足資料

資料 7−3  災害補償等審査申立事案関係

資料 7−3  災害補償等審査申立事案関係
2 平成23年度判定の要旨例
(1)左手デュケルバン腱鞘炎に係る通勤による災害の認定(申立てを容認したもの)
(事案の概要)

申立人は、通勤のためバイクで走行中、トラックに追突して転倒し、左上腕骨骨折、左橈骨神経麻痺、右膝前・後十字靱帯断裂、左下腿デグロービング、右膝内側側副靱帯断裂、右膝脱臼と診断されて、治療を受けた。この災害は、通勤による災害と認定され、治癒(症状固定)した後、左手首が痛くなり、左手デュケルバン腱鞘炎と診断されたが、通勤による災害ではないと認定された。

(申立ての要旨)

左手デュケルバン腱鞘炎は、通勤途上での交通事故に関連したもので、主治医からも、受けた手術によると言われていることから、通勤災害と認められるべきである。

(判定の要旨)
・ 申立人は、本件交通事故による左橈骨神経麻痺の治療のため再建手術を受けており、この再建手術と左手デュケルバン腱鞘炎の発症との関係について、主治医は、再建手術で長掌筋を短母指伸筋に移行しており、長掌筋と短母指伸筋の縫合場所からデュケルバン腱鞘炎を発症することがあるとしている。これは医学経験則上も認められ、再建手術によって左手デュケルバン腱鞘炎を発症したと見るのが相当である。
・ 申立人の申立てに係る災害は、通勤による災害と認定された傷病と相当因果関係をもって発生したものと認められるので、通勤による災害の再発と認定すべきである。
(平成23年7月11日 指令13−13)
(2)右膝後十字靱帯剥離骨折に係る休業補償の支給(申立ての一部を容認したもの)
(事案の概要)

申立人は、平成19年2月23日、業務中にバイクで走行中、転倒し、右膝後十字靱帯剥離骨折と診断され、公務上の災害と認定されて、次の休業補償及び休業援護金の支給が決定された。

・ 同年2月24日から病院を退院する同年4月4日までの間は、1日の全部について勤務することができない場合の休業補償(本項において「全部休業の休業補償」という。)等を支給
・ 退院後から治癒日である同年7月4日までの間(通院日19日間)は、通院することにより1日の一部について勤務することができない時間がある場合の休業補償等を支給
(申立ての要旨)

退院後から治癒日までの期間も全部休業の休業補償が支給されるべきである。

(判定の要旨)
・ 申立人は、退院後も膝の痛み、不安定感及び可動域制限があったため、サポーターの着用を指示されている。医学経験則上、後十字靱帯剥離骨折によって膝の痛み、不安定感及び可動域制限があり、サポーターを着用していれば、相当の支障はあったものと推認され、また、剥離骨折部分で骨融合が確認できる頃から徐々に負荷を掛けて歩くことを勧めるものであるが、退院直前のX線写真では、剥離骨折部分で骨融合は認められない。
・ 医学経験則上、退院後も膝を固定して安静にしておく必要があったと見るべきであり、平成19年4月27日に主治医がサポーターを外す指示をし、また、同日のX線写真では、剥離骨折部分で骨融合の進行を確認できることから、同日までは、1日の全部について療養のため勤務することができない状態であったと見るのが相当である。
・ 治癒日までの全期間について全部休業の休業補償を認めることはできないが、退院した翌日の同年4月5日から27日までの間は、全部休業の休業補償を行うべきである。
(平成23年7月27日 指令13−16)
(3)脳出血に係る公務上の災害の認定(申立てを棄却したもの)
(事案の概要)

申立人の夫(本項において「本人」という。)は、庁舎のトイレで倒れているところを発見されて、脳出血と診断され、死亡したが、公務上の災害ではないと認定された。

(申立ての要旨)

脳出血の発症について業務のほかに確たる要因はなく、本人が従事していた業務の過重性は明らかであり、公務上の災害と認められるべきである。

(判定の要旨)
・ 本人は、発症前約1か月前までA課課長補佐として、過重な業務に従事していたとしているが、特段の困難な事態等は生じておらず、また、上司等によるサポートも得られていたこと等も踏まえると、強度の精神的又は肉体的な負荷を受けていたとは認められない。また、超過勤務は1か月当たり20時間から26時間であり、過重なものであったとは認められない。
・ 本人は、発症前約1か月前に異動し、B室室長補佐として、過去に前例のない業務に取り組んだとしているが、前任者によってかなり進行していた状況にあったこと、本人の着任が、政省令の改正等で忙しい時期を過ぎた頃であったこと等から、強度の精神的又は肉体的な負荷を受けていたとは認められない。
(平成23年5月20日 指令13−10)
(4)躁鬱病等に係る公務上の災害の認定(申立てを棄却したもの)
(事案の概要)

申立人は、日頃続いていた不安感、胸部の圧迫感等から医療機関で受診し、鬱状態と診断され、その後、躁鬱病と診断されたが、公務上の災害ではないと認定された。

(申立ての要旨)

直属係長との人間関係や長時間勤務が躁鬱病の発症原因であるので、公務上の災害と認められるべきである。

(判定の要旨)
・ 発症前約2か月前まで在職していたA係での超過勤務は、1か月当たり100時間を超えていたと認められるものの、仕事内容は比較的定型的な業務であり、問題なく勤務していたことが認められる。また、発症前約2か月前に異動したB係での超過勤務は1か月当たり80時間程度であり、繁忙期前の業務内容等を勉強する期間で、それほど負担の大きい業務ではなかったことが認められる。
・ 申立人は、B係の係長の対応が原因となって発症した旨主張しているが、申立人と同係長との間で生じた出来事は、日常的に経験する程度のものであり、躁鬱病の発症原因とするに足る強度の精神的負荷を受けたとは認められない。
・ 申立人の希望どおり、発症後約10か月後に出先機関に転任し、超過勤務はほとんどなくなったが、躁と鬱の状態を繰り返し、療養を継続しているにもかかわらず寛解しなかった。主治医は、勤務環境が原因とは考えにくく、個人の素因が原因と思われると述べている。
・ 以上から、躁鬱病は、公務による負荷が相対的に有力な原因となって発症したものとは認められない。
(平成23年10月14日 指令13−23)

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