このコーナーのトップへ

資産運用

(1) 資産運用を考える前に

資産運用は、定年後の生活を踏まえて構築した生活設計に沿った計画的運用を考えていかなければ、充実したものとはなりません。そして、その計画は定年後における経済的な不安、健康に関する不安、生きがいや孤独に関する不安などを解消し、家族を含めた幸せな人生を送ることができるような計画でなければなりません。従って、もう一度生活設計を再確認しておきましょう。

また、資産運用の対象となる金融商品はたくさんあり、今後も新しい商品が開発されることが予想されますので、常に新しい情報を把握しておくことを心がける必要があります。

(2) 資産の現状把握

退職後の家計の状況を考える上では、あらかじめ資産の現状を把握しておくことが肝要です。そのためには、まず家計の経済状況と資産の状況について、この項の終わりにある別紙1別紙2によりまとめておくと便利です。

また、ゆとりのある退職後の生活を送るためには、住宅購入資金など高額なものは早めに蓄えておくことなど、将来の生活に則した計画的な資産運用を定年前から適切に行っておく必要もあります。

(3) 資産運用の基本

定年前に貯蓄する場合はもとより、定年後の大事な資産を運用する場合にも資産を効率的に運用するには金融に関する知識は欠かせません。

また、金融商品を選択する場合には、資産の使用目的を考えることと同時にその特性を知っておくことが重要です。

一般的に金融商品には流動性、安全性及び収益性の3つの性格があるといわれていますが、この3つの性格すべてに優れている商品はないという原則があることに留意する必要があります。

3つの性格と特徴及び金融商品は次のとおりです。

1 流動性

換金性や利便性ともいい、換金のしやすさのことです。日々の生活費や急な出費に備えた資金は流動性の高い商品で運用します。郵便局の通常貯金、銀行の普通預金、証券会社のMRF(マネーリザーブファンドの略、追加型公社債投資信託の短期運用で、元本保証されておらず、MMFより運用実績は低い)やMMF(マネーマネージメントファンドの略、追加型公社債投資信託の短期運用で、元本保証されておらず、30日未満の解約は信託財産留保額が差し引かれる)があります。運用期間は1年程度を目安に、自由に資金を出し入れできることが商品選びのポイントです。

2 安全性

確実性ともいい、元本や利息の支払いの確実さを示し、住宅取得費のための資金や教育資金、老後のための資金など目的が決まっている資金は、安全性の高い商品で運用します。元本保証で利回りの高い定額貯金、定期預金や債券、公社債投資信託などがあります。運用期間は2年〜10年くらいで、住宅資金、教育費、自動車の購入資金など使うことが決まっているものに向いています。

3 収益性

利殖性ともいい、金融商品の利息や値上がり益、運用益の大きいもので、余裕資金で運用します。株式、株式投資信託や外貨預金などがあります。運用期間に定めはありませんが、リスクは高いが高収入を期待できることがポイントです。

 

このほかに、インフレ対策資産として金融商品とは別に考えられているものに不動産、金、個人向け国債、物価連動国債などがあります。

 

株式や債券といった金融商品などの保有資産の構成内容をポートフォリオといいますが、これはもともと有価証券を挟んで保存する「紙ばさみ」、「折りかばん」を意味する言葉で、今では「資金を分散して商品を組み合わせて運用する」という意味で使われています。分散投資によってリスク(経済学では一般的に、ある事象の変動に関する不確実性)を低減させるものです。資産をどの商品でどのぐらいずつ運用するのが良いかを考えて実行することになります。

ポートフォリオ運用の基本的な考え方は「財産三分法」と呼ばれているもので、「預・貯金」、「株式」、「不動産」の3つに資産を分けて持つというものです。「預・貯金」や「債券」で流動性と安全性を確保し、「株式」や「不動産」で収益性を追求してインフレリスクを減らすという考え方です。

この考え方を参考にして、個人の資産運用に当てはめると、「生活のための資金」、「使用予定のある資金」、「余裕のある資金」の3つに分類してから具体的な運用商品を決めていけば良いことになります。運用の目安は次のとおりです。

1 生活のための資金

生活費や病気など不慮のときのための資金は生活費の6か月分くらいを目途にすぐに換金できる預貯金などで運用

2 使用予定のある資金

住宅購入資金、車購入資金や家族旅行資金など決まった時期に必要となる資金は使う時期までに換金できるよう元本保証のある定期預金などの商品で運用

3 余裕のある資金

上記12以外は基本的には10年以上運用できる資金で、5年から10年程度で満期となる債券(国債、公社債)を中心に、株、株式投資信託、外貨預金、不動産投資信託をはじめとするリスクの高い商品を組み入れて運用

