自ら、幼児期の病気が基で耳が不自由となり、最重度(2級)の聴覚障害者。小・中学校はろう学校で学ぶが、「社会参加のためには、健常者との交流が必要」であると考え、高校は普通
高校に入学。更に高度の口話・読話・手話等のコミュニケーション方法を学び、努力して大学に進学。
今回の受賞に当たり、「耳の不自由な私を支えてくださったセンター職員の皆さんにもこの受賞の喜びを分けて差し上げたい」と控えめにその喜びを語る。
現在は、ソーシャル・ワーカーとして、障害者の個別指導、集団指導に従事するほか、社会教育、アフターケアに当たり、入所者に対するリハビリテーション実施チームのコーデイネーターとしての役割を担う。「信頼関係を大切にしなければならないため、ストレスのたまる仕事であるが、やりがいのある仕事です」。
同センターに入所している聴覚障害者は、生来の失聴のためろうあの状態となっている人や一定の社会経験後に中途失聴した人等、障害状態・生育歴が区々。加えて、終戦混乱期に幼少年期・青年期を送った聴覚障害者の中には、不就学であったり、義務教育未修了の人達が少なくない。それだけに、指導には困難を伴う。
近年、障害者の自立を促進するための効果的な手法として『ピアカウンセリング(障害者が、同じ障害者をカウンセリングする方法)』が注されているが、障害者の先輩として後輩を導くこの方法を、30年余にわたり実践してきており、我が国におけるこの道の先駆者。「まず、心を開いて、積極的に話しかけ、円満な人間関係の維持に努めることが大切です」。
また、各地における聴覚障害者やボランティア活動団体の会合等に講師として招かれる機会も多い。それらの機会を通 じ、長年にわたり培ってきたトータルコミュニケーション(口話・手話・指文字・筆談など多種類の手段による意志伝達方法)の方法により、聴覚障害者の社会生活における円滑なコミュニケーション、自立生活を目指し指導に当たる。
「入所中だけでなく、退所後も相談に訪れてこられる方が少なくなく、そうした際には、信頼されていることのありがたさを感じるとともに、期待に十分応えなければと思いを新たにします」。
定年をひかえ、「今までの仕事を活かし、障害者の社会参加と自立を促進するため、地域社会における事業者聴覚障害者向けのサービス(例えば、ろうあ者日曜教室、社会教養講座)の充実を図るなど、社会教育活動に携わっていきたい」と今後の抱負を。
また、「発展途上国に赴き、読み書きのできないろうあ者のリハビリテーションに関するボランティア活動にも従事してみたい」とも。
夢は限りなく広がる。
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