シンポジウム「行政の未来を考える -信頼の回復に向けて-」要旨
人事院公務員研修所は,東京大学公共政策大学院と共催でシンポジウム「行政の未来を考える -信頼の回復に向けて-」を7月21日に開催しました。その内容をご紹介します。
- 日 時 :
- 平成21年7月21日(火)14:00~17:00
- 会 場 :
- 東京大学(本郷)法学政治学系総合教育棟101号室
- 主 催 :
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人事院公務員研修所、東京大学公共政策大学院
- パネリスト:
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森田 朗 (東京大学公共政策大学院教授)
橋爪 大三郎(東京工業大学大学院教授)
郷原 信郎 (名城大学総合研究所教授)
竹村 公太郎(リバーフロント整備センター理事長)
林 良造 (東京大学公共政策大学院教授)(兼コーディネーター)
【第1部 プレゼンテーション】
森田教授(詳細はこちら):
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現在は、官僚バッシングという「空気」に水を差すことができない状態。
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20世紀半ば以降の安心・安全な世界は、複雑な行政の日常的活動によって支えられている。このような行政は大きな権力を持つ可能性があり、民主的な統制が必要。
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戦後の日本の官僚制では、右肩上がりの経済の中で増えたパイの分配が政策課題であり、負担を誰が引き受けるか説得するという政治の機能が必要なかった。それが、経済が現状維持又は右肩下がりに転じたことで様々な問題が出てきた。それに対して行政組織が対応しておらず、以前から存在していた縦割りとキャリアシステムなどが、組織と既得権を維持しようとするというイメージで捉えられるようになり、非常に強い不信が出てきた。
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この理由には、官主導への批判や不祥事の頻発がある。不祥事については、官僚がモラルを維持するためにはキャリアパスなど何らかのインセンティブが必要であることに留意する必要がある。また、事故米や建築偽装の問題は、きちんとしたモニタリングとチェックの仕組みが弱いことが原因であり、行政のパフォーマンスというよりも仕組みそのものに問題がある。
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信頼回復のためには、行政内部から今までの仕組みを見直すこと、そして、行政が生活を支えていることに国民が気付くことを待つことである。
橋爪教授(詳細はこちら):
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どういう社会条件によって国民の信頼が失われたか。かつて、重要な情報は行政府に集中していたが、現在、一般の人びとがインターネットで手に入れる情報と、現場の官僚が手に入れる情報は本質的に同じ。それで、忙しい官僚に対して、時間のある民間人が文句を言い始めた。
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一般の人びとと企業は、商品購入という民法上の契約で結びつくのみで、その限りの関係。しかし、政府は税金を使って公共サービスを提供しているため、国民からは、単なるステークホルダーではなく、主権者としての関心が寄せられる。
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行政サービス・権限を政府機関は独占している。それをどうチェックし効率化するかを、競争以外の方法で考える必要がある。その大枠を決めているのは憲法。憲法は国民が行政府を設置し、行政府はかくあるべきだと規定している契約であり、これに合致していることが国民の信頼をつなぎとめる根本である。
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信頼がゆらぐのは国民が行政府をコントロールできないと感じている場合。国民は、間に政治を挟んで行政府をコントロールするため、政治の役割は非常に大きい。政権交代は、日本の民主制にとっては新しいチャレンジであり、これにうまく対応することが行政府の信頼を回復するチャンスになる。
郷原教授(詳細はこちら):
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信頼を回復するには、不当に社会から批判を受けないようにする必要がある。不二家は2年半ほど前に起きた事例であるが、問題の中身は、実は、形式的な社内規約違反でしかなかった。外部のコンサルタントが、「期限切れ牛乳の使用がばれたら雪印の二の舞」というレポートを社内会議に提出し、その文書が外部に流出した。その際の対応の誤りを発端に、その後の不二家の対応はマスコミ対応などで混乱に混乱を重ねていく。
