前(節)へ 次(節)へ

第1編 《人事行政》

【第2部】女性国家公務員の採用・登用の拡大に向けて

第3章 諸外国における女性国家公務員の採用・登用の状況と課題

第3節 ドイツ

2 女性の採用・登用促進のための具体的な施策の展開

(1)社会的な背景

ドイツでは1960年代前半までは、女性は専ら家事・育児に従事するものとされていたが、1960年代後半から70年代には、女性解放運動が活発化し、女性の意識改革をもたらした。1974年には連邦議会に「女性と社会調査会」が設置され、同調査会は、1980年に法的・社会的な男女の同権を実現するための勧告を含む報告書を議会に提出した。

その後、1980年に欧州共同体の男女平等指令等に対応させるための民法典の改正により、雇用における性差別の禁止等が明確に規定されるとともに、1994年にはドイツ統一を契機とする一連の法改正において、ドイツ連邦共和国基本法(憲法)に男女平等の実現を国の責務とする規定が挿入されるなど、男女平等の実現に向けた法整備が進められた。

(2)公務における取組の経緯

人事制度の概要

  • 学歴要件等により職員が就任しうる役職段階・昇進範囲が規定され、各省の課長級以上の管理職員・幹部職員に就任できるのは高級職(総合大学卒業相当)の職員に限られる。専門大学等卒業相当の上級職職員が高級職に乗り換える道もあるが、このような乗換え昇任者は少数であり、乗り換えたとしてもそのような昇任者が管理職員に達するケースは極めてまれである。
  • 高級職の初任者の採用は、基本的に省ごとに一括して公募により行われる。高級職の多くは、法曹資格取得者で占められている。近年、法曹資格試験合格者の半数以上が女性であり、高級職採用数の約半数も女性となっている。
  • 採用後の異動や昇進は、成績主義の原則の下、部長級までは空席への応募が基本となり、局長級以上は公募によらず任用される。

ア 登用面に関する取組

(ア) 女性の地位向上ガイドライン

連邦行政機関における女性割合の向上、特に高級職及び上級職における女性の割合の向上や女性の管理職員・幹部職員への登用数の増加を目指し、1986年に女性の地位向上ガイドライン(閣議決定)が策定された(1990年に改定)。

具体的には、採用・登用に当たっては、成績主義を遵守しつつ、女性を「しかるべく考慮する」ことを連邦行政機関に義務付けた。

また、同ガイドラインに定める施策のほか、優秀な女性に的を絞った育成、例えば乗換え昇任に手を挙げるよう声かけの実施、人事面談の実施、長期的なキャリア計画の策定などが奨励された。

(イ) 立法上の措置

前記のガイドラインは拘束力が弱く限定的な効果しかなかったことから、1994年に、同ガイドラインの内容を拡充した法律(女性の地位向上法)を制定し、同法に基づき省ごとに「女性の地位向上計画」を策定し、女性の採用・登用の目標を設定することとした。

しかしながら、連邦政府の報告書によれば、各省で定める計画における取組の多くが具体性に欠けていたこと、採用・登用の目標を設定しても公務員の削減とそれによる超過人員のために限定的にしか実施できなかったこと等から、女性の少ない領域でその割合を顕著に増加させる効果はなかったとされており、同法は2001年に廃止され、代わって、「連邦行政及び連邦裁判所における女性と男性の平等のための法律(連邦平等法)」が制定された。同法においては、採用・登用などに当たっては、管理職員などで女性が50%未満の場合に、候補者の資格(学歴、職務経験、人事評価結果など)が同一であるならば、シングルファーザーなど男性候補者に考慮すべき事情がある場合にはそれを勘案した上で、女性を優先することとしている。実際には、採用・登用の選考において同一資格の候補者が複数いるというケースはほとんどなく、この規定が適用されることは極めてまれであるが、訴訟に発展しないよう、採用・登用の選考における厳格な適性審査と選考手続の透明性確保に留意している。なお、成績主義が前提となること、男性候補者の考慮すべき事情を勘案した上での女性優遇であることから、連邦政府においては逆差別の問題は生じていないとされている。

イ 両立支援促進の取組

両立支援制度も徐々に拡充され、様々な短時間勤務(週4日勤務、半日勤務など)、フレックスタイム(始業と終業の範囲及びコアタイムは省ごとに定める。守衛や広報担当等を除いて広く活用)などの柔軟な勤務時間、ワークシェアリングなどが可能となっている。親時間(育児休業)については、原則として子が3歳に達するまでの取得が可能である。近年は、親時間取得を促進するための親手当制度(一方の親のみが親時間を取得する場合は12か月分を限度として支給されるが、両方の親が取得する場合には合計14か月分が限度となる。)を利用し、2〜3か月間の親時間を取得する若い男性職員が増加してきている。

2009年現在、本省・外局等における短時間勤務職員は12.2%である。このほか、テレワークも可能であり、短時間勤務とテレワークを組み合わせて利用している職員も多い。

また、各省それぞれに、保育施設の提供(各省独自の保育施設、近郊の保育園に職員の子供用に一定人数分を確保)、省庁の庁舎での親子部屋(子供の病気や保育園の閉鎖等、緊急時に子連れで勤務できる部屋)の設置及び緊急時の保育・介護先の確保支援を行う民間ファミリーサポートとの連携を行っている。

このような両立支援制度の整備は、在職者に占める女性の割合増加の要因の一つとされているが、一方で、両立支援制度を利用することで長期間職場を離れることにより、昇進に影響が出るリスクがあるとも指摘されている。また、複数の省に聴取したところ、管理職を目指す職員の傾向としては総じて親時間取得の利用期間は短く、仮に育児目的で短時間勤務を利用する場合も短縮する時間を極力抑えるとともに、早期に通常勤務に戻っているようである。また、例えば、短時間勤務職員の場合、業務の軽減分は代替職員を補充することでカバーすることが基本とされているが、昨今の公務員の削減などから、部署内の業務分担の変更などで対応するケースも多く、実際には他の職員の負担増や不公平感といった問題が生じているとのことである。

(3)現在行っている重点的な取組

連邦平等法に基づいて、各省においては、平等計画(4年計画であるが、2年ごとに達成状況に応じて改定)の策定が義務付けられており、そこでは、これまでの女性の採用・登用の状況や取組などを検証し、目標及びその達成時期を設定して具体的な人事・組織上の措置を講じることとされている。

このほか、それぞれの省庁においては管理職員・幹部職員に占める女性割合を高めるため、課長ポストでの短時間勤務や一つの課長ポストの所掌事務を2人の課長級職員で分担するダブルヘッドの活用、メンタープログラム、選抜された管理職候補者を対象とする管理職育成課程(メンタリング及び内部管理に関する研修などで構成される2年間の課程)、優秀な女性に対して上位ポストへの応募を勧める声かけなどの取組が行われていることが報告書で紹介され、連邦平等法を所管する家庭・高齢者・婦人・青年省がこれらの取組について各省庁への普及を奨励している。


前(節)へ 次(節)へ
©National Personnel Authority