 

金融商品はいずれにしろ、リスク(将来どうなるか分からない)とリターン(収益)を伴います。預・貯金のようにリスクが低いほどリターンも低いものや株式などのようにリスクが高いほどリターンも高いというような関係になります。リスクが低くリターンの高い理想的な金融商品は基本的に存在しません。金融商品にうまい話はないということです。

リスクの主なものには次のようなものがあります。

1 信用リスク

元本や利息の支払いが滞ったり、支払い不能に陥る可能性のことです。具体的には国内の金融機関や企業、さらには海外の国や企業などが破綻し、結果として支払い不能などが発生する可能性のことを指します。

2 価格変動リスク

購入商品の価格が変動して、換金する際の受取金額が、当初の投資金額を上回ることもあれば下回ることもあるということです。株式や株式投資信託、転換社債、国債などは、日々の取引によって価格が変動します。その結果、預・貯金に比べ大きな利益を上げることができる反面、損失を招く可能性もあります。

3 為替変動リスク

外貨預金をはじめ、外国の債券や株式、外貨建て投信など外貨建ての商品を日本円に換金する際、その商品の安全性や価格、利息とは別に為替の変動のみによって損益が発生する可能性があるということです。

4 インフレリスク

物価上昇率が金融商品の運用利回りを上回る可能性のことです。物価の上昇率が高すぎると資産の目減りを起こすことになります。

5 カントリーリスク

外国の債券や株式等に投資を行う場合、上記のリスクに加えて、その国の政治情勢、経済状況によって資金が目減りしたり、回収不能に陥る危険性があることをいいます。国の政治情勢が安定しており、経済が堅調であればその国に投資するカントリーリスクは低いといえ、逆に政治や社会経済が不安定である場合はカントリーリスクは高いと考えられます。

(4) 資産運用のポイント

1 分散投資

今後の生活設計を踏まえ、「流動性」、「安全性」、「収益性」それぞれの性格を生かして資金を分散して投資します。一般に投資者の年齢が若いほど収益性にウェイトを置き、高齢になるほど安全性にウェイトを置くのが良いと言われています。

2 商品の分散

どんなに魅力ある商品でも一つの金融商品に集中するのは避けた方が無難です。元本保証の商品でも金融機関の破綻をある程度考慮することが必要な時代になってきています。価格変動リスクのある商品に投資する場合は、商品の特長を良く理解し、複数の性格の異なる商品に分散してリスクを減らします。例としては、株式に投資する場合には保有する株式の業種や会社を分けた方が値下がりのリスクを軽減できます。会社を分散しても業種が同じでは適切なものとはいえない場合もあります。また、株式投資信託で商品名は異なっていても運用対象が似通った商品では分散の効果は薄れてしまいます。商品の分散は内容の異なる商品を組み合わせて行うことが涵養です。

3 時間の分散

価格変動リスクのある商品や外貨建ての金融商品に投資する場合は、銘柄分散のほかに、購入時期を分散することでさらにリスクを軽減させる効果が期待できます。時間分散によって購入単価を引き下げることもできるからです。例えば、最初に株価が500円の時に買い、次に400円の時に同じ株数買えば単価は450円になります。有利な金融商品があるからといって資金を一度につぎ込まず、運用の成果を見ながら時間分散で購入することも検討に値します。

4 金利の変化と貯蓄選択

金融商品には、預入時の利率や利回りが満期まで変わらない固定金利の商品と市場の金利の動きに合わせて利率などが変化する変動金利の商品があります。低金利時代には変動金利で預入期間の短い商品、高金利のときには固定金利で預入期間や満期までの期間が長い商品に預けるのが基本です。

(5) 資産運用商品の種類と金融機関の利用上の注意点

1 預・貯金

安全性や流動性を重視する資金に向いています。預入期間や解約手数料などを確認し、資金の目的にあった商品を選ぶことです。

注意することは金融機関も経営状況を前提に選ぶ時代に入っていますので、預金保険制度の内容を研究し、1,000万円超の資金を一つの金融機関に集中させる場合には十分な検討が必要です。

