人事院規則10―15(妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントの防止等)の運用について
(平成28年12月1日職職―273)
(人事院事務総長発)
 
 
 標記について下記のとおり定めたので、平成29年1月1日以降は、これによってください。
 
 
第2条関係
  1  この条で定義する「妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメント」については、職員の上司 (当該職員を事実上監督していると認められる者及び当該職員の人事に関する行為に関与する者も含まれる。以下同じ。)又は同僚
    (当該職員と共に日常の執務を行う者(部下を含む。)をいう。以下同じ。)の言動によるものが該当する。また、この条に規定するものであっても、業務分担や安全配慮等の観点から、 客観的にみて、業務上の必要性に基づく言動によるものは該当しない。
  2  この条の「職場」とは、 職員が職務に従事する場所をいい、当該職員が通常勤務している場所以外の場所及び懇親の場等であって当該職員の職務と密接に関連するものも含まれる。
  3  この条の第1号ハの「妊娠又は出産に起因する症状」とは、つわり、妊娠悪阻、切迫流産、出産後の回復不全等、妊娠又は出産をしたことに起因して妊産婦に生じる症状をいう。
  4  この条の第2号ヲの「人事院の定める妊娠又は出産に関する制度又は措置」は、「職員の勤務時間、休日及び休暇の運用について(平成6年7月27日職職―328)」(以下「勤務時間等関係運用通知」という。)第6の第5項⑸の規定により休憩時間を短縮すること(「人事院規則15―15(非常勤職員の勤務時間及び休暇)の運用について(平成6年7月27日職職―329)」(以下「規則15―15運用通知」という。)第2条関係第2項の規定により準じて取り扱う場合を含む。)とする。
  5  この条の第3号ヌの「人事院の定める育児に関する制度又は措置」は、勤務時間等関係運用通知第6の第4項⑵の規定により子の養育のため休憩時間を延長すること及び勤務時間等関係運用通知第6の第5項⑴又は⑵の規定により休憩時間を短縮すること(規則15―15運用通知第2条関係第2項の規定によりそれぞれに準じて取り扱う場合を含む。)とする。
  6  この条の第4号チの「人事院の定める介護に関する制度又は措置」は、勤務時間等関係運用通知第6の第4項⑵の規定により要介護者の介護のため休憩時間を延長すること及び勤務時間等関係運用通知第6の第5項⑶の規定により休憩時間を短縮すること(規則15―15運用通知第2条関係第2項の規定によりそれぞれに準じて取り扱う場合を含む。)とする。
  7  妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントに該当する典型的な例としては、次に掲げるものがある。この場合において、これらは、限定列挙ではないことには留意するものとする。
  一  職員が、妊娠等をしたこと(この条の第1号に掲げる事由をいう。以下同じ。)又は制度等の利用(この条の第2号から第4号までに掲げる制度又は措置の利用をいう。以下同じ。)の請求等をしたい旨を上司に相談したこと、制度
    等の利用の請求等をしたこと若しくは制度等の利用をしたことにより、上司が当該職員に対し、昇任、配置換等の任用上の取扱いや、昇格、昇給、勤勉手当等の給与上の取扱い等に関し、不利益を受けることを示唆すること。
  二  次の⑴から⑷までに掲げる言動により、制度等の利用の請求等又は制度等の利用を阻害すること(客観的にみて阻害されるものに限る。)。
    ⑴ 職員が制度等の利用の請求等をしたい旨を上司に相談したところ、上司が当該職員に対し、当該請求等をしないよう言うこと。
  ⑵ 職員が制度等の利用の請求等をしたところ、上司が当該職員に対し、当該請求等を取り下げるよう言うこと。
    ⑶ 職員が制度等の利用の請求等をしたい旨を同僚に伝えたところ、同僚が当該職員に対し、繰り返し又は継続的に当該請求等をしないよう言うこと(当該職員がその意に反することを当該同僚に明示しているにもかかわらず、更
     に言うことを含む。)。
    ⑷ 職員が制度等の利用の請求等をしたところ、同僚が当該職員に対し、繰り返し又は継続的に当該請求等を取り下げるよう言うこと(当該職員がその意に反することを当該同僚に明示しているにもかかわらず、更に言うことを含
     む。)。
  三  職員が妊娠等をしたこと又は制度等の利用をしたことにより、上司又は同僚が当該職員に対し、繰り返し若しくは継続的に、嫌がらせ的な言動をすること、業務に従事させないこと又は専ら雑務に従事させること(当該職員がそ
    の意に反することを当該上司又は同僚に明示しているにもかかわらず、更に言うこと等を含み、客観的にみて、言動を受けた職員の能力の発揮や継続的な勤務に重大な悪影響が生じる等当該職員が勤務する上で看過できない
    程度の支障が生じるようなものに限る。)。
第4条関係
  1  各省各庁の長の責務には、次に掲げるものが含まれる。
   一  妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントの防止等に関する方針、具体的な対策等を各省庁において部内規程等の文書の形でとりまとめ、職員に対して明示すること。
