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第1編 《人事行政》

【第2部】 東アジア諸国と我が国の公務員制度

第1章 東アジア諸国等における公務員制度改革の取組と人事院の支援

第3節 国際機関を通じた腐敗防止の取組への貢献

1 OECDにおける取組

(1)公務員倫理への取組

OECDでは、1990年代以降、経済成長が鈍化し、国民の価値観の多様化等を背景として政府が国民の期待に必ずしも応えられなくなったことにより、加盟諸国において政府に対する国民の信頼が低下し、不祥事が事態を更に悪化させているという認識が示され、また、変化する公務への期待に対応していくために、中立性、遵法性、誠実性等の伝統的な公務の基本的価値に、説明責任や透明性等の新しい価値を組み合わせた新たな行動規準を設けることが必要となるなど公務員の倫理が重要課題となってきた。

このような課題等を踏まえ、OECDでは、1961年にOECD内の低開発国であるギリシャ、トルコ等に対する技術協力を行うために設立された技術協力委員会を、1990年に行政管理委員会として改組し、各国の行政管理の在り方を議論する中で、この問題を取り上げていった。

1996年には、OECDは「公務における倫理−現在の課題と取組」という報告書において、九つの加盟国の公務員の倫理や行動の管理について調査結果を報告するとともに、公務における倫理に関する取組に資するため「倫理インフラストラクチャー」を提示した。倫理インフラストラクチャーは、法的枠組や説明責任、国民の監視等の規制の機能、政治的リーダーシップ、倫理規程や教育研修等の指導の機能、調整機関や公務員の勤務条件等の管理の機能の三つの機能から成る。1999年には、1996年の報告書の対象となっていなかった15か国(日本を含む。)における腐敗対策の取組をまとめた報告書を取りまとめた。さらに、2000年には加盟国29か国を対象に、公務における価値、それを確保する仕組み等倫理に関する取組を網羅的に取りまとめた報告書を発表した。

その後、公務と民間との間の関係が密接な場合に、求められる公務の清廉性と透明性を確保する観点から、公務と民間、政治と行政の接触等腐敗の危険性の高い分野の脆弱性に焦点を当てた議論がなされるようになり、2003年には、公的部門における利益相反管理のためのガイドラインを発表した。その後も、ガイドライン実施の手引や、ガイドラインの実施状況についての報告書を発表するなど、利益相反に関する取組が進められ、ロビイング活動に関する規範や、公務員の資産開示、潜在的な利益相反リスクの管理、内部通報者の保護等も議論の対象となっている。

(2)国際商取引における贈賄防止に関する取組

アメリカは、ウォーターゲート事件等をきっかけに外国公務員に対する商業目的での贈賄行為を違法とする国内法を1977年に制定し、1989年にはOECDに対し、不正な報酬に対する国際的な対処のための措置を設けるべきとの提案を行った。これを受け、OECD内に設置された専門家グループにおいて検討が行われた結果、1994年、OECD加盟国に対し、国際商取引に関連した外国公務員への贈賄の抑止・防止についての実効的措置を求めるなどとする最初の理事会勧告が採択された。

その後、1997年5月、1994年の勧告が改訂されたところ、この改訂された勧告において、犯罪構成要件、外国公務員の定義、裁判権、制裁等、外国公務員に対する贈賄規制の共通の要素等が合意され、外国公務員への贈賄を犯罪化する国際条約の策定作業を開始することが決定された。

これを受け、1997年11月、OECDは、主に先進国による贈賄が国際商取引(貿易及び投資を含む。)において広範に見られる現象であり、深刻な道義的及び政治的問題を引き起こし、グッド・ガバナンス及び経済発展を阻害し国際的な競争的条件をゆがめていることを考慮し、世界的に外国公務員への贈賄を抑止及び防止するため、「国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約(以下「OECD外国公務員贈賄防止条約」という。)」を採択した。同条約は、1997年12月に我が国を含む33か国が署名し、1999年2月に発効した。

OECD外国公務員贈賄防止条約は、全17条から構成され、犯罪の構成要件、外国公務員の定義、制裁、裁判権等とともに、条約の効果的な運用のための司法共助、犯罪人引渡し、各国実施状況のフォローアップ等について規定している。

今日、OECD外国公務員贈賄防止条約の締約国は我が国を含め41か国(2014年5月現在)となっているが、先進国の大半が締結しており、腐敗防止のための国際的な取組の一つとしての役割を果たしている。

(3)人事院の関わり

人事院は、こうしたOECDの取組に対し、倫理インフラストラクチャーの策定に当たって指導助言する専門家グループへの参加、我が国における公務員倫理向上のためのメカニズム等についての積極的な情報提供等、専門機関として継続的な貢献を行っている。


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