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第1編 《人事行政》

【第1部】 人事行政この1年の主な動き

第1章 適正な公務員給与の確保

1 勧告と報告


平成26年8月7日、人事院は国会及び内閣に対し、一般職の職員の給与等について報告し、給与の改定について勧告を行った。その内容は以下のとおりである。

(1)民間給与との較差等に基づく給与改定

ア 月例給

人事院は給与勧告を行うに当たり、毎年、「国家公務員給与等実態調査」及び「職種別民間給与実態調査」を実施し、個々の国家公務員及び民間企業の従業員の4月分の月例給を精確に把握している。その上で、単純な平均値の比較ではなく、同種・同等比較の原則の下、公務の一般的な行政事務を行っている行政職俸給表(一)適用職員と、民間においてこれと類似すると認められる事務・技術関係職員について、主な給与決定要素である役職段階、勤務地域、学歴、年齢を同じくする者同士の給与を対比させ、精密に比較(ラスパイレス方式)を行い官民較差を算定している。

平成26年も、調査の精確性を確保しながらできる限り広く民間給与の実態を把握するという観点から、調査対象事業所を全国の民間事業所のうち、企業規模50人以上、かつ、事業所規模50人以上の事業所とし、その事業所に勤務する従業員の春季賃金改定後の給与実態を把握するため、「職種別民間給与実態調査」を行った。なお、同年の調査からは、民間企業の組織形態の変化に対応するため、基幹となる役職段階(部長、課長、係長、係員)の間に位置付けられる従業員の個人別給与等を把握し、官民の給与比較の対象に追加することとした。また、「国家公務員給与等実態調査」においては、給与法が適用される常勤職員約26万人の給与の支給状況等について全数調査を行った。

両調査により得られた平成26年4月分の官民の給与について、上述のラスパイレス方式による同種・同等比較を行い、官民較差を算出したところ、国家公務員給与が民間給与を平均1,090円(0.27%)下回っていたことから、民間給与との均衡を図るため、月例給の引上げ改定を行うこととした。改定に当たっては、本年の較差分は、基本的な給与である俸給の水準改定に充てることとした。

イ 特別給

平成25年8月から平成26年7月までの1年間において、民間事業所で支払われた特別給は、年間で所定内給与月額の4.12月分に相当しており、国家公務員の期末手当・勤勉手当の年間の平均支給月数(3.95月)が民間事業所の特別給を0.17月分下回っていたことから、支給月数を0.15月分引き上げ、4.10月分とすることとした。

ウ 平成26年の給与改定

(ア) 俸給表

一般的な行政事務を行っている職員に適用される行政職俸給表(一)について、平均0.3%引き上げることとした。その際、世代間の給与配分の見直しの観点に立って、一般職試験採用職員の初任給について、2,000円引き上げるなど、若年層に重点を置きながら引上げ改定を行うこととした。また、50歳台後半層の職員の在職実態等を踏まえ、3級以上の級の高位号俸については、改定を行わないこととした。

その他の俸給表については、行政職俸給表(一)との均衡を基本に改定することとした。指定職俸給表については、改定を行わないこととした。

(イ) 初任給調整手当

医療職俸給表(一)の改定状況を勘案し、所要の改定を行うこととした。

(ウ) 通勤手当

交通用具使用者に係る通勤手当について、公務における現行の手当額が、民間事業所における支給額を平均で10%以上下回っていることから、やむを得ず自動車等により通勤することが必要な職員の負担に配慮するため、使用距離の区分に応じ、100円から7,100円までの幅で引上げ改定を行うこととした。

(エ) 特別給

前記のとおり、国家公務員の期末手当・勤勉手当の年間の平均支給月数が、民間事業所の特別給の支給割合を0.17月分下回っていたことから、支給月数を0.15月分引き上げることとした。引上げ分の期末手当及び勤勉手当への配分に当たっては、民間の特別給の支給状況等を踏まえつつ、勤務実績に応じた給与を推進するため、引上げ分を勤勉手当に配分することとした。

(オ) 寒冷地手当

気象庁から新たな気象データ(「メッシュ平年値2010」)が提供されたことから、このデータに基づき、支給地域の改定を行うこととした。

また、支給地域の指定が解除される地域に施行日(平成27年4月1日)前から引き続き勤務する職員等に対して、所要の経過措置を講じることとした。

(2)給与制度の総合的見直し

地域間・世代間の給与配分の見直しや、公務組織の特性、円滑な人事運用の要請等を踏まえた適正な処遇の確保など、国家公務員給与における諸課題に対応するため、俸給表や諸手当の在り方を含めた給与制度の総合的見直しを、平成27年4月から3年間で段階的に実施することとした。