   二  職員に対する研修の計画を立て、実施するに当たり、妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントの防止等のための研修を含めること。
   三  妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するため、業務体制の整備など、職場や職員の実情に応じ、必要な措置を講ずること。
   四  妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントが職場に生じていないか、又はそのおそれがないか、勤務環境に十分な注意を払うこと。
   五  妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントが生じた場合には、再発防止に向けた措置を講ずること。
   六  職員に対して、妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントに関する苦情の申出、当該苦情等に係る調査への協力その他妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントが生じた場合の職員の対応に起因して当該職員が
    職場において不利益を受けないことを周知すること。
  2 この条の「不利益」には、勤務条件に関する不利益のほか、同僚等から受ける誹(ひ)謗(ぼう)や中傷など職員が受けるその他の不利益が含まれる。
  3 妊娠等をしたこと、制度等の利用の請求等をしたこと又は制度等の利用をしたことを理由とする不利益な取扱い(勤務環境を害する行為を含む。)については、既に国家公務員法(昭和22年法律第120号)等で禁止されており、各
  省各庁の長は、こうした不利益な取扱いを生じさせることがないよう徹底するものとする。
第5条関係
   この条の第2項の「職員を監督する地位にある者」には、他の職員を事実上監督していると認められる地位にある者を含むものとする。
第6条関係
   この条の第1項の人事院が定める指針は、別紙第1のとおりとする。
第7条関係
   この条の第1項の「研修等」には、研修のほか、パンフレットの配布、ポスターの掲示、職員の意識調査の実施等が含まれる。
第8条関係
  1  苦情相談は、妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントによる被害を受けた本人からのものに限らず、次のようなものも含まれる。
   一  他の職員について妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントが生じているのを見た職員からの苦情の申出
   二  他の職員から自らの言動により妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントを生じさせている旨の指摘を受けた職員からの相談
   三  部下等から妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントに関する相談を受けた監督者からの相談
  2  この条の第1項の苦情相談を受ける体制の整備については、次に定めるところによる。
   一  本省庁及び管区機関においては、それぞれ複数の相談員を置くことを基準とし、その他の機関においても、妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントに関する職員からの苦情相談に対応するために必要な体制をその組織
     構成、各官署の規模等を勘案して整備するものとする。
   二  相談員のうち少なくとも1名は、苦情相談を行う職員の属する課の長に対する指導及び人事当局との連携をとることのできる地位にある者をもって充てるものとする。
   三  苦情相談には、苦情相談を行う職員の希望する性の相談員が同席できるような体制を整備するよう努めるものとする。 
   四  妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントは、セクシュアル・ハラスメント(人事院規則10―10(セクシュアル・ハラスメントの防止等)第2条第1号に規定するセクシュアル・ハラスメントをいう。以下同じ。)その他のハラスメ
     ントと複合的に生じることも想定されることから、セクシュアル・ハラスメント等の苦情相談を受ける体制と一体的に、妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントの苦情相談を受ける体制を整備するなど、一元的に苦情相談を受
     けることのできる体制を整備するよう努めるものとする。
  3 この条の第2項の人事院が定める指針は、別紙2のとおりとする。  
  4 この条の第3項の「苦情相談を行った職員等」には、他の職員から妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントに係る言動を受けたとする職員、他の職員に対し妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントに係る言動を行っ
  たとされる職員その他の関係者が含まれる。 
  