2 債券

債券とは国や企業が広く一般から資金を借りるときに、元本返済と利息の支払いを約束して発行する借用書のようなものです。国が発行するのが国債、事業会社が発行するのが社債です。発行元が破綻しない限りは、満期まで保有すれば元本や利息の支払いは確実です。債券の特徴としては発行元の信用度が高いほど利率は低く、信用度が低いほど利率は高くなります。満期までの期間の長い債券の方が短い債券より利率は高くなります。

債券の信用度について、国債はともかく、社債の場合は企業の破綻もありえますから、購入する場合はその信用度と利率のバランスを考える必要があります。日本企業の場合は、発行時のほとんどが投資適格債のランクはBBB以上で債務不履行リスクが低く、信用力が高い債券ですが、その後の経営の悪化により格付けがBB以下(投機的格付債)になる場合もあります。また、格付けは金融庁が指定した格付け機関が行いますが、あくまでも格付け機関の意見なので、絶対的なものではなく、同じ社債でも格付け機関によって評価の異なる場合もあります。

債券は発行元が破綻しない限りは、満期まで保有すれば元本割れはありません。しかし、債券も発行後満期までの間は、株式と同じように日々取引されていますから、債券の価格は変動しています。そのため、発行元の信用度合いにかかわらず、途中で換金する場合は元本割れを起こす可能性もあります。これは国債でも同じです。市場の金利が上昇していく過程では発行元や満期などの条件が同じであれば利率の低い債券は利率の高い債券に比べて債券の価値が低くなるため、債券の価格が下がってしまいます。例としては利率2%の国債を保有していて、その後3%の国債が発行されると2%の国債の価値は下がってしまいます。従って、満期まで保有するつもりでいても途中で換金する必要が出てきたときに価格が元本割れを起こしていることもあります。反対に金利が下がっていく過程では低い金利の債券が発行されるほど利率の高い債券が有利になるので債券の価格は上昇します。

なお、2003年から発行されている「半年ごとに利息を見直すことになっている個人向け国債」の場合は、市場金利の上昇による価格の下落は避けられるようになっていますが、中途換金の場合は直近2回分の利息に相当する金額が差し引かれることになる等があるので、債券の購入に当たっては取扱条件などを確認しておくような注意が必要です。

3 投資信託

投資信託は、多くの投資家から集められた資金を一つの基金(ファンド)にまとめ、運用の専門家が債券や株式などに分散投資してその運用成果を投資額の割合に応じて分配する商品です。多くの投資信託は1万円という少額から始めることができます。投資信託の運営は、販売窓口である証券会社や金融機関、実際に運用を担当する投資信託会社及び投資家から集めた資金を管理する信託会社の3者によって行われています。投資信託は、運用対象により大きく2つに分類されます。

一つは債券など安全性の高い商品(元本保証ではありません)で運用する公社債投資信託で、もう一つは株式を運用対象に入れた株式投資信託です。公社債投資信託にはMRFやMMF、長期公社債投信などがあります。一方、株式投資信託は、その組み合わせによって数多くの種類があるのが特徴です。また、投資信託には、いつでも購入・換金できる追加型(オープン型)投資信託と、購入が一定の期間内に限定される単位型(ユニット型)投資信託があります。現在販売されている投資信託の多くは追加型投資信託です。

投資信託を選ぶポイントは、(ア)自分の投資方針(年に何%の収益を期待するのか)を決める(イ)手数料などの経費を調べる(ウ)過去の運用実績を調べる(エ)選んだ投資信託の価格が騰落する原因を理解する(オ)買った後も実績の推移や運用方針・スタイルなどをチェックするなどです。特に(ア)は重要です。現在のような超低金利下で高い収入を望むのであれば、選択肢は株式、株式投資信託、不動産投資信託、外貨建て商品に絞られてくるからです。つまりある程度のリスクを認識した上で投資することになるのです。

4 株式

株式はハイリスク・ハイリターンの代表的な投資対象です。投資資金は、「生活費や目的のある資金」、「将来に必要な貯蓄」を除いた「余裕資金」で行ってください。また、投資対象を選ぶ際にも株式投資の基本を身につけ、投資先の企業を充分研究したうえで行ってください。さらに投資企業の分散や資金の時間分散を図り、一度に大きな損害を出さないように留意する必要があります。

