第3回(平成2年)「人事院総裁賞」個人部門受賞者
 
 
「輸出用絹織物の品質向上に貢献」
 41年の長きにわたり、一貫して輸出検査法に基づく洋装用絹織物の輸出検査に従事し、製品の品質向上のため、地道な努力を重ね、我が国伝統産業の発展と保護に貢献してきたことが認められた。
 
岡田 淳 
通商産業省

 京都府出身。昭和24年京都府立峰山工業学校紡績科卒業。同年京都繊維製品検査所(現通 商産業検査所京都支所)に採用。輸出用絹織物製品の検査業務に従事。本年4月より福島支所長。妻と2人。趣味は音楽鑑賞・旅行。59歳。
 

 30年近く勤務した京都繊維製品検査所大宮出張所は、京都府丹後地区に所在。同地は、丹後ちりめんで有名であるが、古くから我が国有数の繊維物産地。戦前からの主な生産品は和服用絹織物であったが、戦後における国民生活の変化に伴い国内消費が落ち込み、生産者は苦境に陥ったため、輸出に適した洋装用絹織物への進出を図る。
 このような状況の下、「輸出検査の目的は、一義的には合否の判定にあるが、検査結果 を品質改善に役立てることも重要な役割」として、洋装用絹織物の輸出検査を通 じ、個々の生産者に検査結果と生産品の欠点情報をきめ細かに提供。
 また、自ら織布作業者の持つ技術上のノウハウの収集に努め、それを基に生産者の品質改善努力に積極的に助言し、改善意欲の向上を図る。
 生産工程の管理手法の改善に関しては、新たな手法の導入効果 の周知や精錬工程の欠点を評価しやすい検査手法として「検反機検査」の導入に努めるなど、生産者とともに品質改善策を検討してきた。
 織物の出来栄えは、原糸の選定、準備工程、精錬仕上げ工程の管理が総合的に評価されるが、昭和30年当時は製織設備も貧弱で各織機ごとにそれぞれ個性があり、織布作業者の技術が最も重視される時代。
 検査実技をようやく習得し、品質向上にと意気込み、織疵の改善のため直接織手さんと対話した際のこと。「では、実際に織って見本を示してほしい」と求められ、困惑したのも、今は若き日の苦く懐かしい思い出。
 輸出検査の最終受付は、検査希望日の前日午後3時が原則。製織業者は、契約受注後まず試織品を作製。合格になるとの確信を得た上、量 産体制に入り、織り上がった製品から順次、検査に持ち込んでくる。「ところが、織機、職手さんの個性の差により、試織品とは似ても似つかぬ 製品ができあがり、精錬・染色加工の事故で不合格となる製品もあります」。
 契約には納期が決められていて、期間内に完納しなければその契約はキャンセル。「不合格品は輸出できませんので、直ちに追加生産を行う訳ですが、当初は余裕のあった納 期が次第に迫ってくると、最後に── 今日納品しなければキャンセルになります──  と製織業者の哀願にも似た言葉を何度か経験したものです」。
 職務上、生産者の信頼を得ることを何よりも大切にしているが、「その時のことを思 い出すたびに、── 検査は常に厳正に── をモットーにしている検査員も、製織業者に にとっては、時に鬼に見えたことであろうと思うと、いささか寂しい気持ちになります」。
 とはいえ、織物工業組合が洋装用絹織物の振興のために開催する織物品評会の審査員を務めるなど、生産者を始め関係者の信頼は厚い。
 この春、福島支所長に就任。同地方の川俣地区も我が国有数の絹織物産地。「これまでの経験を活かして、製品の品質向上のため更に努力を重ねていきたい」。
 温厚・篤実な人柄ながら、抱負を述べる語り口は熱っぽい。

 
 
 
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