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第2編 《国家公務員倫理審査会の業務》

第1章 倫理の保持を図るための啓発活動等

3 倫理制度に関する意見聴取


倫理審査会では、倫理の保持の施策の参考とするため、倫理制度や公務員倫理をめぐる諸問題について、各界から幅広く意見を聴取しており、また、各府省等における倫理法・倫理規程の運用実態、倫理法・倫理規程に対する要望等の把握にも努めている。

(1)有識者との懇談会等

倫理審査会では、倫理法・倫理規程が施行されて以降、各界の有識者から、職員の倫理の保持の状況や倫理制度に対する評価、倫理の保持のための施策などについての意見聴取を続けており、平成23年度においては、京都市及び東京都において、企業経営者、学識経験者、報道関係者等の各界の有識者と倫理審査会の会長や委員との懇談会を開催したほか、各府省の官房長等や特定独立行政法人の倫理監督官との懇談会を開催し、各府省等における倫理法・倫理規程の運用状況や業務への影響、倫理法・倫理規程に対する要望事項などを聴取した。

有識者との懇談会における主な意見
【京都市】
● 一つの不祥事を対岸の火事、他のセクションの問題と捉えがちであるのは問題である。公務員一人ひとりが不祥事を生身で感じるような機会や場面があると良いのではないか。
● 「倫理」という言葉を使うのであれば、公務員が何をすべきなのかを考えることだと思う。全体の奉仕者とは何なのかと自ら問いかける、組織として問いかける。そういう問いかけこそが倫理ではないか。今は、そういう問いかけが欠けているのではないかと感じる。
● 国民一般には、公務員の仕事ぶりはあまり知られていない。したがって、実際に国民に職場を訪問してもらうなど、働く姿を見てもらえれば、公務員は頑張っているということが分かってもらえる。風通しの良い職場を作って、どんどん公務員の働きぶりを見てもらう、感じてもらう取組が大事だと思っている。
● 通報制度は多くの国で設けられており、将来的にはかなり有望な仕組みであることは間違いない。評価や行政監察等はパトロールのようなものであり、通報はベルを押せばすぐにそれが伝わりパトカーが来るといったものである。使い方は難しいが、この両方をうまく使えば、健全な社会が成り立つものである。
● 外から見えることは「何をしたか」だけであるが、本当に大事なことは「何のためにそれをしたか」である。「何のために」の部分が消えてしまうと、結果だけ帳尻を合わせるのみになってしまい、国民から見たらあまり価値がない結果になってしまう。何のために、何をしているのかを議論し、それが組織にかかわっている人の「夢と誇りと自信」につながることが重要である。
【東京都】
● 世界183の国と地域の公共部門の腐敗認識度を数値化してランキングしている「CPI(腐敗認識指数)」をみると、日本は、2011年の最新版では14位にランクされている。倫理法が施行された2000年の結果が23位で、以降、改善傾向にある。また、公務員が収賄事件で起訴された件数も昭和40年代には相当数あったが、現在では、5分の1程度に減ってきている。これらのことから、日本の公務員の清廉度は、国際的に見れば高くなっていると言えるのではないか。
● 倫理法が施行されて10年以上が経過しているが、この間、国家公務員の行動は良くなっており、倫理法の成果が上がってきていると感じている。ルールが厳しいとも感じるが、このくらいのルールはあって然るべしである。
● 倫理意識のみの涵養は難しいと感じている。公務員としての遵法精神、職業モラルを高める取組を行うことが、結果として倫理意識の高まりにつながることとなる。それにはやはり研修が大事であり、研修をしっかり行っている府省は遵法意識も高いように感じている。
● 日本の国家公務員は、個々でみるとまじめに職務に従事し、倫理感は高いと感じているが、組織となると違う面が出てくる。個人の動機として不祥事を起こすよりも組織的な風土により不祥事を起こしてしまうようなケースが多いのではないか。
● 不祥事の防止には教育を繰り返し行っていくことが基本中の基本である。しかし、何回研修をやっても違反する者は出てきてしまう。この場合、なるべく違反の程度が小さいうちに内部告発により違反の発見、処分を行うようにしている。ペナルティーはしっかり科すという風土が不祥事抑止につながる。
● 不祥事を防止するためには、多様な人材を確保することも重要である。倫理法制定のきっかけとなった不祥事などは仮に女性が半数いる職場であれば起こらなかったのではないか。また、セクハラ・パワハラがなく、ワーク・ライフ・バランスが取れた風通しの良い職場を作ることも、職員の仕事に対する熱意を高め、結果、不祥事が生じにくい組織風土の構築につながるものである。
(2)各種アンケート調査
ア 市民モニター及び有識者モニターに対するアンケート調査

