第1編 《人事行政》

【第2部】 在職状況(年齢別人員構成)の変化と人事管理への影響

第3章 在職状況の変化がもたらす課題と人事管理上の対応

第2節 課題と人事管理上の対応

3 働き方の改革と勤務環境の整備に関する課題

限られた人的資源の下で職員一人一人の能力を十全に活用し、効率的な職務遂行を推進するとともに、公務で働くことの魅力を高め、有為な人材を確保する観点から、働き方の改革と勤務環境の整備は喫緊の課題であり、ワーク・ライフ・バランスの推進を通じて、心の健康の不調の発生や若年層の離職の防止、公務における女性の活躍推進にも資するものである。

(1)両立支援制度を通じた勤務環境の整備

今後、女性職員の在職者比率の高まりが想定される中で、育児中の職員が育児を理由に自身のキャリア形成を諦めることなく、職場の中核人材として育っていけるような働き方の実現が必要である。そのためには、育児責任を担う職員が育児休業等の仕事と家庭の両立支援制度を利用しやすい職場の環境づくりを進めることはもとより、育児休業終了後の円滑な職務執行のための支援の充実や育児中の職員のキャリア形成の在り方も考えていく必要がある。また、女性職員に育児責任が偏らないよう、夫婦で両立支援制度の利用を考える機会を設けるなど、男性職員の育児参加や両立支援制度の活用促進を図ることも必要である。

また、今後は、男女を問わず、育児のみでなく介護責任を担う職員が増加すると想定され、公務の職場全体が、時間や場所に制約があっても引け目を感じることなく勤務を継続できる環境を整備していくことが重要となる。このため、より多くの職場でのテレワークの導入や職員のフレックスタイム制の活用等、柔軟な働き方の実現に取り組む必要がある。

なお、仕事と家庭の両立支援策が十分機能するためには、制度を整備するのみでなく、当該制度やその活用方法等の周知、職員が相談できる体制整備等も重要となる。特に介護については、介護をしていること自体を周囲に伝えていない職員も多いため、介護サービスや介護のための両立支援制度について、職員を対象とするセミナーの開催等により積極的に周知するとともに、両立について具体的に相談できる場を提供する等の取組も進めていく必要がある。

また、職員が実際に両立支援制度を利用できるようにするためには、勤務できないときの仕事を他の職員により円滑にカバーする体制の整備も必要である。

人事院においても、平成28年4月から、産前産後休暇に引き続き育児休業を取得する職員の代替職員の公募・採用の手続を円滑に行うことができるよう制度を整備した。今後とも、両立支援制度の利用促進に向けて、産前産後休暇等の取得実態に応じた定員の拡充や任期付職員等の各種代替職員制度の活用が進むよう、政府全体として取り組む必要がある。

介護に係る制度についても、今後の職員の介護の状況や各府省におけるニーズ等により、必要な代替要員を確保し得る制度について検討することが考えられる。

さらに、職員の働きやすい環境を整備するに当たっては、管理職員の意識改革を行うことが不可欠である。このため、人事院では女性職員が働きやすい勤務環境整備に係る管理職員の意識啓発の機会を提供する研修を実施するなどの着実な取組を引き続き実施する。また、民間企業では、例えば、使用しなかった年次有給休暇の活用を行うなど、両立支援策をサポートする様々な仕組みを工夫していることから、その取組等を参考としていくことも考えられる。

特に、女性職員が活躍できる環境整備には、妊娠・出産・育児等の制度の利用に関する言動によって勤務環境が害されるマタニティ・ハラスメントや、女性職員が被害者となるケースが多いセクシュアル・ハラスメントの防止も重要であり、いわゆるパワー・ハラスメント(以下「パワー・ハラスメント」という。)も含め、ハラスメント防止対策を講じていく必要がある。

(2)長時間労働慣行の見直し

長時間労働慣行の是正は、職員の健康保持の観点からも、ワーク・ライフ・バランス推進の観点からも重要な課題であり、管理職員はもとより、職員一人一人が、長時間労働は見直さなければならないものであるという強い意識を持ち、超過勤務縮減のための取組を主体的かつ継続的に行っていくことが必要である。

