第1編 《人事行政》

【第2部】 在職状況(年齢別人員構成)の変化と人事管理への影響

第1章 国家公務員の在職状況(年齢別人員構成)の変化と課題

第2節 在職状況の変化がもたらす課題

2 本府省における課題

今回、1府9省の本府省で勤務する職員の人事管理を担当する部局(職種等の別による人事グループごとに15部局)を対象に行った聞き取りの結果によると、本府省に特有の人事管理上の問題があることが明らかになった。例えば、早期退職慣行の見直しや在職期間の長期化の影響で50歳台の職員が滞留し、管理職層を中心に「上が詰まって昇進が従来より遅れる」という問題を指摘する意見や、平成13年の中央省庁等改革以降、内閣機能強化のため各府省から内閣官房等への出向が増加し、そのことが各府省本体の人材確保に影響を与えている等の意見が多かった。

これらの問題は、本府省における幹部職員の退職管理や本府省の業務体制の変化に起因するものであり、以下のように、本府省の幹部職員及び幹部要員の人事管理を中心に顕在化している。

(1)在職期間の長期化による若手・中堅の士気や組織活力への影響

近年、早期退職慣行の是正のための幹部職員の勧奨退職年齢の段階的引上げ(平成14年12月17日閣僚懇談会申合せ)、各府省人事当局による再就職あっせんの禁止(平成19年改正国公法)、独立行政法人等の役員人事について公務員OBが就いているポストの後任者を任命する場合等の原則公募による選考の導入(平成21年9月29日閣議決定)等の措置が講じられてきており、平成25年11月には国家公務員退職手当法施行令の一部改正により、勧奨退職が廃止されるとともに、早期退職募集制度が導入された。そのため、現在では、定年前に勧奨を受けて退職する管理職員や幹部職員はいなくなり、定年退職者や地方公共団体等への辞職出向者を除くと、自己都合による辞職者や早期退職募集制度を利用した辞職者のみとなっている(指定職及び本府省課長級(行政職俸給表(一)8級以上)の辞職者数(定年退職者は含まれない。):平成17年度551人→平成26年度431人)。

こうした状況の下で、管理職員や幹部職員の平均年齢が上昇し([指定職]平成17年54.8歳→平成27年56.4歳、[本府省課長級](行政職俸給表(一)9級)平成17年50.6歳→平成27年53.3歳、(行政職俸給表(一)8級)平成17年50.4歳→平成27年52.4歳)、上位役職のポスト不足もあって昇任までに要する勤務年数が従来よりも長くなっており(指定職の年齢層別在職者数に占める56歳以上60歳未満の人数:平成17年204人→平成27年426人)、職員の新陳代謝が進まない中、昇進の遅れにより若手・中堅職員のモチベーションが低下し、高齢層職員の活用範囲が限られていることによる組織活力の低下が危惧されている。

(※)行政職俸給表(一)の9級及び8級は、平成18年4月の級構成再編前はそれぞれ11級及び10級である。

(2)本府省採用者の採用抑制等の影響

(採用抑制)

平成9年から平成13年までにかけて行政改革の一層の推進を図るため政府全体として国家公務員採用Ⅰ種試験による採用者数の3割縮減策を講じたことから、各府省におけるこの期間のⅠ種試験採用者は前後の年次と比べて数が少ない状況にある。これらの世代が現在、管理職昇任期を迎えているため、この年齢層の人員構成上の凹みにどう対処するかが課題となっている。この時期に国家公務員採用Ⅱ・Ⅲ種試験の採用者数も抑制した府省では、現在、中堅係長級や課長補佐級の職員が不足しており、同様の課題が生じている。

(地方機関を持たない府省)

地方機関を持たない府省は、定員の純減や新規採用の抑制を行う際に本府省の新規採用者数を抑制していることから、20歳台を中心に若年層の少ない人員構成になっているところがある。こうした府省では、これらの世代の職員は、本府省において自府省採用の職員を就ける必要のある枢要なポストに配置するだけの人数的な余裕しかなく、外部への出向や研修機会の付与など計画的に多様な経験を積ませて育成を図る人事管理上の余裕がないという問題がある。

(所管組織の独立行政法人化等)

本府省への人材供給源になっていた所管組織が非公務員型法人化された府省(例えば文部科学省の国立大学や厚生労働省の国立病院)や廃止された府省(例えば厚生労働省の社会保険庁)では、人材供給源そのものがなくなったり、法人化により人事の自律性が高まったことにより、府省と法人との間で人事交流を行う際にお互いが派遣や受入れを希望する職員の年齢層にミスマッチが生じたりするようになってきている。その結果、本府省における人員構成上の谷を埋めてきた人材の供給を思いどおりに受けにくくなる、逆に職員を法人に出向させて現場勤務の経験を積ませる機会が減少するといった影響が生じている。

(3)学生や職員の地元志向等

少子化の中で一般職試験の受験者層を中心に学生の地元志向が強まっており、各府省の中には地方出身者の本府省への採用が難しくなったとの声がある。地方機関においても、転勤を嫌って学生がより転勤の少ない地方公共団体などへの就職を優先する傾向が強まっていると言われている。また、学生に国家公務員として働くことの魅力や国の職場の魅力が十分に伝わっていないこと、民間企業と比べた場合に採用試験に対する負担感が大きいことなども、地方公共団体や民間企業に人材が流れる要因となっていると言われている。

職員の中にも親の介護や持家問題などから出身地に近い所で勤務したいと考える者が増えている。地方機関採用者を本府省に異動させようとする場合や地方機関採用者で本府省勤務を一定期間経験した者に対し引き続き本府省での勤務を打診する場合に職員の説得に苦労するようになってきているほか、本府省で採用した職員が家庭の事情等により地方機関への赴任を忌避する傾向も強まっていると言われている。

(4)国会対応等の業務負担や長時間残業の問題

本府省では、行政課題の複雑・困難化、IT化による業務の緻密化、業務の多角化等により、業務量が増加している。これに加えて、国会対応等の他律的業務の負担が大きく、深夜に及ぶ残業も珍しくない状況にある。子育て中の職員も増加する中、仕事と家庭の両立という面では、こうした長時間労働慣行は見直される必要があると認識されているものの、実効性のある対策が課題であると言われている。また、そうした勤務環境の下で心の健康の不調の問題による長期病休者や離職者が発生すると、職場の人手が更に不足して周囲の職員にしわ寄せがいくという悪循環がある。