アクセス サイトマップ

シンポジウム 第2部 林講師プレゼンテーション

第1部で先生方がお話しくださった内容に関連してお話させていただく。

  Hayashi_2.png
Hayashi_3.png
●信頼の喪失の背景にある構造要因
いろいろ不祥事があって信頼が失われたわけだが、過去にもロッキード事件やリクルート事件はあった。ここへきて行政への信頼の低下に直結しているのは、90年代以降の経済政策の失敗で、官僚機構に任せられなくなったこともあるのだろう。
90年代に何が起きたのか。グローバリゼーションやITの導入で、経済活動の範囲が大きく広がり、情報があっという間に飛び交うことになった。したがって、企業も国民経済も、速く激しい変化に巻き込まれざるを得なくなった。たとえばIBMなどの大企業がBest and brightestを集めても、変化を読みきることはできない。最近の典型的な例で言うと、FTTHで Fiberにみんなこぞって投資したが、今度はADSL、その次はワイヤレス通信が主流になっていく。変化は読み切れるものではなく政策も一定の失敗を前提に考えないといけない。
その場合、人は流動化せざるを得ない。その人材を、どう次の職場につなげていくかが重要になる。さらに、そういう思い切った判断をしてリスクを取らないと、経済の成長や企業の成長は見込めない。失敗すれば責任を取ってトップが交代して思い切った転換が出来るようにする必要がある。このような柔軟なシステムを国民経済全体として持てるかをめぐって、国家間で新しい制度間競争をしている。「官僚たちの夏」の時代のようにBest and Brightestを集めて考えればすむのではなく、市場への介入をやめマーケットの声を聞くこと、リスクをどう管理するかということが大事にと変わってきた。ところが、残念ながら、これまでの日本の政策形成システムはそれには応じられなかったということだろう。

 

Hayashi_4.png ●政策決定過程における硬直性
日本のシステムでは、政策は、省庁ごとに縦割りで、それぞれの審議会、与党プロセスを通じて固められ最終的に閣議で決定されてきた。その際に、審議会の中にいる利害関係者、族議員をはじめとする与党の政策関係者、あるいは他省庁を含めて誰も反対しないという、完成されたコンセンサスシステムを官僚機構が運営する中でことが決められてきた。ここでは利害関係者に政治的レントができ、何か変えようとすると反対なり干渉が出てくる。これに対して、中曽根さんのときから官邸スタッフが充実されはじめ、官邸が積極的に各省の調整をしたり、イニシアティブを取って間を埋めようという動きが始まった。

 

Hayashi_5.png
Hayashi_6.png
●ガバナンスシステムとその変化
明治以来、エリート官僚制の下、各制度官庁が力を持って、派閥という分権構造を前提にコンセンサスシステムを守ってきた。それが細川政権になって、中選挙区が小選挙区になり、派閥の長の力の源泉が失われてきた。そして、橋本政権で、内閣官房あるいは内閣府という総理のスタッフが大きく拡大した。小渕政権で情報公開法ができたが、これが実は本質的な一番大きな転換期になった。大きく見るとこのような変化があった。
リスクマネジメントは、企業が経営の失敗や粉飾決算などで、株主が知らないうちに株価が損われるのを、どう回避していくかということが出発点だった。株主がどうCEOをコントロールするか、CEOが各部局をどうコントロールするか、各部局がそういったリスクに対してどのような対応をするかという3層の構造になっている。
もちろん企業と政府の場合では違うが、国民が最高行政執行者との関係をどうするのかから始まる。日本の古いシステムでは、国民は中選挙区制の下で自民党の各派閥に属する議員を選んで、彼らがその後トップを選ぶという間接的な関係になっていた。その際派閥間の調整で首相を選択していた。それが、小選挙区制のもとでの2大政党になってくると、トップの選任は議員任せというのでなく、国民はマニフェストで政党と党首を選択することになる。次に、選ばれた党首が大臣を選任し、大臣はその政策方針を受けて行動し、官僚を内部統制していくのだが、その統制システムが今の行政機構では非常に弱い点がある。

 

Hayashi_7.png ●信頼の回復へ
最後に、官僚機構がリスクにどのように対応すべきかということだが、基本はやはり合理的な政策を立案するということだろう。ドグマではなく、エビデンスに基づいた、費用対効果をデータに基づいた政策と政策資源配分を主張するところに一番の基本があるのではなかろうか。そういう観点からの専門家集団という部分はどのような体制になっても残るし、必要でもある。そして、政策決定プロセスについていえば、やはりこれまでのようにガチガチのコンセンサスを得ることには無理がある。例えば、先日の地球環境問題のように、選択肢を幅を持って出し、リーダーがそれを選ぶというような新たな取組みが出てきている。合理的な選択ができる政府となってほしいということは、「合理的」と「選択」の両方とも必要ということである。執行面では「中立」ということが必要になる。
70年代から米国でsunshine actというのができた(注:1976年政府サンシャイン法のこと、情報公開法)。これから学んだことは合理的な行政には情報公開が最大の武器だということだった。これがメディアを通して国民のリテラシーを上げるし、シンクタンクなどを通じて政策の選択肢の幅を厚くした。日本でも情報公開は非常に大きな役割を果たしていくと思う。
公的部門へのリスク管理の導入が、イギリスやカナダで図られている。これは、国家全体のリスクを分析し、その可能性と被害の大きさを評価し、それに対して優先順位をつけた上で一番合理的なかたちでそれを最小にする方法を確定し、それを実行していくという合理的政策へのマニュアルのようなものである。また、リスクの大きさと国民の知見のレベルを考えた上で、どうコミュニケーションをするのがよいのかも研究されている。「合理的政策立案」を確立するにはそういう合理的な手順にそったリスクマネジメントの手法や国際的なbest practiceを、人事院が行っている研修などで共有するなど、いろいろな方法でバックアップすることが重要である。
研修 合同初任研修 初任行政研修 3年目フォローアップ研修 課長補佐級研修 課長級研修 特別課程 幹部行政官セミナー 行政フォーラム
その他の情報 連絡先・組織