第2回(平成元年)「人事院総裁賞」個人部門受賞者
 
 
 辻さんは、入庁以来、一貫してふ化場の第一線である山間僻地に所在する事業場に勤務し、重要なさけ・ますの増殖事業の効率化のために、厳しい自然環境の下、旺盛な熱意と研究心で地道な努力を積み重ね、特に、知内事業場においては、さけ稚魚の放流適期の特定に取り組み、卓越した増殖技術と科学的な資源管理により回帰率を飛躍的に上昇させ、沿岸漁獲数の増大はもとより国民の健康的な食生活の確保のために尽力していることが認められました。
 我が国で古くから国民に親しまれているさけ・ますの人工ふ化・放流事業は100年以上の歴史を持ち、近年は毎年20億尾の稚魚を放流し、約5,000万尾が回帰しています。
 本格的な200海里時代となり、つくり育てる漁業の推進と資源管理型漁業の実現のため、母川回帰の特性を有効利用したさけ・ますのふ化放流事業は、まさに時代の要請に応えるとともに、動物性たんぱく質の供給源としても重要なものとなっています。
 「さけ・ますの回帰率を向上させるためには健康な稚魚を放流すること」を信念としている辻さんは、かつて吹雪による停電で、地下水を汲み上げる水中ポンプが停止してしまい、そのうえ補助エンジンも厳寒のため始動せず、「家族総出でヤカンや鍋にお湯を沸かしてエンジンにかけては暖め、ようやく始動させて揚水し、卵や稚魚の酸素欠乏による窒息死を避けた」ことや、事業最盛期の1月に地下水が渇水してしまう事故が起こったが、吹雪のため卵を他の事業場に移すことができず、「卵が乾燥しないように一晩中ジョーロで水をかけて卵を守った」という努力を続け、手塩にかけて育ててきた稚魚を大海に送りだすときは、「我が子を社会に送りだすときのように、−元気で帰ってこいよ。−と自然に言葉が出てきます」と語っておられます。また、放流した稚魚が4年後に立派に成長して元気よく生まれ故郷である沿岸河川に戻り、再会出来たときは、今までの苦労も忘れ「これが私の天職なんだ」と、「感慨無量 の気持ちになります」と話されていました。

辻 博 
水産庁

 北海道出身。昭和22年から当時北海道立の水産ふ化場に勤務し、その後昭和36年国家公務員として北海道さけ・ますふ化場に採用され、天塩支場頓別 事業場を振り出しに、以後一貫してふ化場の第一線である道内の8事業場を転々として勤務。現在は根室支場虹別 事業場長。57歳。
 
 
 
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