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隠蔽を疑われた後、不二家は調査のしようのないあやふやな情報をそのまま公表している。これで不二家はマスコミの餌食になった。特にTBS「朝ズバッ」のバッシング報道を証言テープをすり替えて捏造するなどひどい対応だった。一般に、一度マスコミ全体が誤った報道をすると、間違った事実でも通常は訂正されない。今回はまさにそうだった。
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「隠蔽」とは本来、作為的・積極的に事実を隠すことだと思うが、マスコミによって「単なる非公表」という意味で使われるようになった。このため、企業側は何か問題を把握するとすべて公表しなければならないと考えるようになった。行政の対応も厳しくなり、企業は一層過剰反応するようになった。
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消費者等できるだけ情報を提供するのは企業のコンプライアンスの基本だが、誤解や混乱を生じさせる場合には情報提供がかえって社会の要請に反する場合もある。なぜ公表するべきなのか。被害の拡大を避けるためなのか、消費者の選択権を保護するためなのか考えた上で、公表のデメリットを検討し、組織としてどう対応するかを考える必要がある。
竹村理事長(詳細はこちら):
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行政の縦割りモデルを説明する。行政はいくつものコースター(茶卓)が並んでいて、その上に載った瓶に例えられる。コースターは設置法や所管法で、瓶はその上に載っている各省庁の行政。コースターは重なり合ってはいけない。瓶はコースターからはみだしてはいけない。今の状況は、瓶と瓶の隙間に落ちて国民が苦しんでいる状況だ。
「官僚たちの夏」では、コースターの上に瓶ではなく膨らんでいく風船があった。風船は膨張していくので隙間なく、国民はその上に乗っていれば問題は起きなかった。今は、行政はバッシングにあって、萎縮している。結果的に、行政官は瓶の中で与えられた業務だけして楽をしている。その間、国民は行政の隙間に落ち込んで苦しんでいる、というイメージであり、行政に対する不信感が蔓延している。 -
この瓶の隙間、行政の間に落ちて苦しんでいる国民をどうやって助けるのか、これを考えていくことが重要。過去の成長期の行政モデルに倣っていては間違える。
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長良川河口堰の事例では、中部地方建設局が平成5年頃から徹底した情報公開を行ったことで、新聞の賛成記事が増えてきた。これが情報公開の一つの例である。
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明治にできた河川法は、昭和と平成に「第1条目的」を変え、経済の進捗に適応して進化きた。進化論では、環境に適応するものが生き残るが、このときみんなが一斉に変わることはありえない。どこかの省庁の変わりものの部局が変わって、みんながその様子を見ながらついていく。誰も経験したことのない社会のサイズが小さくなる時代の行政を考えなくてはいけない。各人が教養を高め、社会変化に対応していかなくてはならない。
林教授(詳細はこちら):
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行政への信頼が低下しているのは、90年代以降の経済政策の失敗以降ではないか。グローバリゼーションやITの導入で、経済活動の範囲が大きく広がり、企業、経済が早く激しい変化に飲み込まれることになった。IBMなどの企業がBest and Brightestを集めても、変化に伴い一定の失敗は起きる。このような失敗を前提に政策を考えるシステムを持っているか、国の間では新しい制度間競争をしている。Best and brightestを集めて考えるのではなく、マーケットの声を聞くこと、リスクをどう管理するかということが大事になっている。
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これまでの日本の政策形成システムは変化に対応できなかった。省庁ごとに縦割りで、政策がそれぞれの審議会、与党プロセスを通し最終的に閣議で決定される、ある意味で完成されたコンセンサスシステムの中でことが動いてきた。
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官僚機構は何をすべきか。基本はやはり合理的な政策。エビデンスに基づいた費用対効果を主張できるところに一番の基本がある。合理的な行政を助けるには情報公開が最大の武器となる。
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リスクの大きさと国民の知見を考えた上で、どうコミュニケーションをするか。合理的な手順に沿ったリスクマネジメントの手法や国際的なbest practiceを人事院が行っている研修などで共有するなど、いろいろな方法でバックアップすることが必要。
【第2部 質疑応答はこちら】