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第1編 《人事行政》

【第2部】 東アジア諸国と我が国の公務員制度

第3章 我が国の公務員制度と今後の国際協力

第2節 今後の国際協力・交流の進め方

1 公務員制度の整備等への協力

ASEAN諸国をみると、マレーシアのように公務員制度の整備が進んだ国がある一方、カンボジア、ミャンマー、ベトナム等、公務員制度の基本の整備に取り組んでいる段階にある国もある。公務員制度の基本の整備に当たっては、当該国が他国を参考にしながら、公務員制度の背景、意義、目的、運用、関連する制度について理解を深め、国の発展段階や社会、政治等の状況に対応したものを導入していく必要がある。しかしながら、多くの場合、流動的な労働市場等を前提とした職階制を理想的な公務員制度と捉えており、それを基本とした公務員制度の導入を目指した結果、少なからず混乱が生じている現状にある。

公務員制度の基本の整備を行うに当たっては、いくつかの公務員制度のモデルがあり、それらを参考にしながら検討を進めることが肝要であり、特に東アジア諸国にとっては、地理的にも文化的にも近いとされる我が国の公務員制度はモデルになり得る。

過去5年間に人事院が協力して実施した国際的な集団研修に参加した研修員に対して、我が国の公務員制度についての意見を求める調査を行ったところ、17人から回答があった。「日本の公務員制度は、よく組織され統制されている。採用はとても競争的で、任用は成績に基づいており、ほとんど裁量やごまかし等が入る余地がない。政治的な介入の介在する余地はほとんどないように見える。」(平成24年度上級人事管理セミナー研修員)等、17人全員が、成績主義に基づく公正な人事管理、高い倫理感の確立等を挙げて、日本の公務員制度を高く評価していた。

採用試験に関しては、外部からの圧力が介入する余地がない等公正性・透明性が高く、優秀な人材の採用に役立っているという指摘や、日本のように採用試験により優秀な人材を確保することは良好な行政サービスのために必要であるとの意見があった。

研修等による人材育成に関しては、我が国の研修について、当面の課題のみならず将来の状況に適応できるような人材を育成するものとなっているとの指摘、職員自身が公務員の使命や将来の目標を自覚する機会となっているとの指摘があり、また、自国において研修を政府の優先分野に位置付けるよう提言したいとの意見があった。

公務員倫理に関しては、ほとんどの研修員が日本の公務員の倫理感と倫理保持の仕組みを高く評価しており、また、自国における職員の倫理の保持・向上のため、日本を参考に手続の透明性・説明責任の向上や、倫理研修の充実等に取り組んでいるというものもあった。

給与については、予算上の制約から困難はあるものの、自国の制度の改善を図りたいとするものや、給与制度改革に当たって、日本のように職務と責任、情勢への適応、成績主義といった考え方に基づき検討を進めているとするものもあった。

このように人事院が協力して実施する集団研修の研修員は、総じて研修を通じて我が国の公務員制度や公務員に強い印象を受け、研修の成果を自国で活用しようとする積極的な姿勢がみられた。

今後は、我が国公務員制度について、より積極的な情報発信を行い、公務員制度の基本の整備に取り組む国に対し、一つのモデルとして我が国公務員制度を提示するとともに、主体的に公務員制度を検討していくことを促した上で、そうした国から要請があった場合には、積極的に協力を行っていくことが適当である。

このような制度面での協力のほか、行政運営を支える人材の育成に対する支援の要請があり、人事院はこれまでも開発途上国を対象とする集団研修や国別研修等を積極的に実施してきている。こうした研修についても、制度整備支援との組合せ等を意識しつつ、実施していくことが適当である。


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