(注) 以下「現行」とあるのは、平成26年勧告時点の制度の内容である。

ア 地域間の給与配分の見直し、世代間の給与配分の見直し

民間賃金の低い地域を中心に、公務員給与は高いのではないか等の指摘が依然としてみられることに留意し、そうした地域における官民給与の実情を把握した結果、一定の給与差が認められたことを踏まえ、全国共通に適用される俸給表の水準を引き下げ、その引下げ分を原資として地域手当の支給割合を引き上げること等による地域間の給与配分の見直しを行うこととした。

俸給表の水準の引下げに当たっては、国家公務員給与が民間給与を上回っている状況にある50歳台後半層の給与水準を見直すこと等により、世代間の給与配分の更なる適正化を図った。

(ア) 俸給表等の見直し

① 行政職俸給表(一)

民間賃金の低い地域における官民給与の較差と全国の較差との率の差が2.18ポイント(平成24年から平成26年までの3年平均)生じていたことを踏まえ、全国共通に適用される俸給表の水準を平均で2%引き下げるとともに、地域間の給与配分の見直しを行うため、地域手当の級地区分・支給割合等の見直しを行った。

俸給表の水準の引下げに当たっては、50歳台後半層において国家公務員給与が民間給与を4ポイント程度上回っている状況を踏まえ、世代間の給与配分の見直しを行うこととし、50歳台後半層の職員が多く在職する高位号俸は最大4%程度引き下げるなど給与カーブの見直しを行った。また、人材確保への影響等を考慮し、初任給に係る号俸は引き下げないこととした。

② 行政職俸給表(一)以外の俸給表

行政職俸給表(一)との均衡を基本とし、各俸給表における50歳台後半層の在職実態等にも留意しつつ引き下げることとした。医療職俸給表(一)については、国の医療施設に勤務する医師の処遇を確保する観点から引き下げないこととした。指定職俸給表については、行政職俸給表(一)の平均改定率と同程度の引下げ改定を行うこととした。

③ その他

55歳を超える職員(行政職俸給表(一)6級相当以上)の俸給等の1.5%減額支給措置の廃止等を行うこととした。

(イ) 地域手当の見直し

① 級地区分・支給割合

俸給表水準の引下げに伴い、級地区分を1区分増設し、7区分とした。

民間賃金が特に高い東京都特別区(1級地)の支給割合については、平均2%の引下げを行った俸給と見直し後の地域手当とを合わせた給与水準が従前を上回らない20%にとどめ、2級地の支給割合については、1級地の支給割合を抑制すること等を考慮して設定した。また、3級地から7級地までの支給割合については、現行制度との連続性等を考慮して設定することとし、支給割合を以下のとおり見直すこととした。

1級地20%、2級地16%、3級地15%、4級地12%、5級地10%、
6級地6%、7級地3%

② 支給地域

最近の民間賃金の状況を反映させるため、「賃金構造基本統計調査」(平成15年〜平成24年)のデータに基づき、支給地域の級地区分を見直すとともに、支給地域である中核的な都市と地域の一体性が認められる市町村に関する補正(パーソントリップ補正)を行った。また、俸給表の水準の引下げを行う中で、地域手当の級地区分の変更により支給割合も引下げとなる場合には、給与水準が大幅に低下することを考慮し、下位の級地区分への変更は1段階までとした。これとの均衡上、上位の級地区分への変更についても1段階までとした。

イ 職務や勤務実績に応じた給与配分

国家公務員については、毎年2割程度の職員が転勤しており、こうした転勤する職員の負担、円滑な人事運用の要請等を考慮し、広域的な異動を繰り返す職員、やむを得ず単身赴任をしている職員に対する手当額の引上げなどを行う必要があると認め、以下の諸手当の見直しを行うこととした。

(ア) 広域異動手当

円滑な異動及び適切な人材配置の確保を図るため、異動前後の官署間の距離区分に応じた支給割合について、見直し後の地域手当の平均支給割合(約9.5%)や俸給表の水準の引下げ幅等を考慮し、300km以上は10%(現行6%)、60km以上300km未満は5%(現行3%)に引き上げることとした。

(イ) 単身赴任手当

公務の単身赴任手当が民間の同種の手当の支給額を下回っている状況等を踏まえ、基礎額(現行23,000円)を7,000円引き上げるとともに、加算額(現行年間9回の帰宅費用相当額)を年間12回相当の額に引き上げた。さらに、遠距離異動に伴う経済的負担の実情等を踏まえ、交通距離の区分を2区分増設することとした。

