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第1編 《人事行政》

【第3部】  平成24年度業務状況

第7章 公平審査

◎第7章補足資料

資料7−3 災害補償等審査申立事案関係

資料7−3 災害補償等審査申立事案関係 1 処理状況
2 平成24年度の判定例(要旨)
(1)右アキレス腱断裂に係る公務上の災害の認定(申立てを容認したもの)
(事案の概要)

申立人は、配達先の玄関前の階段を駆け上がろうとしたときに、右足に「バッ」という音がして動けなくなり、搬送先の医療機関で、右アキレス腱断裂と診断された。この災害について、申立人に係る被災時の行為は、通常動作の範囲内であり、ほかに本件災害を引き起こす出来事の発生も認められないことから、公務上の災害ではないと認定された。

(申立ての要旨)

災害発生当日は、郵便物配達の道順を決める作業に時間を要したため、配達に出遅れたことから、その遅れを取り戻そうと、急いで配達先の玄関前の階段を駆け上がろうとして、右足に力を入れて踏ん張り、左足を上げて跳躍しようとしたときに、右アキレス腱が断裂したものであり、公務上の災害と認められるべきである。

(判定の要旨)

申立人は、配達の遅れを取り戻そうとして急いでいたところ、配達先の玄関前の階段が2段しかなく、その1段目は高さ約25cm、2段目はそれよりも若干低く、1段目の位置はバイクを降りた地点から約1m20cm先であったため、跳躍して一気に駆け上がろうとして、右足に力を入れて踏ん張り、左足を上げて跳躍しようと通常の動作とは異なった無理な動作を行った結果、右アキレス腱部に対して急激に過重な負荷が掛かったために、本件断裂を発症したものと認められる。

申立人は、同じ右アキレス腱を約9年前にも断裂しているが、主治医の所見によれば、本件断裂の箇所は、過去に断裂した箇所とは異なっており、また、本件断裂の箇所については、アキレス腱炎及びアキレス腱周囲炎の所見や加齢による変性の所見も認められていないとされていることから、申立人には、アキレス腱が断裂しやすい素因はなかったものと認められる。

以上から、申立人の申立てに係る災害は、公務と相当因果関係をもって発生したものと認められるので、公務上の災害と認定すべきである。

(平成24年7月18日指令13−18)
(2)頸椎捻挫、腰痛症に係る公務上の災害の認定(申立てを容認したもの)
(事案の概要)

申立人は、正午から翌日午前11時までの夜勤勤務に従事し、勤務終了後、勤務官署内の食堂において同11時20分から昼食をとり、仮眠室において正午から午後3時まで仮眠した。仮眠後、同3時30分に勤務官署を出て徒歩で駐車場に向かい、同3時45分に駐車場から自家用車を運転して自宅に向かい、交差点において赤信号で停車中、後方から普通乗用車に追突され、頸椎捻挫、腰痛症と診断された。夜勤勤務終了後に発生した事故によるものであるが、仮眠時間が2時間を相当程度超えており、また、被災前の勤務状況から、仮眠したことについて、やむを得ない業務過重等の特段の事情は認められず、社会通念上、勤務と帰宅との間の直接関連性が失われたと認められ、公務上の災害ではないと認定された。

(申立ての要旨)

夜勤勤務は、24時間弱の拘束時間のある勤務であり、夜勤勤務終了後に安全運転のために職場で仮眠し、眠気を完全に取ってから帰宅する行為は、社会通念上、理にかなった合理的なものであり、公務上の災害と認められるべきである。

(判定の要旨)

勤務が終了してから退勤するまでの申立人の行動について見ると、午前11時20分から勤務官署内の食堂において昼食をとり、正午から午後3時まで仮眠室において仮眠した後、同3時30分に勤務官署を出て徒歩で駐車場に向かい、自家用車を運転して自宅に向かったことが認められる。また、本件災害発生日の勤務について見ると、23時間拘束される夜勤勤務であること、休憩時間は設けられているとはいえ、申立人によれば、仮眠は4時間程度であったとしていること、午前5時30分に業務が再び開始されていることが認められ、さらに、申立人の通勤の状況について見ると、約1時間20分自家用車を運転して退勤しなければならないことが認められる。

これらのことを総合して考慮すれば、申立人は勤務終了後に3時間の仮眠を取るなどしており、仮眠等の時間は2時間を超えているものの、それらは安全に退勤するために必要な行為と認められ、本件の退勤は、社会通念上、勤務との間の直接関連性は失われていないと見るのが相当であると認められるので、公務上の災害と認定すべきである。

(平成25年1月23日指令13−2)
(3)抑鬱状態、鬱病、PTSD等に係る公務上の災害の認定(申立てを棄却したもの)
(事案の概要)