5 外貨建て商品

諸外国の高利回りの債券や投資信託は、低金利の日本から見ると魅力的です。外貨建て商品投資のポイントは、まず発行元の安全性を確認することです。日本に比べ情報量の少ない海外の国や企業が発行する債券や株式に投資する場合は十分な検討が必要です。安全性が確認できたら次に考えるのは為替です。いくら高利回りの商品でも為替が円高になると利息を上回る損失が発生し元本割れを起こすこともあるからです。あまり多額の資金を投入せず時間分散を図りながら投資したいものです。仮に購入時よりも円高になっていた場合には次のような対策が考えられます。

  • (ア)その時点で換金せず、外貨預金や外貨建てMMFなどに資金を移し円安を待ちましょう。(手数料を事前に確認する必要があります。)
  • (イ)高利回りを生かし長く保有する。(円高による元本割れに注意が必要です。)
  • (ウ)外貨建て投資信託の場合には、一定の円高までは目減りしない商品(ヘッジ(リスク回避ファンド)あり投資信託)の利用も考えましょう。

(6) 金融機関の利用者保護制度(ペイオフ制度)

1 預金保険制度(銀行、信用金庫、信用組合、労働金庫など)

預金保険制度は、預金等を取り扱う金融機関が破綻に陥った場合に預金者を保護する制度です。預金保険制度は、政府・日銀・民間金融機関の出資により設立された預金保険機構によって運営されています。預金保険法により平成17年3月末までは普通預金、当座預金、別段預金に限り金融機関が破綻した場合でも全額保護されました。平成17年以降4月以降は当座預金などの無利息・要求払い・決済サービスの3条件を満たす預金は全額保護の対象となっていますが、それ以外の預金は全額保護されるものはなくなりました。一つの金融機関について1,000万円以上の預金があった場合、預金者1人当たり元本1,000万円とその利息が預金保険機構より保険金として支払われます。これをペイオフといいます。それを超える部分については金融機関に財産が残っていれば支払われることになっています。

なお、金融機関の破綻に際して取られる措置は、まず、破綻金融機関の預・貯金等を譲り受ける救済金融機関を探し、その際、必要な資金を援助する方法がとられ、その次にペイオフの方法がとられることになっています。

2 日本投資者保護基金

金融商品取引法に基づいて設立されている法人です。証券会社が顧客から預かる有価証券や金銭は、金融商品取引法で証券会社の経営資産とは分別して保管することが義務づけられており、万が一経営破綻してもすべて返還されることになっています。それでもなお、顧客資産の円滑な返還が困難だと認められた場合に先の基金より1人1,000万円を限度として補償されます。

3 保険契約者保護機構

保険業法に基づいて設立されている法人で生命保険契約者保護機構と損害保険契約者保護機構の二つの機関があります。破綻保険会社の保険契約を受け入れる救済保険会社に対して資金援助を行うほか、救済保険会社が現れる見込みがないときは、機構が保険契約の引き受けあるいは機構が設立する承継保険会社に保険契約を承継することにより、契約の継続を図りますが、契約内容の変更が行われる可能性があります。

(7) 金融商品をめぐるトラブルの回避と注意点

1 金融機関とのトラブル

金融商品に関するトラブルとしては次のパターンが考えられます。

(ア) 営業員から受けた説明と運用の成果が異なっていた

例えば元本保証といわれたのに元本割れしてしまったなどのケースの場合は、必ず営業員の説明を裏付ける資料があるかを確認しましょう。その際、商品の性格が理解できなければ理解できるまで説明を求め、どうしてもわからない場合は購入を見送ることも考えましょう。

(イ) 明確に返事をしたわけではないのに勝手に売買されてしまった

これは営業員とのやりとりの中で多く出てくるトラブルで、最後は「売買すると言った」「言わない」の争いになるケースです。このトラブルを避けるには、はっきりとした意思表示をすることです。「買う」、「買わない」、「検討してから後日回答する」など営業員にはっきり伝えることを心がけましょう。

2 自己責任の時代

金融分野の自由化が進むにつれ、さまざまな商品が登場しています。そして、そのしくみも複雑でパンフレットに一度目を通したくらいでは理解できないものが多く見られます。ですから、自分にあった金融商品を見つけるためには、今まで以上に金融商品の勉強が必要になってきます。単に利回りが高いとか他の人が儲かったからといった理由だけで購入することは避け、商品を良く理解する努力をし、そのうえで仕組みが理解できてから購入を考えましょう。当たり前のことですが、自分の資産は他人任せにせず、自分で守りたいものです。

