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第1編 《人事行政》

【第2部】 東アジア諸国と我が国の公務員制度

第2章 東アジア諸国が公務員制度改革を行う背景

第2節 東アジア諸国が改革を必要としている分野

4 給与その他の勤務条件

給与等の勤務条件を適切に確保することは、公務に優秀な人材を確保するために必要不可欠である。また、国連腐敗防止条約にもあるとおり、腐敗防止の観点からも、適正な給与等の設定の促進が必要とされている。

カンボジアでは、公務員の給与水準が生計費を賄うために十分でないことから、汚職防止や人材確保のため、公務員給与の引上げが重要な課題となっている。

ベトナムや中国でも、汚職防止や人材確保の面から給与水準の確保が課題となっている。

フィリピンでは、①同等な職務に同等の給与、②官民均衡、③継続勤務の動機付け、④最低賃金法の遵守という四つの原則にのっとり給与制度が構築されているが、予算上の制約から、給与水準は民間を下回っており、特に上位の官職で差が大きいとされている。

タイでは、公務員給与が民間を大きく下回っており、人材確保や腐敗防止の観点から改善が求められてきた。最近は給与水準が改善してきているものの、平均して民間より3割程度低い状況にあると見られる。近年、公務員の適切な給与水準の確保等を図るため、我が国が行っているような民間給与調査に基づく公務員給与水準の設定に関心を示している。さらに、最近では、公務員給与制度をより精緻なものとするため、我が国の地域手当制度を参考として、国内各地の生活費に合わせた給与を設定することを検討している。

マレーシアの公務員の給与水準は民間と同等以上とみられており、雇用の安定と併せて、公務の魅力となっている。近年の改革において、昇進機会の増加、職員の動機付け等のため、俸給表の等級及び号俸の増設等の改正を行い、優秀な職員の保持を図っている。

インドネシアの公務員の給与水準は、中堅層より下のレベルでは民間と同程度であるとされるが、幹部層の給与水準は民間より低い。年功重視の仕組みから、より職務・職責や業績に応じた給与システムとすることを目指して、官職分類制度の改革が検討されている。

このように、公務への人材確保、また、倫理保持・腐敗防止の観点から、公務員に対して給与その他の勤務条件を適切に維持することは必要であるものの、予算の制約等、多くの国において悩みが多い。タイ等一部の国では、重点を置いた給与改善を志向する動きも見られる。また、ワーク・ライフ・バランス等、給与以外の勤務条件を追求して人材確保を図る動きも見られる。

経済発展に伴って、長期雇用システムの中で、職務を基本としつつ、ライフステージに応じた処遇を図ること、人事評価制度の着実な実施の中で公正で納得性の高い評価を行い、その評価を給与へ反映させること等、我が国が直面している問題と同様の問題に向き合いつつある国も多く、人事院による国際協力研修の際には質問が集中する論点の一つとなっている。

なお、我が国や欧米各国でみられるような労働基本権を前提とした勤務条件決定システムはいまだほとんど存在していない。


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