申立人は、抑鬱状態、身体表現性障害及び鬱病(本項において「本件疾病」という。)と診断され、本件疾病の発症前6か月間に従事した業務によって本件疾病が発症し、また、特別扱いや叱責・暴行により増悪したので、公務上の災害と認めるよう申し出たが、申立人が申し立てたような事実はなく、本件疾病の発症前6か月間の業務及び発症後の業務は、いずれも過重な業務と認められないことから、公務上の災害ではないと認定された。

(申立ての要旨)

抑鬱状態等と診断された日(本項において「本件診断日」という。)の1年前から業務による強い負荷があり、本件疾病を発症したものであり、発症後の業務上の負荷と復職後の暴行、パワハラ等によって本件疾病が増悪し、PTSDも発症しているので、本件疾病及びPTSDは公務上の災害と認められるべきである。

(判定の要旨)

申立人は、鬱病等と診断されているが、主治医の所見によれば、躁と鬱の両面あるとしていること等を踏まえ、症状、経過、出来事等を総合すると、医学経験則上、申立人は双極性感情障害を発症したものであり、発症時期は本件診断日とするのが相当である。なお、PTSDについては、主治医の所見によれば、推定での診断で主診断ではないとしており、また、自然災害等で誰もが大きな苦悩を残すような破局的な出来事もないので、医学経験則上、PTSDとの診断は認められない。

本件診断日前に申立人が従事した業務は、通常の業務であり、超過勤務時間も多くないため、双極性感情障害の発症原因とするに足る強度の精神的又は肉体的負荷であったとは認められない。

本件診断日後に申立人が従事した業務は、通常の業務であり、長時間の超過勤務があったとは認められない。また、申立人は人事評価の話合いの際に暴行を受けたとしているが、申立てのような暴行があったとは見られず、仮にクリアーファイルが当たったとしても触れた程度と見るのが相当である。

上司に体をつかまれて持ち上げられて事務室から外へ運ばれる暴行を受けたとしていることについても、上司の行為は、申立人が繰り返し注意されたにもかかわらず、発言をやめなかったことによるもので、その場の状況に照らして相当であったと見るべきである。

申立人はその他パワハラ等を受けたとしているが、上司等の発言は業務指示の範囲を超えたものとは認められず、申立人のみ業務指示票を渡される等の特別扱いを受けたとしていることについては、業務上の必要な措置と認められ、申立人がパワハラ等を受けたものとは認められない。

申立人の双極性感情障害発症後の病状の変化は、医学経験則上、発症後に申立人が従事した業務等によって自然経過を超えて悪化したものと認められない。

以上のことからすると、申立人が本件診断日後に従事した業務等が、双極性感情障害を悪化するに足る強度の負荷であったとは認められない。

以上から、双極性感情障害は、公務による負荷が相対的に有力な原因となって発症及び悪化したものとは認められない。

(平成24年6月8日指令13−14)
(4)左脛骨顆間隆起骨折等に係る障害等級の上位等級への変更(申立てを棄却したもの)
(事案の概要)

申立人は、業務中にバイクで走行中、転倒し、左脛骨顆間隆起骨折、左脛骨高原骨折と診断され、公務上の災害と認定された。治癒時に残存する障害については、障害等級第14級に該当すると決定された。

(申立ての要旨)

左膝に痛みが残っており、また、再度手術が必要であるとの説明が主治医からあったことから、障害等級は第14級より上位の等級とすべきである。

(判定の要旨)

神経系統の障害については、本件骨折は膝関節内での骨折であり、医学経験則上、このような骨折では、歩く、立つ、座る等の一般的な動作で膝関節が動くことにより疼痛等を感じることはあるとされ、この状態は、「ほとんど常時疼痛を残している」と見ることができる。一方で、申立人については、X線写真上、左膝の骨折についての癒合は良好で、転位や骨片も認められず、この骨折に伴う膝前十字靱帯損傷等の程度もごく軽度で、通常の労務に差し支えがあるような疼痛等が残存するものではなく、主治医も、同様の所見を示している。したがって、申立人の左膝に残存する疼痛等は、第12級には該当せず、第14級に該当するものと認められる。

機能障害については、診療録には可動域制限がない旨記載され、主治医の所見においても、機能障害があると認められる他覚的所見はないとしていることから、等級外となる。また、申立人は、本件骨折による靱帯のゆるみから不安定感を自覚症状として感じているものの、主治医の所見によれば、動揺関節と認められる他覚的所見はなく、硬性補装具の必要はないとしていることから、等級外となる。

以上から、申立人の治癒時に残存した障害の程度は、実施機関が決定した第14級を超えるものとは認められない。

(平成24年6月20日指令13−16)

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