具体的には、超過勤務の必要性の精査を踏まえた事前の超過勤務命令等の勤務時間管理の徹底、意思決定過程の簡素化、業務の合理化・効率化等の取組を引き続き推進していく必要があり、これらの推進に当たっては、職員の積極的参画の下、管理職員が率先して取り組むことが重要であるため、その意識改革やマネジメント能力の向上も図っていく必要がある。また、人事院が平成26年に一般職国家公務員に対して実施した「超過勤務に関する意識調査」では、現在の部署で業務量に対し十分な職員(部下職員)が配置されていない、又は繁忙期には足りないとする割合が高かったことを踏まえれば、業務量に見合う定員の確保、業務の平準化や本府省と地方機関との間の職員配置の適正化も含めた柔軟な人員配置の工夫等にも努める必要がある。

恒常的な超過勤務は職員の健康保持にも影響を及ぼすものであり、長期病休等の要因ともなり得るものであるため、超過勤務の多い職員には、定期的な健康診断の受診の徹底や面接指導の実施等、特に健康保持への配慮を行う必要がある。今後、終業時刻から次の始業時刻までの間隔の最短時間を規制するインターバル規制や、超過勤務時間の上限規制等について、適切な公務運営の確保を前提としつつ、導入の必要性について研究することも考えられる。

なお、長時間労働慣行の見直しに際しては、1日の勤務時間を短縮することのほか、年次休暇の取得を促進することも重要である。業務繁忙な部署でも計画表の活用や職員間での情報共有等の工夫を行い、少なくとも毎月1日は取得できる環境整備等、年次休暇の取得促進にも取り組む必要がある。

(3)働きやすい職場環境整備の推進

各府省人事当局からの聞き取りや職員アンケートにおいて、年齢別人員構成の偏りが、職場内のコミュニケーションを困難にし、業務遂行や技能継承の支障にもなっているとの意見があった。異なる背景を持つ職員間であっても、気軽に声かけ、相談、情報共有ができ、心の健康を維持できる職場環境づくりは、良好な職場の人間関係にもつながるものと考えられる。そのための今後の課題として、まず、ストレスチェック制度において努力義務とされている集団ごとの集計・分析及び職場環境改善の取組の中で、職場内のコミュニケーションの活性化を図るとともに、長時間労働慣行や業務遂行方法(サポート体制・適切な裁量権の付与等)等の見直しを含めた心の健康を保持・増進できる職場環境づくりを行うことが挙げられる。

また、職場の人間関係などに悩みを抱える職員が匿名で専門家に相談できる「こころの健康相談室」については、その周知を行うことと併せて、セクシュアル・ハラスメントやパワー・ハラスメントなどに関する悩みを持つ職員のうち心の健康に不安を抱える職員の対応についてセクシュアル・ハラスメント相談員や各府省の相談窓口等との連携を進めることも重要である。

さらに、心の不調から病気休暇・病気休職を取得した職員の職場復帰に関しては、療養期間中における職員・職場間の連絡体制の整備など職員への対応方法に関する周知・啓発を行うことや、復帰後の直属の上司によるケアを推進することも考えられる。

なお、人事院では後輩職員の育成のための先輩職員のコミュニケーション技法をメンター養成研修で提供するなどコミュニケーション力を高めるための研修の提供等を行っており、各府省人事当局においてもそうした育成機会を自ら提供する等の取組を進めていく必要がある。

諸外国における勤務環境整備の取組

英国、米国、ドイツ及びフランスでは、職員が、子育てや介護等、人生の様々な段階にあっても仕事と家庭を両立しながら継続して勤務できるよう、短時間勤務、フレックスタイム、テレワーク、ジョブ・シェアリングなど多種多様で柔軟な勤務形態が導入されている。なお、こうした柔軟な勤務形態の整備は、家庭生活と職業生活の両立を重視する若い世代の人材確保や職員のモチベーションの向上にも寄与していると言われている。

例えば、英国では、柔軟な勤務形態は一般的に活用されており、全政府職員の25%が何らかの制度を活用して短時間勤務の形態で働いている。また、同じく一般的に柔軟な勤務形態が活用されているドイツでは、管理・幹部職での短時間勤務も推進されており、課長級以上の短時間勤務が皆無という省もあるが、管理・幹部職の23%が短時間勤務を行っているという積極的な省もある。

一方、このように柔軟な勤務形態が広く活用される中、ドイツでは、課の一体感の醸成やコミュニケーションの確保、公平な職務分担、公正な評価といったことが課題となっており、管理職のマネジメント能力の重要性が一層増している。