3 金融商品の販売等に関する法律

金融サービスの利用者保護を図るため、金融商品の販売に関する法律が平成12年に制定されました。この法律には3つの柱があります。(ア)金融商品を販売する業者は、その商品のリスクなどの重要事項を消費者の理解力に応じて説明する義務があります。重要事項には、元本割れのおそれ、解約可能期間の制限などがあります。(イ)消費者が被害を被った場合には、消費者は販売業者が説明義務違反を犯していることが立証できればよく、今までより損害賠償請求の際の負担が軽くなっています。(ウ)販売業者は、消費者の知識や経験、財産の状況に応じた勧誘をすることと、勧誘方法や場所、時間帯を考えて勧誘することが義務づけられています。

この法律は、金融商品の契約に限らず、事業者との消費者契約すべてが対象です。事業者が「嘘を言った」、「確実に儲かるといった」、「都合の悪いことを隠していた」などの行為があった場合は契約を取り消すことができます。ただし、事業者に対する行政上の罰則はありません。

(8) 悪質商法の種類とクーリング・オフ

1 特定商取引に関する法律

「特定商取引法」「特商法」とも言われ、昭和51年に「訪問販売等に関する法律(訪問販売法)」として制定されました。その後、平成12年の改正で「特定商取引に関する法律」に変更されましたが、第1条に「この法律は、特定商取引を公正にし、及び購入者等が受けることのある損害の防止を図ることにより、購入者等の利益を保護し、あわせて商品等の流通及び役務の提供を適正かつ円滑にし、もって国民経済の健全な発展に寄与すること」と同法の目的が記述されています。この法律は業者と消費者の間における紛争が生じやすい取引を「特定商取引」と定義し、同取引に関する業者からの不公平な勧誘等を規制しています。

また、同規制を実効のあるものにするため、消費者庁等の監督官庁に対して調査権限を与え、同規制に違反した業者に対する行政処分(業務停止命令)及び刑事罰についての規定も設けられています。     

さらには、これに加えてクーリング・オフ等契約解除に関する特別な規定も設けられており、紛争の解決を図ることにより、取引の公正性と消費者被害の防止を図っています。

この法律においては、次の6つの形態が「特定商取引」として定義され、規制の対象とされています。

(ア)訪問販売、(イ)通信販売、(ウ)電話勧誘販売、(エ)連鎖販売取引(いわゆる「マルチ商法」、「ネットワークビジネス」、「MLM(マルチ・レベル・マーケティング)」、(オ)特定継続的役務提供(語学教室やエステティックサロンなど)、(カ)業務提供誘引販売取引(いわゆる「内職商法」など)。また、特定商取引には含まれませんが、売買契約に基づかないで一方的に商品を送りつけてくる商法(「送りつけ商法」又は「ネガティブ・オプション」)などについても規定され、規制されています。

1 悪質商法の主なもの
(ア) かたり商法

突然自宅に「消防署の方からきました」、「水道局の方からきました」などと言いながら「消火器の設置義務が新設されました」、あるいは「水が汚れているから浄水器を設置しなければならない」といい、消火器や浄水器を売りつけるもので特定商取引法の訪問販売に該当します。

(イ) キャッチセールス

路上や街頭で「アンケートに答えてください」、「お肌の診断をしたい」、「手相を見せてください」などと呼び止め、営業所や喫茶店に同行させ、商品やサービスの勧誘をして契約させるものでいずれも訪問販売に該当します。

(ウ) アポイントメントセールス

アポイントメントセールスとは、電話、FAX、ビラやパンフレットなどで「抽選で当たりましたからプレゼントを取りに来てください」などと販売の目的を告げずに営業所への来訪を求めたり、「あなただけに特別価格で販売いたします」などと他のものと比べて著しく有利な条件で契約できることを告げて営業所へ呼び出す方法で、目的秘匿型呼出販売と有利条件型呼出販売があり、いずれも訪問販売に該当します。

(エ) デート商法

街頭で突然異性から声を掛けられ、又は電話で呼び出され喫茶店に連れて行かれて高額な宝石や貴金属などを購入させられる商法です。キャッチセールス、アポイントメントセールスの一種で訪問販売に該当します。

(オ) 展示会商法

絵画や着物などの展示会が開催されるということをはがきや勧誘の電話で連絡し、会場に誘い出し、高額な絵画や着物を販売するものです。アポイントメントセールスの一種で、訪問販売に該当します。

