原子力施設等における緊急作業に従事する職員等の長期的健康管理について
(平成28年1月27日職職―21)
(人事院事務総局職員福祉局長発)
 
職員の保健及び安全保持並びに放射線障害の防止については、人事院規則10―4(職員の保健及び安全保持)(以下「規則10―4」という。)及び人事院規則10―5(職員の放射線障害の防止)(以下「規則10―5」という。)において、基本となる基準を定めております。
 これまで、「東京電力福島第一原子力発電所において緊急作業に従事する職員等の長期的健康管理について」(平成23年10月11日職職―321職員福祉局長)により、特定緊急作業に従事し又は従事した職員(特定緊急作業従事職員)の長期的健康管理については所要の対策を講じてきたところです。
 これに加えて、今般、規則10―5第4条の3が新設され、今後、同条第1項に基づく特例緊急被ばく限度に係る緊急作業(特例緊急作業)に従事する職員が生じる可能性があります。
 そのため、特定緊急作業及び特例緊急作業(以下「特例緊急作業等」という。)に従事し又は従事した職員(以下「特例緊急作業従事職員等」という。)に対して、放射線への被ばくによる中長期的な健康管理が求められるほか、通常の放射線業務とは異なる環境下で緊急性の高い業務に従事したことによる健康上の不安を解消するため、離職後も含めた適切な長期的健康管理を行う必要があります。
 この度、特例緊急作業従事職員等の長期的健康管理に関し、上記の基本となる基準を踏まえて、より詳細な実務上の指針を別紙のとおり定めましたので、平成28年4月1日以降はこれに従って、これら職員の適切な健康管理に取り組んでいただきますようお願いいたします。
 本指針において従来の健康管理に加えた事項の一つに、通常被ばく限度を超えて被ばくした特例緊急作業従事職員等について、生涯線量を1Svとして残余の就労期間における線量管理期間の被ばく限度を特例緊急作業従事職員等ごとに個別に設定し、被ばく線量を管理することがあります。特に、特定緊急作業従事職員については、従来より、被ばく線量の測定、被ばく線量及び健康診断結果の記録・保存等を実施することとしておりますが、これに加えて設定する線量管理期間ごとの被ばく限度を計算する際の「累積線量」には、本指針の施行前に被ばくした線量の累計も算入することになりますので、ご留意ください。
 なお、これに伴い、「東京電力福島第一原子力発電所において緊急作業に従事する職員等の長期的健康管理について」(平成23年10月11日職職―321職員福祉局長)は、平成28年3月31日をもって廃止します。
 
以   上
 
(別紙)
 
原子力施設等における緊急作業に従事する職員等の長期的健康管理に関する指針
 
1 この指針の適用対象者である「特例緊急作業従事職員等」とは、次に掲げる者をいう。
 (1) 平成23年3月11日に発生した東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故に係る放射線障害を防止するための緊急を要する作業(特定緊急作業)のうち、同発電所の敷地内におけるものに従事した職員(特定緊急作業従事職員)
 (2) 規則10―5第4条の3第1項に規定する特例緊急被ばく限度に係る緊急作業(特例緊急作業)に従事し、又は従事した職員(特例緊急作業従事職員)
 
