第1編 《人事行政》

【第1部】 人事行政この1年の主な動き

第1章 適正な公務員給与の確保

1 勧告・報告等

平成27年8月6日、人事院は国会及び内閣に対し、一般職の職員の給与について報告し、給与の改定について勧告を行った。

また、人事院は内閣総理大臣に対し、級別定数の設定・改定に関する意見の申出を行った。

(1)勧告・報告

ア 民間給与との較差に基づく給与改定

(ア) 月例給

人事院は給与勧告を行うに当たり、毎年、「国家公務員給与等実態調査」及び「職種別民間給与実態調査」を実施し、個々の国家公務員及び民間企業の従業員の4月分の月例給を精確に把握している。その上で、単純な平均値の比較ではなく、同種・同等比較の原則の下、公務の一般的な行政事務を行っている行政職俸給表(一)適用職員と、民間においてこれと類似すると認められる事務・技術関係職員について、主な給与決定要素である役職段階、勤務地域、学歴、年齢を同じくする者同士の給与を対比させ、精密に比較(ラスパイレス方式)を行い官民較差を算定している。

平成27年も、調査の精確性を確保しながらできる限り広く民間給与の実態を把握するという観点から、調査対象事業所を全国の民間事業所のうち、企業規模50人以上、かつ、事業所規模50人以上の事業所とし、その事業所に勤務する従業員の春季賃金改定後の給与実態を把握するため、「職種別民間給与実態調査」を行った。また、「国家公務員給与等実態調査」においては、給与法が適用される常勤職員約25万人の給与の支給状況等について全数調査を行った。

両調査により得られた平成27年4月分の官民の給与について、上述のラスパイレス方式による同種・同等比較を行い、官民較差を算出したところ、国家公務員給与が民間給与を平均1,469円(0.36%)下回っていたことから、民間給与との均衡を図るため、月例給の引上げ改定を行うこととした。改定に当たっては、基本的な給与である俸給を引き上げるとともに、給与制度の総合的見直しを円滑に進める観点から、地域手当の支給割合の改定を行うこととした。

(イ) 特別給

平成26年8月から平成27年7月までの1年間において、民間事業所で支払われた特別給は、年間で所定内給与月額の4.21月分に相当しており、国家公務員の期末手当・勤勉手当の年間の平均支給月数(4.10月)が民間事業所の特別給を0.11月分下回っていたことから、支給月数を0.1月分引き上げ、4.20月分とすることとした。

(ウ) 平成27年の給与改定

① 俸給表

一般的な行政事務を行っている職員に適用される行政職俸給表(一)について、平均0.4%引き上げることとした。その際、一般職試験採用職員の初任給について、民間の初任給との間に差があることを踏まえ、2,500円引き上げることとし、若年層についても同程度の改定を行うこととした。その他については、給与制度の総合的見直し等により高齢層における官民の給与差が縮小することとなることを踏まえ、それぞれ1,100円引き上げることを基本とした。

その他の俸給表については、行政職俸給表(一)との均衡を基本に改定を行うこととした。指定職俸給表については、行政職俸給表(一)の引上げを踏まえ、各号俸について1,000円引き上げることとした。

② 初任給調整手当

医療職俸給表(一)の改定状況を勘案し、医師の処遇を確保する観点から、所要の改定を行うこととした。

③ 地域手当

地域手当の支給割合について、給与制度の総合的見直しによる見直し後の支給割合と見直し前の支給割合との差に応じ、0.5%から2%までの幅で引上げ改定を行うこととした。

④ 特別給

前記のとおり、国家公務員の期末手当・勤勉手当の年間の平均支給月数が、民間事業所の特別給の支給割合を0.11月分下回っていたことから、支給月数を0.1月分引き上げることとした。引上げ分の期末手当及び勤勉手当への配分に当たっては、民間の特別給の支給状況等を踏まえつつ、勤務実績に応じた給与を推進するため、引上げ分を勤勉手当に配分することとした。

(エ) その他の課題

① 配偶者に係る扶養手当

配偶者手当をめぐっては、経済財政諮問会議等の場において、税制及び社会保障制度と併せて、女性の活躍を推進する観点から、女性が働きやすい制度となるよう見直しをすべきとの議論がなされてきており、国家公務員の配偶者に係る扶養手当についても、人事院に対し検討要請が行われている。

人事院では、従来より、扶養手当については、基本的に民間賃金の実態を踏まえて定めることとしており、平成27年の「職種別民間給与実態調査」においては、配偶者の収入による制限等を含め、民間企業における家族手当の支給状況についての調査を行った。その結果をみると、民間では、配偶者に対して家族手当を支給し、その際、配偶者の収入による制限を設ける事業所が一般的であると認められることから、現時点では、扶養手当の支給要件を見直す状況にはないものと考えるが、現在、一部民間企業において、配偶者手当の見直しに向けた検討の動きもあり、人事院としては、今後とも引き続き、民間企業における家族手当の見直しの動向や、税制及び社会保障制度に係る見直しの動向等を注視しつつ、扶養手当の支給要件等について、必要な検討を行っていくこととした。

