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シンポジウム 第1部 森田講師プレゼンテーション

 

Morita_1.png 行政学の観点から信頼性の問題をどのように見ることができるかを簡単に話そうと思う。
Morita_2.png ●「空気」の支配 -官僚バッシング
私は、山本七平さんの本(「空気」の研究、文春文庫)を素材に、現状を批判的に見直してみるゼミを行っている。この「空気」にどのようなものがあるか学生に聞いてみると、挙がってくるのは「官僚バッシング」であり、「官僚はそれでも頑張っている」とは言えないのが今のわが国の「空気」である。

 

●現代国家の行政
最初に統治機構の枠組みが出来た18~19世紀の時代とは異なり、今は、誰もが薬も水も安心して飲むことができ、建物も地震が来ても大丈夫と思っている。こうした我々の安心安全な世界は、非常に複雑な行政の日常的活動によって支えられており、このような状態になってきたのは20世紀半ば頃からである。
こういった活動がしっかりしていて初めて我々の生活が成り立つ。このことを指摘しているのはマックス・ウェーバーである。革命というのは起こり得ない。破壊することができない仕組み、すなわち官僚制が成り立っているというのである。

 

Morita_3.png ただこうした仕組みを管理している人々は、大きな権力を持つ可能性がある。だから民主的統制が必要だということを行政学は論じている。歴史的にもそうで、民主的統制はいわゆる政治任用の乱用などを引き起こす可能性があり、他方、行政官の専門性や独立性が高くなるとディレッタントな世界が構築されてしまう。

 

Morita_4.png ●戦後日本の官僚制
戦後の日本の官僚制が非常に高いパフォーマンスを示したというのは確かだと思う。それが可能だったのは、一般にも言われるように、右肩上がりの経済の中で増えたパイの分配というのが政策課題だったからである。そこでは、負担の部分を誰に我慢をしてもらうかを交渉の中で説得をしていくという、政治の本来の機能を出す必要もなかった。したがって、行政側は中立という側面を前面に出しつつ、政治とは距離をおいて、まさに官僚たちの夏で描かれている国士型官僚が政治とは別に力を発揮することができた。

 

Morita_5.png ●潮目の変化
潮目の変化があったことをうまく見ることができなかったのが問題ではないか。国際化が進んで日本の産業構造が大きく変わり、バブル経済が崩壊してしまった結果、右肩上がりどころか、むしろ現状維持か右肩下がりになってしまった。ところが、国民は右肩上がりを期待し続けてきた。そのため、様々な問題が起こってきた。
例えばパイの増分を取り合っていた各省が競争できなくなり、逆に縄張りを守ろうとして固まるようになる。国民の側も、今まで良くなってきていたのに今度は良くならないということで、「政策が悪い、やっている人が悪い」と理由付ける。また、民主的統制に関して、政治の側から我々こそ民意を受けているという主張が出てくる。
ただ、それに対して行政組織の側も自ら改革して環境に対応してきたわけではない。縦割りもキャリアシステムについても、外から見ると、組織と既得権を維持しようとするイメージでとらえられるようになり、そこから非常に強い不信というものが出てきた。

 

Morita_6.png ●行政に対する「信頼性」喪失の原因
その原因は何かというと、第一点は、これまでの官主導がおかしいのではという批判。内閣機能の強化という形での制度改革が出てくるのもその延長にある。もう一つは不祥事の頻発で、これは弁明できるものではないのは勿論であるが、組織一般の話としては、モラルを保つにはそれなりのインセンティブ構造が必要である。きちんとしたキャリアパスがそれだというと誤解を招くかもしれないが、メリットがあれば自己抑制が働くのだが、今はそうなっていない。これは悪循環の始まりかもしれない。
問題が起きるのが、行政のパフォーマンスによるのか、もとからの制度によるのか、その辺りも必ずしもはっきりしない。例えば行政改革ブームで、参入規制が取り払われた。これは性善説では成り立たない仕組みであり、きちんとしたモニタリングとチェックが必要なのだが、日本の場合にはチェックの部分については、行政改革に反するというので強化しなかった。その結果悪い人が喜ぶ仕組みになっている。事故米や建築偽装の問題もそうである。さらに、メディアは、最初に一定のイメージで打ち出すとそれを簡単に変えようとしない。メディアは常に正しいという前提で貫こうとするから、その傾向をもつメディアを覆すことは難しい。その典型は社会保険庁である。

 

Morita_7.png ●どうすべきか? -信頼回復の方法
それでは信頼を回復するためには何をすればよいか。まず、行政内部から今までの仕組みなどを見直す必要がある。二番目は、しばらく時間がかかるが、しかし我々の世界というのは水面下にある氷山にやはり支えられているのだから、段々と国民の目もそこに向いてくるのではと考えられる。これは待つしかない。気をつけなければならないのは、行政が政治主導を意識しすぎて、政治化されることである。
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