2 長期的健康管理のために講ずべき措置
特例緊急作業従事職員等の長期的健康管理を適切に行うために、各省各庁が講ずべき措置は、次のとおりとする。
(1) 健康診断の適切な実施
  ア 規則10―4第20条の規定に基づき、一般定期健康診断及び特別定期健康診断を実施するほか、緊急作業に係る健康診断(規則10―5第26条の2の規定による健康診断をいう。)、ストレスチェック及びその結果に基づく面接指導(規則10―4第22条の4第1項の規定による心理的な負担の程度を把握するための検査及び同条第4項の規定による面接指導をいう。)を適切に実施し、必要に応じて規則10―4第21条の規定による臨時の健康診断を実施する。
イ 特例緊急作業等に従事したことによる放射線の被ばく量(実効線量)の累計が1年につき50mSvを超えた特例緊急作業従事職員等に対しては、アに加え、「原子力施設等における緊急作業従事者等の健康の保持増進のための指針」(平成27年8月31日付け基発0831第10号)第2の2の例による健康診断を実施する。
  ウ イの健康診断は、特例緊急作業従事職員等が離職した後においても、各省各庁により無料で受診することができるようにする。
(2) 保健指導及び健康相談の実施
  ア 規則10―4第23条及び第24条の規定に基づき、(1)の健康診断の結果に異常所見が認められた場合に適切な措置を行うほか、特例緊急作業従事職員等が通常の放射線業務とは異なる環境下で、緊急性の高い業務に従事したことにより、心身の長期的な健康に不安を感じることが想定されることを踏まえ、その者が希望した場合には、健康管理医等による保健指導及び健康相談を随時受けることができるようにする。なお、これらの措置及び保健指導等に当たっては、精神面への影響にも十分配慮する。
また、放射線被ばくと喫煙には、相互作用が観察されるため、一定以上の被ばくをした者に禁煙指導を実施することは有効である。このため、各省各庁の長は、特例緊急作業等に従事した間に受けた放射線の実効線量が100mSvを超えた特例緊急作業従事職員等に対する保健指導において、禁煙指導を実施する。その際、希望する者には禁煙外来を紹介する。
イ アの保健指導及び健康相談は、特例緊急作業従事職員等が離職した後においても利用することができるようにする。
 
3 通常被ばく限度を超えた特例緊急作業従事職員等の中長期的な線量管理
(1) 事故発生時を含む線量管理期間の次の線量管理期間以降の放射線管理
  ア 各省各庁の長は、原子力施設等における特例緊急作業等を伴う事故(以下単に「事故」という。)発生時を含む5年間ごとに区分された線量管理期間(以下単に「線量管理期間」という。)の次の線量管理期間以降の放射線管理については、通常被ばく限度である5年100mSvを超えない範囲内で、残余の線量(生涯線量である1Svから累積線量(緊急線量と通常線量を合算したものをいう。)を減じたものをいう。)を残余の就労期間(全就労期間の最終年齢68歳(18歳から50年間と仮定。)から現在の年齢を減じたもの)で除することによって得られる値を5倍することにより、当該残余の就労期間における線量管理期間の被ばく限度を特例緊急作業従事職員等ごとに個別に設定する。(計算例は別紙参照。)
なお、線量管理期間ごとの被ばく限度は、5mSv単位(端数切捨て)で設定する。
  イ 各省各庁の長は、アにより計算された線量管理期間ごとの被ばく限度について、その後の被ばく線量をより詳細に反映するため、線量管理期間が終了するごと(5年間ごと)に、その時点における残余の線量及び残余の就労期間からそれ以降の線量管理期間ごとの被ばく限度を再計算する。 
ウ 各省各庁の長は、線量管理期間ごとの累積線量が、アによって計算された線量管理期間ごとの被ばく限度を超えないように管理するとともに、各線量管理期間における1年当たりの被ばく限度である50mSvを超えないように管理する。 
エ 各省各庁の長は、ア及びイによって計算された線量管理期間ごとの被ばく限度を当該特例緊急作業従事職員等に通知する。また、各省各庁の長は、当該特例緊急作業従事職員等が放射線業務に従事する際に、その限度を超えないように管理するとともに、被ばく線量をできるだけ少なくするように努める。
(2) 事故発生時を含む線量管理期間内での通常被ばく適用作業での放射線管理
  ア 人事院規則10―5(職員の放射線障害の防止)の運用について(通知)(昭和38年職厚―2327)第4条の2及び第4条の3関係第1項ただし書に規定する放射線業務に従事させる原子力保安検査官については、通常被ばく線量のみの累計が通常被ばく限度(1年50mSvかつ5年100mSv)を超えないようにしなければならない。
イ アの放射線業務に従事する原子力保安検査官に対しては、あらかじめ、医師による診察を受けさせるとともに、規則10―5及び本指針に基づく線量管理及び健康管理を行う。
ウ アの放射線業務において受ける線量を事故発生時を含む線量管理期間の次の線量管理期間以降の被ばく限度の設定時の計算に算入するとともに、被ばく線量をできるだけ小さくするように努める。  
 