(ウ) 本府省業務調整手当

本府省における人材確保のため、係長級は基準となる俸給月額の6%相当額(現行4%相当額)、係員級は4%相当額(現行2%相当額)に引き上げることとした。

(エ) 管理職員特別勤務手当

管理監督職員が平日深夜に及ぶ長時間の勤務を行っている実態がみられ、こうした勤務に対し給与上の措置を行うため、管理監督職員が、災害への対処等の臨時・緊急の必要によりやむを得ず平日深夜(午前0時から午前5時までの間)に勤務した場合、勤務1回につき6,000円を超えない範囲内の額を支給することとした。

ウ 実施時期等

給与制度の総合的見直しは、俸給表の水準を平均2%引き下げ、その引下げ分を原資として地域手当の支給割合の引上げ等の見直しを行おうとするものである。俸給表の水準の引下げに際しては、職員の生活への影響を考慮して、激変を緩和するため3年間の経過措置を講ずる一方で、平成27年4月から実施する改善措置に要する原資を確保するため、同年1月1日の昇給における昇給幅の抑制を行うこととした。

諸手当の見直し等については、①地域間の給与配分の見直しを行うため、地域手当の支給割合を計画的かつ段階的に引き上げる、②広域異動手当や単身赴任手当の見直しは、円滑な異動及び適切な人材配置の確保等の観点から、先行して実施する、③本府省業務調整手当の見直しは、見直しに用いることができる原資の状況等を踏まえて実施時期を決定する等の考え方に立って、逐次実施を図り、平成30年4月1日に完成させることとした。

なお、この間の各年度における地域手当の支給割合等については、前年における職員の在職状況等を踏まえ、前年の給与勧告時の報告において示すこととした。

(3)雇用と年金の接続及び再任用職員の給与

ア 雇用と年金の接続

国家公務員の雇用と年金の接続のための措置については、平成25年3月に閣議決定された「国家公務員の雇用と年金の接続について」において、当面、年金支給開始年齢に達するまで希望者を再任用するものとすること、年金支給開始年齢の段階的な引上げの時期ごとに、人事院が平成23年に行った「定年を段階的に65歳に引き上げるための国家公務員法等の改正についての意見の申出」に基づく段階的な定年の引上げも含め改めて検討を行うこと等が定められている。また、平成26年4月に公布された改正法の附則では、政府は平成28年度までに人事院の意見の申出を踏まえつつ、雇用と年金の接続のための措置を講ずることについて検討するものとされている。

公務の再任用の状況をみると、短時間再任用が約7割となっているほか、定年前より職責が低く、補完的な業務を担当することが一般的となっている。一方、平成26年度新規再任用の行政職俸給表(一)適用職員についてみると、フルタイム再任用を希望したものの、「職員の年齢構成の適正化を図る観点から希望者をフルタイム再任用とすることが困難」であることを主な事情として短時間再任用とされている者が約3割となっている(「平成26年再任用実施状況調査」)。

平成28年度には年金支給開始年齢が62歳に引き上げられ、再任用希望者の一層の増加が見込まれることから、現在のような再任用の実態が続くと、公務能率の低下等の問題が深刻化するおそれがある。また、民間企業では、定年退職者をフルタイムで継続雇用することが多く(「平成26年民間企業の勤務条件制度等調査」によれば、再雇用者の92.0%)、民間企業と同様、フルタイム中心の勤務を公務で実現していく必要がある。このため、職員の能力と経験の公務外での活用、業務の運営や定員の配置の柔軟化、60歳前からの退職管理を含む人事管理の見直しを進めていくとともに、フルタイム中心の勤務の実現のため、関連する制度と併せて公務における雇用と年金の接続の在り方を検討していく必要がある。

人事院としても、意見の申出を踏まえ、雇用と年金の接続のため、適切な制度が整備されるよう、積極的に取り組むこととしている。

イ 再任用職員の給与

再任用職員の給与については、前記の閣議決定において、人事院に対し、再任用職員の今後の職務や働き方の実情等を踏まえ、給与制度上の措置について必要な検討を行うよう要請がなされている。

諸手当の取扱いについては、公務における再任用の人事運用の実態や民間の再雇用者に対する手当の状況を踏まえ、再任用職員に対しても単身赴任手当を支給することとした。

再任用職員の給与水準については、平成26年に初めて公的年金が全く支給されない民間事業所の再雇用者の個人別給与額が把握できることとなり、今後もその動向等を注視するとともに、各府省における今後の再任用制度の運用状況を踏まえ、再任用職員の給与の在り方について必要な検討を行っていくこととしている。


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