平成23年11月、アンケートリサーチ業者に登録されているモニターの中から、年齢・性別・地域等を考慮して抽出した者(市民モニター)1,000人及び倫理審査会が全国の各界有識者(企業経営者、地方自治体の長、学識経験者、新聞社論説委員、労働組合役員、市民団体関係者等)に委嘱した「公務員倫理モニター」(有識者モニター)200人に対して、公務員倫理に関するアンケート調査を実施した。

そのうち、主な調査結果の概要は次のようになっている。

(ア) 国家公務員の倫理感についての印象
― 市民モニターでは、50%近くが厳しい見方
― 有識者モニターでは、75%が好意的な見方
(イ) (ア)の印象を回答した理由
― 市民モニターでは、好意的な見方をした理由は「公正な職務の執行」、厳しい見方をした理由は「自分たちの利益を優先」
― 有識者モニターでは、好意的な見方をした理由は「日頃接している国家公務員の倫理感」、厳しい見方をした理由は「自分たちの利益を優先」
(ウ) 不祥事が発生した際、信頼回復のために求められる対応
― 市民モニター・有識者モニターともに「事実を隠さず、広く情報公開」を
(エ) 国家公務員への期待
― 市民モニターは、国家公務員に対して厳しい見方
― 有識者モニターは、国家公務員に対して高い期待
(ア)〜(エ)それぞれの具体的な調査結果は次のようになっている。
(ア) 国家公務員の倫理感についての印象

国家公務員の倫理感の印象について質問したところ、市民モニターでは、「倫理感が高い」又は「全体として倫理感が高いが、一部に低い者もいる」と好意的な見方をしている者の合計は22.6%にとどまり、「全体として倫理感が低いが、一部に高い者もいる」又は「倫理感が低い」と厳しい見方をしている者の合計は46.6%と高い割合となった。

一方、有識者モニターにおいては、好意的な見方をしている者の合計は75.4%、厳しい見方をしている者の合計は8.9%となっている(図1)。

図1 国家公務員の倫理感について、現在、どのような印象をお持ちですか。
(イ) 国家公務員の倫理感についての印象を回答した理由

国家公務員の倫理感の印象について、その回答の理由について質問したところ、市民モニターでは、好意的な見方をした理由は、「公正に職務を執行しているから」が最も多く、「国民の利益のために働いているから」、「日頃接している国家公務員の倫理感が高いと感じるから」が続く結果となった。一方、厳しい見方をした理由は、「国民の利益よりも自分たちの利益を優先しているから」が最も多く、次いで、「税金の無駄遣いが多いから」が多い結果となった(図2)。

また、有識者モニターでは、好意的な見方をした理由は、「日頃接している国家公務員の倫理感が高いと感じるから」が最も多く、次いで、「公正に職務を執行しているから」が多い結果となった。一方、厳しい見方をした理由は、「国民の利益よりも自分たちの利益を優先しているから」が最も多い結果となった(図3)。

図2 国家公務員の倫理感についての印象を回答した理由(市民モニター)
図3 国家公務員の倫理感についての印象を回答した理由(有識者モニター)
(ウ) 不祥事が発生した際、信頼回復のために求められる対応

公務員による不祥事が発生した際、信頼回復のために必要な行政の対応を質問したところ、市民モニター・有識者モニターともに、「不祥事が発生した際、事実を隠さず、広く情報を公開すること」が最も多く、次いで、「不祥事を起こした職員及び管理監督者へ厳正な処罰を行うこと」が多い結果となった(図4)。