以   上
 
 
 
別紙第1
     妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントをなくすために職員が認識すべき事項についての指針
 
第1  妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントを生じさせないために職員が認識すべき事項
  1  基本的な心構え
     職員は、妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントを生じさせないために、次の事項について十分認識しなければならない。
   一  妊娠、出産、育児又は介護に関する否定的な言動(他の職員の妊娠、出産、育児又は介護の否定につながる言動(当該職員に直接行わない言動も含まれる。)をいい、単なる自らの意思の表明を除く。)は、妊娠、出産、育児又
     は介護に関するハラスメントの原因や背景となること。
   二  仕事と妊娠、出産、育児又は介護とを両立するための制度又は措置があること。
  2  監督者として認識すべき事項
     監督者は、妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントを生じさせないために、次の事項について十分認識しなければならない。
   一  妊娠した職員がつわりなどの体調不良のため勤務ができないことや能率が低下すること、制度等の利用をした職員が正規の勤務時間の一部を勤務しないこと等により周囲の職員の業務負担が増大することも妊娠、出産、育児
     又は介護に関するハラスメントの原因や背景となること。
   二  業務体制の整備など、職場や妊娠等をし、又は制度等の利用をした職員その他の職員の実情に応じ、必要な措置を講ずること。
  例えば、業務体制の整備については、妊娠等をし、又は制度等の利用をした職員の周囲の職員への業務の偏りを軽減するよう、適切に業務分担の見直しを行うことや、業務の点検を行い、業務の効率化等を行うものとする。
  3  妊娠等をし、又は制度等の利用をする職員として認識すべき事項
     妊娠等をし、又は制度等の利用をする職員は、妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントに係る言動を受けないために、次の事項について十分認識しなければならない。
   一  仕事と妊娠、出産、育児又は介護とを両立していくために必要な場合は、妊娠、出産、育児又は介護に関する制度等の利用ができるという知識を持つこと。
   二  周囲と円滑なコミュニケーションを図りながら自身の体調や制度等の利用状況等に応じて適切に業務を遂行していくという意識を持つこと。
  4  懲戒処分
     妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントの態様等によっては信用失墜行為、国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行などに該当して、懲戒処分に付されることがある。
第2  妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントが生じた場合において職員に望まれる事項
  1  基本的な心構え
     職員は、妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントに係る言動を受けた場合にその被害を深刻にしないために、次の事項について認識しておくことが望まれる。
   一  一人で我慢しているだけでは、問題は解決しないこと。
       妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントに係る言動を無視したり、受け流したりしているだけでは、必ずしも状況は改善されないということをまず認識することが大切である。
   二  妊娠 、出産、育児又は介護に関するハラスメントに係る言動に対する行動をためらわないこと。
       被害を深刻なものにしない、他に被害者をつくらない、さらには妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントをなくすことは自分だけの問題ではなく良い勤務環境の形成に重要であるとの考えに立って、勇気を出して行動する
     ことが求められる。
  2   妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントに係る言動を受けたと思うときに望まれる対応
     職員は、妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントに係る言動を受けた場合、次のような行動をとるよう努めることが望まれる。
   一  自分の意に反することは相手に対して明確に意思表示をすること。
     妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントに係る言動に対しては毅(き)然とした態度をとること。すなわち、はっきりと自分の意思を相手に伝えることが重要である。直接相手に言いにくい場合には、手紙等の手段をとると
     いう方法もある。
   二  信頼できる人に相談すること。
      まず、職場の同僚や知人等身近な信頼できる人に相談することが大切である。各職場内において解決することが困難な場合には、内部又は外部の相談機関に相談する方法を考える。なお、相談するに当たっては、妊娠、出産、
    育児又は介護に関するハラスメントに係る言動を受けた日時、内容等について記録しておくことが望ましい。
 
