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シンポジウム 第1部 橋爪講師プレゼンテーション

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 私は社会学の視点からお話する。社会学は実は行政についてあまり絞りこんで論じていない。ウェーバーのいう官僚制は、行政官庁だけの議論ではなく、民間組織も含めている。行政官庁だけについて、信頼の観点から考えていく。

  • 信頼とは
     信頼が失われているらしい。どういう条件によって国民が文句を言うようになったのか、いろいろ原因があろうが、一つは情報の問題が大きい。明治などの昔は、重要な情報は政府に集中していて、一般の国民の間にはほとんどなかった。だから議論をしようにも材料がそもそもなかった。最近は、インターネットで中学生・高校生や主婦が手に入れることのできる情報と、官庁で現場の官僚が手に入れる情報は本質的に同じである。官僚は忙しい。一方、暇な民間人はたくさんいるので、ここがおかしいというのはすぐ分かる。そこで、国民は文句を言い出した。
     行政府に対する信頼があるのは望ましいことだが、それはなぜか。信頼は、主権者たる国民と行政府との関係なのだが、国民の側から見るなら、自分たちが直接間接に行政府をコントロールできているという感覚が持てること。それが失われるとき、信頼も失われる。行政の能力やパフォーマンスとは違う次元の問題だ。読売の世論調査でも、人びとは官僚が優秀であることを期待しているのに、信頼がない。自分たちと関係ないところで役所が勝手に動いているのでは、という危惧があるのだ
  • 信頼の枠組みとは
     行政府に対する国民の信頼の枠組みが、憲法である、ここが、民間企業と違うところ。一般の人びとと企業は、商品購入という民法上の契約で結びつく。その限りであって、それ以上ではない。政府は違う。政府は公共サービスを、税金を使って提供している。国民の負担の上に成り立つ活動だから、国民は主権者として、単なるステークホルダーである以上の関心を寄せる。しかも、行政サービスは、担当部署だけが提供するもの。政府に同じことをやる部署が2つ以上あれば、病理的である。逆に私企業では、同じことをやっている同業他社が必ずあり、パフォーマンスの差で競争と淘汰がおきる。政府機関にはそういう論理が成り立たない。政府機関は行政サービスや権限を独占している。これをどうチェックし、効率化するか、競争以外のメカニズムで考える必要がある。ではどういうメカニズムかというと、その大枠を決めているのが憲法だ。
     憲法は、国民が行政府を設置し、行政府はかくあるべきだと規定する、契約である。これは統治契約で、行政は何をすべきかを定める。この契約は、民法と違い、対等でなく、上下関係(主権者の命令)である。だから、そのもとにある公務員はservantといって、奴隷とでも訳すべき、公僕である。憲法は、公務に就く人間への命令なのだ。そこで公務員は憲法に忠実であると誓約しないといけない。この契約が守られていることが、国民の信頼の根本である。皆さんも、公務員になったときに誓ったはず。アメリカでは4年に一回、大統領の就任式で、繰り返し忠誠を誓っている。忠誠を誓うとは、契約の再確認であることを認識するのが大事である。
  • 信頼がゆらぐのは
     具体的に、どのように主権者の権利を発揮するかだが、それは、間接的なコントロールである。まず、立法府(国会)によるコントロール。法律、予算によるコントロール。さらに、マスメディアによるコントロールも合わせ技となって、行政の現場を統制する。でも、直接的ではないので、うまく機能するには条件が必要である。その条件がはたらいていないのかもしれない。
     法によるコントロールは、表向き守られている。行政府のパフォーマンスのよしあしは、まああるレベルでクリアしているだろう。
     問題は、行政府の各組織の存在や活動が自己目的化していること。各省庁の予算や権限を守るという、役人の基本的な行動パターン(いわば、本能)があるが、それが国民の利益にかなうことなのか、徹底した検証が必要になる。
     国民が行政府をコントロールできていないと感じる場合。国民は、政治を介して行政府をコントロールするしかない。だからそこではおのずから政治の役割は非常に大きい。
  • 信頼を回復するのは
     政治の役割で大きいのは、政権交代。そしてマニフェスト。これが戦後、長らくうまく機能していなかった。政権交代が起きれば、行政府の人びともしばらく新しい経験をすると思うが、日本の民主制にとっては新しいチャレンジであり、これにうまく対応することが、行政府の信頼を回復するチャンスになる。私も注目している
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