4 被ばく量及び健康診断結果の記録の作成、管理等
(1) 規則10―4第24条の3及び第25条第1項並びに規則10―5第24条の規定に基づき、特例緊急作業従事職員等に係る特例緊急作業等の従事前、従事中及び従事後の被ばく量並びに健康診断の結果を本人に通知するとともに、その記録を作成し、その者の健康管理に関する指導に活用するため、特例緊急作業従事職員等であることを明確にして当該記録を管理する。
(2) 特例緊急作業従事職員等が各省各庁の長を異にして異動した場合には、本指針に基づくその者の健康管理は異動後の所属の各省各庁の長が行う。なお、規則10―4第25条第2項の規定により、その者の健康管理の記録は異動後の所属の各省各庁の長に移管する。
(3) 特例緊急作業従事職員等が規則10―4別表第3第2号に掲げる業務に従事しないこととなった場合には、同規則第26条の規定に基づき人事院が交付する健康管理手帳に、特例緊急作業等を含む当該業務に従事したことによる被ばく量を付記する。
(4) 離職した特例緊急作業従事職員等が任意に提出した離職後の被ばく量、健康診断の結果等に係る資料、又は2(1)のウにより特例緊急作業従事職員等が離職後に受診した健康診断の結果については、(1)の記録とともに管理する。
(5) 特例緊急作業従事職員等が求めた場合には、その者に係る(1)及び(4)の記録の写しを交付する。
 
5 人事院事務総局職員福祉局職員福祉課長への報告等
(1) 各省各庁の健康管理者又は安全管理者は、次に掲げる場合には、直ちにその旨を人事院事務総局職員福祉局職員福祉課長に報告するものとする。
ア 特例緊急作業従事職員等の特例緊急作業等に従事したことによる被ばく量の累計が50mSvを超えた場合
イ 特例緊急作業従事職員等の健康診断の結果により、放射線による健康への影響が懸念される場合
(2) (1)のほか、人事院事務総局職員福祉局職員福祉課長が求めた場合には、特例緊急作業従事職員等に係る被ばく量、健康診断の結果等の健康管理に関する情報を提出するものとする。
 
6 施行日
 (1) 2(1)に規定する新たな健康診断の項目については、平成28年4月1日以降実施する健康診断から適用する。
 (2) その他の事項については、平成28年4月1日から実施する。
 
以   上
 
別紙
 
5年当たりの被ばく限度の計算例
 
 3の(1)アで定める5年当たりの被ばく限度の計算例は以下のとおり。
 
 例1:緊急線量500mSv、通常線量100mSv(累積線量 600mSv)、年齢45歳の場合
@ (1000mSv-600mSv)/(68歳-45歳)=17.4mSv/年
A 5年当たりの被ばく限度:17.4mSv/年×5年=87mSv(切捨てにより85mSv)
この場合、1年当たりの被ばく限度(50mSv)についてはそのまま適用する。
 例2:緊急線量500mSv、通常線量100mSv(累積線量600mSv)、年齢23歳の場合
@ (1000mSv-600mSv)/(68歳-23歳)=8.9mSv/年
A 5年当たりの被ばく限度:8.9mSv/年×5年=44.5mSv(切捨てにより40mSv)
この場合、1年当たりの被ばく限度(50mSv)より小さくなるため、1年当たりの被ばく線量は、5年当たり被ばく限度を超えることはできない。
 例3:緊急線量200mSv、通常線量100mSv(累積線量300mSv)、年齢45歳の場合
@ (1000mSv-300mSv)/(68歳-45歳)=30.4mSv/年
A 5年当たりの被ばく限度:30.4mSv/年×5年=152mSv
この場合、特別な線量制限は不要であり、通常の被ばく限度を適用する。