② 再任用職員の給与

再任用職員の給与については、平成26年の給与法の改正により、公務における人事運用の実態や民間の再雇用者に対する手当の支給状況を踏まえ、平成27年4月から単身赴任手当を支給すること等の措置がとられている。

平成27年の「職種別民間給与実態調査」において、民間事業所における公的年金が全く支給されない再雇用者の給与水準について把握したところ、その給与水準は、当該民間事業所の公的年金が支給される再雇用者と同じであるとする事業所が大半であった。

再任用職員の給与については、民間企業の再雇用者の給与の動向や各府省における再任用制度の運用状況等を踏まえ、引き続き、その在り方について必要な検討を行っていくこととしている。

イ 給与制度の総合的見直し

(ア) 給与制度の総合的見直しの概要

地域間の給与配分、世代間の給与配分及び職務や勤務実績に応じた給与配分の見直しなどの国家公務員給与における諸課題に対応するため、平成26年の給与勧告時の報告において俸給表や諸手当の在り方を含めた給与制度の総合的見直しについての具体的な措置の内容及び実施スケジュール等の全体像を示すとともに、平成27年4月から実施すべき措置等について勧告した。この給与制度の総合的見直しは、平成26年の給与法の改正により、俸給表の水準の引下げに伴う経過措置を講じつつ段階的に実施し、平成30年4月1日に完成させることとなっている。このうち、諸手当の見直し等については、平成26年改正給与法の規定に基づく規則の改正により、年度ごとに段階的に実施されることとなっている。

平成27年度については、平成26年の給与勧告時の報告において平成27年4月から実施することとした諸手当の改定のほか、前記のとおり、平成27年4月分の民間給与との較差を解消するため、地域手当の支給割合の改定を行うこととした。

(イ) 平成28年度において実施する事項

平成28年度においては、職員の在職状況等を踏まえ、以下の施策について所要の措置を講じることとした。

① 地域手当の支給割合の改定

地域手当の支給割合については、平成28年4月1日から、給与法に定める支給割合とすることとした。

② 単身赴任手当の支給額の改定

単身赴任手当の基礎額については、平成28年4月1日から、4,000円引き上げ、30,000円とすることとした。

また、単身赴任手当の加算額の限度についても、基礎額の引上げを考慮して、平成28年4月1日から、12,000円引き上げ、70,000円とすることとした。

このほか、広域異動手当について、平成26年の給与法の改正により、平成28年4月1日以後に異動した職員に係る支給割合は、異動前後の官署間の距離が300km以上の場合は10%に、60km以上300km未満の場合は5%に、それぞれ引き上げられることとされている。

(2)平成27年度に行われた級別定数の設定・改定等に関する意見の申出等

級別定数及び指定職俸給表の号俸は、職員の給与決定の基礎となる勤務条件であることから、労働基本権制約の代償機能を担う人事院が、級別定数の設定・改定及び指定職俸給表の号俸決定方法について所掌していた。しかし、それらは組織管理の側面も持つことから、「国家公務員法等の一部を改正する法律」(平成26年法律第22号)により改正された国公法及び給与法(以下「改正国公法等」という。)において、内閣総理大臣の所掌に属するものとされ、同時に、代償機能が十分に確保されるよう、内閣総理大臣は、職員の適正な勤務条件の確保の観点からする人事院の意見を聴取し、これを十分に尊重することが定められた。

平成28年度級別定数の設定・改定等に際して、人事院は、平成27年8月末の各府省要求に始まる予算編成過程において、労使双方の意見を聴取するとともに、処遇に関して職員構成の変化による世代間の不公平や府省間の不均衡が生じないこと等に配慮しつつ、級別定数の設定・改定等に関する案を作成し、同年12月に予算概算閣議決定に対応する意見の申出を行い、平成28年3月に内閣総理大臣通知に対応する意見の申出を行った。

一方、平成27年度の年度途中において政府が行った機構の新設及び定員の増減等に対応して、人事院は、指定職の号俸の決定及び級別定数の設定に関する意見の申出を計8件行った。

また、「指定職の運用について」(平成26年5月30日内閣総理大臣決定)又は「級別定数の運用について」(平成26年5月30日内閣総理大臣決定)において、各府省が指定職の号俸や級別定数を運用する際に、各府省から申出があり、特別の事情から人事管理上やむを得ず内閣総理大臣決定の定める基準により対応することが困難と認める場合、内閣総理大臣は一時的に別段の運用を定めることができるとされ、その場合にはあらかじめ人事院の見解を聴いてこれを反映するものとされている。平成27年度において、人事院は指定職の号俸の運用に関する見解の申出を計5件行った。