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第1編 《人事行政》

【第2部】女性国家公務員の採用・登用の拡大に向けて

第3章 諸外国における女性国家公務員の採用・登用の状況と課題

第4節 フランス

2 女性の採用・登用促進のための具体的な施策の展開

(1)社会的な背景

フランスでは女性の就労に対する社会全体の理解があり、出産後も保育施設の充実等女性が働きやすい環境が整備されている。一方、民間における男女間の賃金格差が存在するなど労働市場における女性の地位は今でも低く、世論調査(CSA「女性であるということ(2013年)」)によると、44%の女性が、女性であることが職業上で不利であると回答している。

1982年、憲法院が地方議会等におけるクォータ制の導入を図る地方選挙法の改正案を違憲としたが、他の欧州諸国などと比べて女性の政治参画が低調であること等を背景として、女性の政治参画及び職業上の男女平等の促進のためには、憲法自体の改正が必要であるとして、二度にわたる憲法改正が行われた。1999年の憲法改正では、政治における男女共同参画を規定し、同憲法改正を具体的に規定した法律(通称パリテ法)が制定された。パリテ(parité)とは、男女同数を意味し、同法は議員等の候補者の男女の割合を同率にすること等を求めている。さらに、2008年の憲法改正により、経済・社会における男女共同参画が規定され、民間部門及び公的部門においてクォータ制導入が可能となった。

(2)公務における取組の経緯

人事制度の概要

  • 国家公務員の人事管理は約600ある職員群(コール(corps))が基本単位となる。職務の性質や要求される学歴によって、コールは上からA〜Cのカテゴリーに分類される。成績主義に基づき行われる採用試験もコールごとに行われ、その中で昇進していく閉鎖的な仕組みとなっている。
  • 幹部要員については、事務系はENA、技術系は理工科学校(ポリテク)の卒業生からの採用を柱としている。ENA及び理工科学校の卒業生はカテゴリーAの中に事実上存在するカテゴリーA+と呼ばれるグループに採用される。
  • 採用後の異動は、幹部要員か否かにかかわらず、公務内での公募による空席補充による。高級職(約600ポスト。うち本省ポストは約300)については、公募は行われず、大臣の自由任用とされるが、職業公務員が大部分を占める。

ア 登用に関する取組

2000年に、国家公務員における男女平等に関する最初の取組として、「国家公務員における男女平等に関する数か年計画に関する2000年3月6日の通達(首相通達)」が発出された。同通達においては、各省は、研修参加における男女の機会の平等を確保するための目標や管理職員・幹部職員に占める女性職員の割合に関する目標について3〜5か年の計画を策定することを義務付けられた。後者の目標は、本省の課長、局次長、部長等(本省総局長・局長等の自由任用職は対象外)を対象として、当該ポストの供給源となっている職員群に占める女性の割合を考慮して決定することとされていた。

この通達は、各省における努力目標設定などの取組にとどまり、当初期待されたほどの効果がなかったとされている。

2001年には、民間及び公務における男女の職業上の平等を推進するため、「男女間の職業平等に関する法律(通称ジェニソン法)」が制定され、同法により、官公吏一般規程第Ⅰ部(官公吏の権利と義務に関する法律(1983年))が改正され、公務における男女平等の原則が初めて法制化された。

イ 両立支援の取組とその概要

両立支援策としては、保育に対する金銭的援助である官民共通の「共通雇用サービス小切手(CESU)」のほか、育児休業(無給)、テレワーク、短時間勤務等の制度が整備されている。なお、子供を他人に預けて働くことに抵抗がないこと、保育サービスは保育園に限らず様々な選択肢があることや小学校を含め学校の授業時間が長いことなどから、育児休業はあまり利用されず、CESUの利用が中心である。

(3)現在行っている重点的な取組

ア クォータ制の導入

ジェニソン法の制定後も管理職員・幹部職員における女性の割合が低い状態が続いていたため、公務における男女平等を推進させる目的で、サルコジ大統領の依頼により、国会の「女性の権利及び男女機会均等委員会」の委員を務めていたフランソワーズ・ゲゴ議員から、報告書「公務における男女平等」が2011年3月に大統領に提出された。同報告書では、①女性のキャリア形成における障害を特定するための統計データを充実させること、②高級職に占める女性の割合に関する明確かつ拘束力のある目標(40%)を設定すること、③女性のキャリア形成を促進させる人事管理を実施すること、④ワーク・ライフ・バランス実現のための「時間管理憲章」を行政全体に広げていくこと、⑤職場における男女平等を図るための研修及び広報を実施すること、⑥労働組合との公務における男女平等に関する合意を目指すことが掲げられた。

同報告書を受けて、「公務における任官、契約職員の職務実態の改善、差別との闘い等の措置に関する法律(2012年)」及び同法に基づく「幹部公務員任用における男女平等に関する政令(2012年)」が制定され、国家公務員については、本省総局長・局長、部長、局次長、大使、地方長官等の幹部職員にクォータ制を導入することとされた。具体的には、2013年から2018年までに新たに任命されるクォータ制の対象ポストについて、どちらかの性(実質的なターゲットは女性)の割合を段階的に40%(2013年からは20%、2015年からは30%、2018年からは40%)とすることが義務付けられ、同法令に定められた女性割合を達成できない行政機関については、2013年から2014年までの間は30,000ユーロ、2015年から2017年までの間は60,000ユーロ、そして2018年以降は90,000ユーロの罰金が科せられることとされた。

イ その他の取組

2012年5月に成立したオランド政権は、その重点政策の一つとして、あらゆる分野での男女平等の実現を図るため、閣僚を男女同数とし、女性の権利大臣兼政府報道官を任命して、政府を挙げて男女平等を実現するための取組を推進することとした。その一環として、公務においては、2012年8月に首相から二つの通達が発出された。一つは、法令を立案する際に、その法令により導入される措置が女性の権利侵害とならず、男女平等に配慮することを義務付けるもの、もう一つは、各大臣に各省において男女平等担当の幹部公務員を指名することを義務付けるものである。後者の通達により、女性の権利及び男女平等に関する閣僚委員会が12年ぶりに開催されることとなった。同委員会では、男女平等担当の幹部公務員が中心となり各省がそれぞれ行政における男女平等を実現するためのロードマップを作成することが決定された。ロードマップは、男女平等を推進するための各省所管行政における取組とともに、各省の人事施策における取組がその柱となっている。

さらに、2013年3月、政府と労働組合との労使交渉の結果、国家・地方・医療公務員を対象とした男女平等に関する初めての労使合意である「公務における職業的男女平等に関する合意」が結ばれ、2013年7月に、同合意を公務担当大臣通達として発出した。同通達の主な内容は、研修の受講機会の男女平等化、子供の出生後に父親が取得することができる休暇(父性休暇)の取得促進等である。

また、人事管理の運用面においても幾つかの取組が行われている。自由任用の高級職の任命においては、各大臣が大統領に3人の候補者を推薦することになっているが、2013年以降、大臣が推薦する3人のうち、少なくとも1人は女性とすることとしており、今後この取組を徹底させることで高級職の女性の割合を増やすことを目指している。また、高級職任命のための人材プールに登録されるまでの段階においても、高い潜在能力を有する女性職員を特定し、選抜する取組を強化することとしている。


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