別紙第2
     妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントに関する苦情相談に対応するに当たり留意すべき事項についての指針
 
第1  基本的な心構え
     職員からの苦情相談に対応するに当たっては、相談員は次の事項に留意する必要がある。
  1  被害者を含む当事者にとって適切かつ効果的な対応は何かという視点を常に持つこと。
  2  事態を悪化させないために、迅速な対応を心がけること。
  3  関係者のプライバシーや名誉その他の人権を尊重するとともに、知り得た秘密を厳守すること。
第2  苦情相談の事務の進め方
  1  苦情相談を受ける際の相談員の体制等
   一  苦情相談を受ける際には、原則として2人の相談員で対応すること。
   二  苦情相談を受けるに当たっては、苦情相談を行う職員(以下「相談者」という。)の希望する性の相談員が同席するよう努めること。
   三  相談員は、苦情相談に適切に対応するために、相互に連携し、協力すること。
   四  実際に苦情相談を受けるに当たっては、その内容を相談員以外の者に見聞されないよう周りから遮断した場所で行うこと。
  2  相談者から事実関係等を聴取するに当たり留意すべき事項
     相談者から事実関係等を聴取するに当たっては、次の事項に留意する必要がある。
   一  相談者の求めるものを把握すること。
      将来の言動の抑止等、今後も発生が見込まれる言動への対応を求めるものであるのか、又は喪失した利益の回復、謝罪要求等過去にあった言動に対する対応を求めるものであるのかについて把握する。
   二  どの程度の時間的な余裕があるのかについて把握すること。
      相談者の心身の状態等に鑑み、苦情相談への対応に当たりどの程度の時間的な余裕があるのかを把握する。
   三  相談者の主張に真摯に耳を傾け丁寧に話を聴くこと。
      特に相談者が被害者の場合、妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントに係る言動を受けた心理的な影響から必ずしも理路整然と話すとは限らない。むしろ脱線することも十分想定されるが、事実関係を把握することは
     極めて重要であるので、忍耐強く聴くよう努める。
   四  事実関係については、次の事項を把握すること。
     (1)  当事者(被害者及び加害者とされる職員)間の関係
     (2)  問題とされる言動が、いつ、どこで、どのように行われたか。
     (3)  相談者は、加害者とされる職員に対してどのような対応をとったか。
     (4)  監督者等に対する相談を行っているか。
      なお、これらの事実を確認する場合、相談者が主張する内容については、当事者のみが知り得るものか、又は他に目撃者はいるのかを把握する。
   五 聴取した事実関係等を相談者に確認すること。
      聞き間違えの修正並びに聞き漏らした事項及び言い忘れた事項の補充ができるので、聴取事項を書面で示したり、復唱するなどして相談者に確認する。
   六 聴取した事実関係等については、必ず記録し、保存しておくこと。
 3  加害者とされる職員からの事実関係等の聴取
   一 原則として、加害者とされる職員から事実関係等を聴取する必要がある。ただし、妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントが比較的軽微なものであり、対応に時間的な余裕がある場合などは、監督者の観察、指導による
    対応が適当な場合も考えられるので、その都度適切な方法を選択して対応する。
   二 加害者とされる者から事実関係等を聴取する場合には、加害者とされる者に対して十分な弁明の機会を与える。
   三 加害者とされる者から事実関係等を聴取するに当たっては、その主張に真摯に耳を傾け丁寧に話を聴くなど、相談者から事実関係等を聴取する際の留意事項を参考にし、適切に対応する。
 4  第三者からの事実関係等の聴取
    妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントについて当事者間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実の確認が十分にできないと認められる場合などは、第三者から事実関係等を聴取することも必要である。
   この場合、相談者から事実関係等を聴取する際の留意事項を参考にし、適切に対応する。
 5  相談者に対する説明
    苦情相談に関し、具体的にとられた対応については、相談者に説明する。