第1編 《人事行政》

【第1部】 人事行政この1年の主な動き

第4章 人事行政分野における国際協力及びIT化の推進

1 国際協力・国際交流

(1)開発途上国等に対する技術協力

人事院は、開発途上国の公務員制度改善を支援するため、JICAが主催する開発途上国政府職員を対象とした国際的な集団研修の実施等に協力するほか、要請に応じ個別の国への支援を行っている。その一つとして、平成24年度末から人事院は、JICAを通じ主に幹部職員育成を行うベトナム中央研修機関であるホーチミン国家政治学院(HCMA)が副大臣級候補者503人を対象に3か年計画で初めて実施する「国家指導者候補者研修」(合計6コース)に対して支援を行ってきた。

具体的には、幹部行政官OBや学識経験者等をベトナムに派遣し、公務員制度のほか、水資源管理、産業政策、運輸交通インフラ、租税政策、環境保全、国営企業改革をテーマに、公務員研修所の有するこれまでの蓄積やノウハウをいかし講義や演習等を行った。さらに、ベトナムの経済発展に資する政策課題に関する知見を深める機会を東京及び地方調査見学等で広く提供し、併せてその背景にある日本社会・文化への理解を深めることをねらいとし、ベトナムでの研修の成績優秀者上位25%に当たる各コース約20人(合計113人)を対象とした約10日間の訪日研修の企画立案支援と受入れを行った。平成27年11月に行われた第6回訪日研修をもって、3年間に及ぶ国家指導者候補者研修の全てのコースへの支援は終了した。

今回の支援については、訪日研修の満足度が平均して約98%となるなど参加者から非常に高い評価を得た。また研修修了後、訪日研修受講者113人の中から30余人が中央委員会委員に選出されたほか、参加者が実際に講義内容を参考に国内の担当施策を改善したという例や、参加者の提案等により同様の研修を多くの地方政府レベルでも実施し始めている、参加者の会合が定期的に開催されているといった報告もある。

また、国家指導者候補者研修への支援と併せ、人事院はHCMAの研修実施能力強化の取組への支援として、平成25年度及び平成26年度に計2回職員をベトナムに派遣し、公務員研修所の有するノウハウをいかして学院講師陣25人に対し研修の企画・運営等に関する研修を、平成27年度には総括としての訪日研修を実施した。今後HCMAでは、人事院からの支援を踏まえた研修実施能力強化の取組を学院全体に広げていくこととしている。

(2)日中韓協力における人事行政分野の取組

人事院は、平成16年11月の日中韓首脳会議(小泉総理、温家宝総理、盧武鉉大統領)において承認された「日中韓三国間協力に関する行動戦略」に基づき、人事行政分野の協力枠組みとして、中国、韓国の中央人事行政機関(中国人力資源・社会保障部、韓国人事革新処)と日中韓人事行政ネットワークを構築しており、日中韓協力の一翼を担っている。

本ネットワークは、文化面で類似性の高い日中韓三国において、人事行政分野における緊密な連携及び相互交流を進めることにより、それぞれの国において今後の人事行政の検討に役立てていくことを目的としており、三国若手・中堅職員合同研修などの行政官の交流や三国共催シンポジウムなど各種の協力事業を行っている。

平成27年9月1日、三国の人事行政機関の長(一宮なほみ人事院総裁、李根勉(イ・グンミョン)韓国人事革新処長、信長星(シン・チャンシン)中国人力資源・社会保障部副部長)が5年ぶりに一堂に会して日中韓人事行政ネットワーク・第7回トップ会談(於:韓国・ソウル)が開催された。会談では、一宮人事院総裁は、ネットワーク発足以降、この協力関係により、三国間での人事行政に関する知識・経験の共有や、職員の国際的視野のかん養が進んだといった成果に言及するとともに、三国がこれからもより良い人事行政を展開していけるよう協力関係を強化していきたいと述べた。また、中国、韓国の人事行政機関の長とともに、「公務の専門性の強化」に関し、それぞれの国における取組について紹介しつつ意見交換を行った。三国の人事行政機関の長は、本ネットワークのこれまでの成果を高く評価し、人事行政分野における三国間の協力関係を更に進めていくことで合意した。

(3)マンスフィールド研修

マンスフィールド研修は、日米両国の友好関係の構築に尽力されたマイク・マンスフィールド元駐日米国大使にちなんで創設されたものであり、日本について深い理解を持った次世代の米国連邦政府職員を育成することを目的とし、平成6年4月に米国連邦法として制定されたマイク・マンスフィールド・フェローシップ法に基づいて、米国国務省により実施されている。翌平成7年から開始され、平成27年で20周年を迎えた。同年6月には、第19期研修員10人が日本での研修を無事終了して帰国し、同年7月には第20期研修員10人が来日し、それぞれの配属先で研修を開始した。

これまで25の米国政府機関と米国議会から、合計130名の研修員(第1期〜第20期)が研修に参加している。

研修員は、約2か月間の石川県でのホームステイの後、約10か月間、日本の政府機関等において、日常の業務に接しながら、日本語を使って研修を受けることとなる。研修員の日本での受入機関は、政府機関、国会議員事務所、地方公共団体、民間企業等と多岐にわたっている。

人事院は、外務省と協力し、研修員の各府省等への受入れの協議・調整をはじめ、オリエンテーション、調査見学旅行、公務員研修所の実施する行政研修への参加等の共通プログラムの企画・実施を行ってきた。

本研修の成果について、研修員からは、配属部署で良い人間関係が構築できた、日本の立場を理解できた、より良い日米関係の構築に有意義で重要である等、また、受入機関からは、研修員を通じて米国政府の考え方を理解でき、日米双方にとって有意義なものである等の声が多く寄せられている。また、研修に参加した多くの研修員は、研修終了後も在日米国大使館、米国通商代表部、財務省、商務省、司法省などをはじめ、米国連邦政府職員として政府機関に勤務している。