(カ) 催眠商法(SF商法)

催眠術的な手法で消費者の購買意欲をあおって消費者にとって必ずしも必要ではない商品を売りつける商法です。最初にこの商法を始めた団体(新製品(S)普及(F)会)の名にちなんでSF商法とも呼ばれています。具体的には封書や広告、街頭でのチラシや無料の商品引換券の配布などによって販売会場へ誘い出し言葉巧みに消費者を一種の催眠状態に陥れて商品を売る方法を言います。日用品などを無料で配り、最終的には高額な布団や貴金属を販売するといった手口が典型的な方法です。キャッチセールス、アポイントメントセールスの一種で訪問販売に該当します。

(キ) 点検商法

床下や水質の無料点検などを口実に点検を行い、点検後に「工事の必要がある」といいながら高額な工作物を販売したり、その設置工事を行うもので、訪問販売に該当します。

(ク) 霊感商法(霊視商法、開運商法)

主に街角や戸別訪問で声を掛け、人の不安や信仰心につけ込み、高額な印鑑や壷などを売りつける商法です。被害金額も比較的高額となっており、訪問販売に該当します。

(ケ) 現物まがい商法

金やダイヤモンドなどを売りつけ、それを業者が一時的に預かる代わりに消費者に権利証を発行して一定期間後にそれを運用した利息を支払うという手口が一般的です。典型的な例としては豊田商事事件があります。消費者の手元には権利証しか発行されませんので実際にその業者が金やダイヤモンドを所有しているかは疑わしいものです。この現物まがいの商法は特定商品預託取引法で規制されています。

(コ) 資格商法

独立や就職に有利な資格の講座を受講させ又は教材を購入させて、その資格を取れば仕事を紹介するというものをいいます。これは業務提供誘引販売取引に該当します。

(サ) 内職商法

仕事をするために必要な商品を購入させたり、サービスを提供して金銭負担をさせるものの、実際には様々な口実を設けて当初説明された仕事の紹介をしなかったり、紹介されても次第になくなり、結局はお金を支払っただけと言う商法です。これは資格商法と同じく業務提供誘引販売取引に該当します。

(シ) モニター商法

「布団や浄水器などの商品を購入してモニター会員になれば商品を利用した感想をアンケートに記入して提出するだけで毎月高額のモニター料を支払います」、「着物などの商品を購入し、その商品を着用して展示会に参加すれば毎月高額のモニター料を支払います」などと勧誘し、これらの商品を購入させるものの、次第にモニター料の支払がなされなくなり、結局はお金を支払っただけになるというものです。これも業務提供誘引販売取引に該当します。

(ス) マルチ商法

組織へ加入することを商品の販売資格の条件として消費者を勧誘し、商品販売によって中間マージンを得るほか、新たな加入者を増やすことで更に利益が得られるという販売システムです。また、加入者をいくつかのレベルに分けて上級のレベルほど利益を大きくするというピラミッド構造となっており、金品を支払う参加者が無限に増加するという組織構造を前提とした商法である「無限連鎖講(いわゆるネズミ講)」と非常に似通った商法です。これは連鎖販売取引に該当します。

(セ) 送りつけ商法(ネガティブ・オプション)

商品を購入していないのに、業者が一方的に商品を送りつけてくる商法です。商品が送りつけられた場合、a)商品を受け取った日から14日間、b)商品を引き取るよう業者に請求したときは、その日から7日間を過ぎても業者が引き取らない場合は、商品を返還する必要はなくなります。

(ソ) このほかの悪徳商法としては、海外先物取引商法、海外宝くじ商法、ホームパーティ商法、オレオレ詐欺などがあります。
3 クーリング・オフ

クーリング・オフとは訪問販売などで高価な品物などの購入契約をした後でも一定の期間内であれば消費者が事業者との間で申込みや締結した契約を理由なく無条件で撤回・解除できる制度です。

ただし、3,000円未満の取引である場合、通信販売の場合、化粧品などの消耗品を一部でも使用した場合、自動車購入の場合にはクーリング・オフはできない場合があります。

    

 

悪質商法は、特定商取引法、特定商品預託取引法、宅地建物取引業法など適用される法令が異なりますので、被害にあったらすぐに最寄りの警察署(防犯係)、市区町村の消費者相談窓口、国民生活センター、消費生活センター(地方自治体によっては生活科学センター、県生活センター、市生活センター等名称が異なる場合もあります。)に相談してください。