図4 公務員による不祥事が起きた際、信頼回復のために必要な行政の対応は何だと思いますか。必要だと思う順に3つ以内でお選びください。
(エ) 国家公務員への期待

国家公務員の仕事への取組について感じている気持ちを「国家公務員に対する期待」という観点で質問したところ、市民モニターでは、「あまり期待していない」又は「全く期待していない」と国家公務員の仕事への取組について期待できないとする見方をしている者の合計が42.5%であったのに対し、「非常に期待している」又は「ある程度期待している」と国家公務員の仕事への取組について期待する見方をしている者の合計は33.3%にとどまった。

一方、有識者モニターでは、「非常に期待している」又は「ある程度期待している」と国家公務員の仕事への取組について期待する見方をしている者の合計が93.7%にのぼり、「あまり期待していない」と国家公務員の仕事への取組について期待できないとする見方をしている者は1.6%(「全く期待していない」とする回答は0%)となった(図5)。

図5 あなたが国家公務員の仕事への取組について感じているお気持ちに最も近いものをお選びください。
イ 一般職員に対するアンケート調査

平成23年6月、一般職員(本府省に勤務する係長級以下の職員)約15,000人から抽出した2,000人を対象として、公務員倫理に関するアンケート調査を実施した。

公務員倫理に関する研修の受講の有無によって職員の倫理意識等にどのような影響が及んでいるかを探るため、主な調査項目について、公務員倫理に関する研修等に最後に参加してからの期間別にクロス集計を行った。クロス集計の結果の概要は次のようになっている。

(ア) 倫理法・倫理規程の認知度
― 研修後の経過期間が短い者ほど、倫理法・倫理規程の認知度が高いことから、公務員倫理に関する研修の定期的な実施及び受講が重要
(イ) 通報窓口の認知度
― 研修後の経過期間が短い者ほど、通報窓口をよく知っている
(ウ) 通報制度の効果
― 研修後の経過期間が短い者ほど、通報制度の効果について肯定的に理解している
(ア)〜(ウ)それぞれの具体的な調査結果は次のようになっている。
(ア) 倫理法・倫理規程の認知度について

倫理法・倫理規程の内容について、公務員倫理に関する研修等に最後に参加してからの期間別にクロス集計したところ、「よく知っていた」、「ある程度知っていた」という回答の合計が最も多かったのは、最後の研修から1年未満の者で92.6%であり、次いで最後の研修から1年以上3年未満の者で86.4%、最後の研修から3年以上5年未満の者で76.2%と、研修後の経過期間が短い者ほど、倫理法・倫理規程の認知度が高いことから、公務員倫理に関する研修の定期的な実施及び受講の重要性を示す結果となった(図6)。

図6 このアンケートが届く前に、倫理法・倫理規程の内容をどの程度御存知でしたか。
(イ) 通報窓口の認知度について

通報窓口の認知度について、公務員倫理に関する研修等に最後に参加してからの期間別にクロス集計したところ、自分の府省又は倫理審査会のいずれかの通報窓口を知っている者の割合が最も多かったのは、最後の研修から1年未満の者で74.9%であり、次いで最後の研修から1年以上3年未満の者で70.7%、最後の研修から3年以上5年未満の者で66.0%であった。また、両方の窓口を知っていた者の割合も同様の傾向にあり、研修後の経過期間が短い者ほど、通報窓口をよく知っているという結果となった(図7)。

図7 倫理法・倫理規程に違反する行為についての通報窓口について、知っているものをお選びください。
(ウ) 通報制度の効果について

通報制度の効果について、公務員倫理に関する研修等に最後に参加してからの期間別にクロス集計したところ、全体的に回答者の割合が多かった上位三つの肯定的な効果(「職員の倫理意識が高まる」、「不祥事を早期に発見し、対応することができる」、「違反に対する抑止効果となる」)について、最後の研修から3年未満の者が最後の研修から3年以上の者の2倍の割合で選択しており、研修後の経過期間が短い者ほど、通報制度の効果について肯定的に理解していることが明らかになった(図8)。

図8 通報制度の効果についてどのように考えますか。(複数回答)

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