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第1編 《人事行政》

【第2部】 東アジア諸国と我が国の公務員制度

第2章 東アジア諸国が公務員制度改革を行う背景

第2節 東アジア諸国が改革を必要としている分野

2 研修等による人材育成

各国が重点改革分野として採用試験に次いで挙げるのが、行政の運営に当たる人材の育成である。いずれの国においても、行政ニーズに応え、公務の質と効率性を高めるため、行政の担い手たる人材の育成に取り組んでいる。

公務ではその事務に、公平性、公正性、中立性等が厳しく求められることや、業務執行のために、固有の専門知識、技術が求められる分野も多いこと等から、安定的・継続的に行政を執行するために、それを担う人材を部内で育成していくことが一般的となっている。東アジア諸国でも、長期雇用慣行に基づく人事運用が行われており、部内で人材を育成し活用することが重要な課題となっている。

各国とも、各省庁がそれぞれの職員を対象に実務研修を行い、また、中央人事行政機関等に設置された中核となる研修所が省庁横断的な研修を実施している。中核となる研修所は、主に幹部養成研修を実施するとともに、各省庁の研修所に対し、カリキュラムの開発等の支援を行うなど、幹部の育成と各省庁の研修の充実という面から、公務人材の育成に貢献している。なお、幹部養成研修は、昇進後の職務の遂行に役立つ能力を修得させることを主な目的としているが、インドネシア、ベトナム等では、研修受講を昇進の要件としている。

カンボジアでは、国家開発戦略の中心にグッド・ガバナンスの実現を据え、腐敗防止や行政改革等に取り組んでおり、その中では、公務員の職務遂行能力向上や意識改革が必要とされている。そのため、王立行政学院が中心となり、幹部公務員の育成に加え行政官に対する基本的な能力・知識を付与するための研修制度(コース)の設計等に取り組んでおり、我が国の研修制度等に注目している。

インドネシアでは、次官、局長、部長及び課長レベルへの昇進に当たっては、国家行政学院が実施する研修の受講を義務付けている。これらの研修では、幹部としてリーダーシップを発揮できるよう、職員の技術的・管理的スキルだけでなく、改革を主導する能力の付与を目指している。

マレーシアにおいても、人材育成(研修)に力を入れており、人件費の1%を研修費に充てることが義務付けられ、職員は、年間7日以上研修に参加することとされている。改革のためには職員の意識改革が重要であるとの認識の下、公務員研修所が実施する研修には、公務員として求められる価値、改革を進めるリーダーシップ等の科目を組み込んでいる。

フィリピンでは、人事委員会が研修に関する政策の策定、研修実施に関する調整を行うほか、各省庁の職員を対象とした研修を実施している。官職ごとに適切な能力開発を行うことができるコンピテンシーに基づいた研修の開発に取り組んでいるほか、フィリピン開発学院と協力して上級管理職昇進候補者及び上級管理職の研修にも力を入れている。

タイにおいても、人事委員会の下に公務員研修所を設置し、異動や研修機会の付与等により幹部候補を育成するための各省庁共通の業績向上・潜在能力開発課程の策定、主に幹部養成研修として行われる各省庁共通の研修の実施、研修教材の開発・提供等による各省庁支援を行っている。

ミャンマーでは、グッド・ガバナンス、公共サービスの向上、清廉な行政の実現のため、幹部公務員の能力開発に力を入れており、中央公務員研修所が、我が国の公務員制度、倫理保持のための取組、研修制度等を参考にしながら、マネジメント能力向上や公務員倫理の向上のための研修を実施している。

ベトナムでは、国家を適切に運営する人材の確保のため、特にベトナム戦争後の若手世代における指導者層の育成が必要とされ、計画的に指導者の育成と配置を行うこととしている。その際には、ホーチミン国家政治学院が実施する研修を通じて能力を見極め、選抜に結び付けることとしており、そのため、指導者の育成にふさわしい研修コースの開発・実施が必要とされ、人事院がその一部の開発・実施に協力を行っている。なお、内務省に属する国家行政学院は昇進の条件となる研修を実施している。

韓国では、中央人事行政機関に省庁横断的な研修を実施する研修機関を設け、グローバル化に対応でき、改革を主導できる人材を育成することを主な目的として研修を実施している。

このように、東アジア各国において、まずは政府における人材の底上げを目指す幹部研修又は幹部候補者研修の充実に強い関心があるが、同時に各国とも一般業務を行う担当官の職務遂行能力引上げも課題であるとの認識を持っている。こうした研修等による公務員の人材育成は人事管理上の重要施策となっており、その中核となる研修所が大きな役割を果たしている。


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